クロノ様ごあんあーい2
練習場に来たクロノは、その中心部の位置である場所に立ち静かに呼吸を整え全身に力を込めていた。
クロノがこの場所で確かめたかったのは、リフィアの使徒である自分の力について知りたかったからである。
リフィアの説明によるとクロノの力はSランクであるのだが、使徒として最大の力を使ったのはヴェドとの戦いのみであり、今でもその力を完全に把握しきれていなかったのだ。
使徒の力であるコクウの状態変化や自身の能力の向上について、どれだけ今の自分が使えるかを早く知っておくためにもこの機会はクロノにとってありがたいと思えるほどである。
クロノは呼吸を整え終えると更に集中しコクウを手に握り締め、使徒の力を解放しコクウの状態を短剣から長剣へと変化させ何度か空を切り続ける。
「ハァッ! シッ! ハァァァアッ‼」
何度も感覚を掴むために素振りを続けるクロノをセラは遠くから見続けた。
使徒の力を解放したことによる能力向上をしたクロノはセラが見てもその違いは一目瞭然であった。先ほどまで普通の少年であったクロノが素振りからは、その一振りごとに伝わる覇気のようなものを感じ、セラは使徒であるクロノが持つ力に感動の声を上げた。
「さすがリフィア様の使徒ね。素晴らしい力を感じるわ。でも、セラも使徒についてはまだ知らないことばっかりだから、その強さの判断が出来ないわ。…………そうだ! あれを使ってみましょうか」
セラは思いつきでクロノに向かって声をかけると、その声が耳に入ったクロノは素振りを止めてセラの方へと顔を向ける。
「どうかしたセラさん?」
「クロノ様。せっかくのそのお力を試す為にこの練習場ではなく演習場に行きませんか? それに演習場であれば、もっと実戦に近い状態で確かめることが出来ますよ」
「演習場…………うん。それがいいね!」
セラの提案にクロノは悩むことなく即答するのであった。
☆
演習場は学園からやや離れた場所にある練習場よりも大きな施設で演習場には、自分の実力をよりリアルな状況で発揮することが出来るセドナ王国の技術により作られた装置がある。その装置に登録された演習情報のおかげで技の開発や共闘の練習など、個々の能力を向上させることが出来るのだ。
「この演習場の発展にはセドナ王国の王室と我々の繋がりが強固であるため、王室が快く協力していただいたおかげで出来たのですよ。」
「本当にいろんな人達との協力でここは出来たんだね」
「そうですよ。ちなみに他の神様の奇跡と加護を持つ本拠地も、発展した王国の中にありますし繋がりも強固ですよ」
「他の神様か…………。そうすると、その神様にもやっぱり使徒はいるだろうし、いつか会ってみたいなぁ」
「神様と使徒様はお二人ずついらっしゃいますから、クロノ様も落ち着き次第ご挨拶が出来るといいですね」
「そうだね。楽しみにしているよ!」
僕の知らない神様がもう二人とその神様の使徒も二人いるという事だし、僕もリフィアの使徒として精進しないと恥をかかせてしまう。
クロノは気合を入れなおして演習を始める準備を終え離れた場所で準備に取り掛かっているセラに向かって呼びかける。
「セラさん。僕は準備が出来たからいつでも初めていいよ!」
「分かりましたクロノ様! それでは演習開始します!」
セラは手元にある基盤に情報を入力しクロノの演習相手を選出する。装置の中にある演習相手は百種類を超えるデータがあり、セラはクロノの相手にふさわしいデータを探し続けた。
「よし。これに決めた。フィールドは岩場でいいか。あとは強さと大きさはこれぐらいでいいでしょう。…………セラは、使徒様であるクロノ様も興味ありますが、期待のルーキーとも呼ばれていたブラックスターとしても興味がありますから、これは目が離せない演習になりそうだわ!」
セラが興奮気味に打ち込んだ情報を装置が処理すると、次第に演習場が岩場へと変化していくが、クロノは戸惑うことなくセラが用意してくれた演習相手が出てくるのを待ち続けた。
岩場となった演習場で自分の心臓の鼓動が感じられるぐらい静かな世界に初めに聞こえた音は耳に聞こえるわずかな何かが羽ばたく音であった。
その音は少しずつ大きな音となり、その演習相手を目視したクロノは思わずニヤリと口元を緩める。
「セラさん。こいつを選ぶなんていい趣味しているね」
クロノをめがけて大翼を羽ばたかせ近づくのは、何度も戦った相手である火竜の成体であった。
仮想の火竜ではあるがリアルに再現された火竜もクロノを目視すると、滑空姿勢をとると同時に後肢に力を込め始め、その剛脚と共に爪撃の同時攻撃を仕掛けようとその鋭い眼光は狙いを定め、クロノ目掛けて強襲を開始した。
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