表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/177

僕はそれでも逃げたい…でも逃げちゃダメだ。……逃げちゃダメだ!


 宿に荷物を置いてから、二人は昨日の酒場で昼食をとっている。

 

 フィリアが選んだ店だったが、クロノは昨日の事もあったので警戒しながら中に入ったが、幸い昨日の男たちはいなかった。

 

 そして今では常に周りを気にしているクロノを気にすることなく、フィリアは昼食を食べている。

 

 そしてその食事の仕方は昨日の酒を飲んでいる姿からは想像できないほど丁寧に食べていた。


「ねぇ、クロノちゃん。この後どうする?」

「この後は、もし時間があるならクエストに出ようと思っているよ」

「クエストねぇ。……わかった! じゃあ一緒に行ってあげるわ」

「えっ⁉ 本当に? シスターのフィリアが来てくれたら助かるよ!」

「そうね。シスターの私がいればいいことだらけよ! ちなみにどんなクエストがいいの?」

「そうだなぁ。なるべく報酬が高いクエストがいいね」

「わかった。そうしたら、私がクエストを選んでくるから、クロノちゃんはここで待っていていいわよ」

「あっそれは僕が選ぶからいいよ―――――――」

「いいの、それじゃあ行って来るわね」

 

 そう言って、フィリアは酒場を出て行く。

 

 そして少しして戻って来てから二人で、クエストの場所へ向かうのであった。


                       ☆


 クエストの場所は、アクアミラビリスから遠く離れたところにある草原地帯(そうげんちたい)

 

 クロノ達は、ワープポイントからクエスト先に近いポイントに移動する。

 

 しかし、これだけ遠くに移動するとなるとそれなりのモンスターがいる地域に移動するような気がするクロノは、フィリアに問いかける。


「あのフィリア。ちょっといいかい?」

「何かしら?」

「このクエストってレベルはどれぐらいかな?」

「そうねぇ、レベル四ってとこかしら」

「レベル四⁉」

 

 そのクエストレベルの高さにクロノは思わず声を裏がえししてしまう。

 

 昨日の受けたクエストのレベルが一なのに対して今日のクエストのレベルが高すぎる。


「そんなに驚くことないわよ。それに私がいるし」

「いやでも、僕がいるし」

 

 それを聞いたフィリアは、少し考える仕草をとるが、


「なんとかなるでしょう!」

「なんとかって……」

「ほら! つべこべ言ってないで早く行くわよ!」

 

 フィリアは、クロノの手を取り草原を進むのであった。

 

 草原地帯ということもあり、歩くのは比較的に楽なフィールドで小型のモンスターなども途中、遭遇するのだが、お構いなしであった。


「しっかし、なかなか見つからないわねー。どこにいるのかしら?」

「せめて何を探しているのかそろそろ教えてくれないかな?」

「だーめ。それじゃあ、面白くないでしょ! でも、すっごいの選んだから楽しみに」

 

 フィリアは楽しそうに話すのだけで特に教えてくれることはなかった。それでもクロノが考えるに、クエストレベルが高いので、間違いなく凶悪なモンスターが関係しているのは間違いないのだが、フィリアがクエスト内容を教えてくれないことが不安である。

 

 だが全てが悪いことばかりではない。

 

 初めて行くフィールドということは、未知があるということだ。

 

 未知は悪いことばかりではないと思いながら、クエスト対象も分からないということもありクロノは周辺を見ていると、


「あっ! やっぱりあった!」

「どうしたの。クロノちゃん?」

 

 クロノはフィリアと離れて近づいて行ったのは大きな岩であった。

 

 クロノはその岩に近づくと、袋から採掘道具(さいくつどうぐ)を出す。

 

 この採掘道具はマジックアイテムで、サイズが変更できるといった優れもので今日の買い物中に見つけたのだ。

 


「大きさ設定は……これぐらいでいいかな」

 

 あまり大きくし過ぎると、耐久力が無くなるので注意しないといけない。

 

 夢中になって採掘するクロノと、近くの岩に座ってそれを眺めるフィリア。


 石を叩いて音の違いで判断してながら掘り進める。

 

 そして、少しして、


「やっぱりあったー!」

 

 何かを見つけ喜ぶクロノ。

 

 それが気になり、フィリアも覗き込む。


「なにがあったの?」

「これだよ」

 

 クロノの指の先には、黒い岩があるだけの様に見える。


「これって、言われても……」

 

 他の岩とほとんど変わらない。というか同じである。


「よーく見てみて、そうしたらわかるから」

「うーん? あ! 微妙に透けているかも!」

「そう! そうなんだよ! ここに魔石が埋まっているんだ!」

 

 クロノは、また無我夢中に作業を再開する。

 

 フィリアもクロノが魔石好きなのは知っているので、放っておいている。

 

 そしてフィリアはクエスト対象も見つからないし、このままクエスト失敗になるだろうと思って、周りに何か暇つぶしになるものを探していると、


「クロノちゃん、ちょっといいかしら?」

「どうしたの? フィリア」

「見つからないと思っていたら、あっちから来ちゃった」

 

 作業中のクロノはフィリアが指を指した方角を見ると、本でしか見た事のないモンスターがいた。


「ゴォォオオオアアアアアアアッ‼」

「ぎぃやあああああああああああ‼」

 

 クロノは恐怖のあまり叫ぶ。そして轟音を響かせて近づいて来るのは地竜(ちりゅう)の成体であった。


「逃げようフィリア! あんなのと戦ったら死んじゃうよ‼」

「え? でもあれ、対象のモンスターよ」

「ええええええええ! あんなの無理だって‼ 死ぬ。間違いなく死ぬよ!」

 

 クロノは全力で逃げようとしているのだが、


「あー。クロノちゃんが大声出すから、こっちに来ちゃったわね」

「嘘だろっ⁉ ほら早く逃げるよ、フィリア!」

 

 それでもクロノはフィリアの手を取って逃げようとするが、


「いやいや、クロノちゃん。ここは戦おうよ」

 

 クロノはこの状況で未だに落ち着いているフィリアを見て信じられない状況であるが、フィリアはどうやら本気で、あの地竜を討伐する気である。

 

 そしてフィリアに当てられたわけではないが、ここまでフィリアがやる気なら僕だって戦ってやる。


 「あれ? クロノちゃん逃げないの?」

 「もちろん怖いけど、フィリアが逃げひゃい(ない)ならびょく()だってひゃって(やって)やる」

 

 クロノは恐怖で、上手く喋れないが、そんなクロノを見てフィリアはいつもなら、その姿を茶化すが、今はしないでくすりと笑う。


「クロノちゃん。死んじゃダメだよ」

「わかってるよ」

 

 ズドン、ズドンと地鳴り、地響きと共に黒い塊が刻々と二人に近づく。

 

 そして、戦いの始まりはその轟咆と共に始まる。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアォォォォオオオオオオオオオオオオオッッ‼」


 轟咆は、衝撃波となって二人の全身に響き渡るが、体は動く。


「来るよ。クロノちゃん」

「うん。わかった」

 

 クロノとフィリアの地竜との戦いがいま始まる。


最後まで読んでいただきありがとうございます! 

引き続きブックマーク、評価、感想をお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ