転送前のお話
結局、クロノとフィリアはセラの作戦でやって来たシスター達に家から追い出されてしまい、現在はやや重い足取りでセラと共にギルドにあるワープポイントへと向かっていた。
「いやー。クロノ様が今日中に来られるようになってセラは本当に嬉しく思います!」
「なんて白々しい。クロノちゃん。やっぱり行くのは止めにしましょうか」
フィリアはあれからずっとぷりぷりと怒っているが、なんだかんだ言いながらフィリアも一緒に歩き進めているのだ。
「まぁいずれは行く予定だったし、ここまで来たらとりあえず行くだけ行ってあげようよ」
クロノはリフィアの時も感じていたが、やはり最近のシスターは行動力がすごい事を思い出していた。そして今回も目的の為なら惜しげもなくその力を発揮してくるのだ。だからもしここで行くのを止めたとしても次の手を使ってくるだけだろう。
「まぁまぁ、フィリアはそう言わずに。ちなみに今から行くのを止めても、夜のうちにお運びするという手なども残っていますけど」
セラは「あっはっはっは」と笑いながら、持っていた自分の手札を明かし、それを聞いたクロノは自身にやっぱり行動力がすごいでしょともう一度言い聞かせるのであった。
ギルドに到着すると、セラは迷うことなくすぐにワープポイントへと向かい移動場所を登録している間、僕とフィリアはギルドの端の方でそれが終わるのを待っていた。
「セラさんは本当に行動力のある人だね」
「そうね。セラは頭がいいから来た時には、何かあるとは思っていたけどまさかここまで準備して来られたらどうしようもないわね」
どうやらフィリアもこの現状にお手上げのようだ。
僕はこの状態のフィリアを見たことがなく内心では驚いており、フィリアをこの状態にさせたセラさんに何かしらの興味を持ったので、時間もまだあるようなのでフィリアに聞いてみることにした。
「セラさんとフィリアは、仲が良さそうだけど、昔は一緒に行動したりしていたの?」
フィリアは人付き合いが多くない。気に入らない人間は一切取り繕うとも思っていない。そんなフィリアがぶつくさと文句を言いながらもセラと行動していることにクロノなりに疑問を持っていたのだ。
「そうねぇ、子供の時に一緒の部屋にいてお互いにいろいろと楽しく遊ばせてもらったから今でもこうやって仲良くしているかもしれないわ。腐れ縁ってやつかしら」
フィリアは口を尖らせてその事を話すのだが、どこか嬉しそうに語っている姿を見て、フィリア基準の友達には達していないのかもしれないが、他の人よりかは心を許しているようなのでクロノはほっとするのであった。
「そういえば、フィリアはこれから向かう本拠地って行ったことはあるの?」
「もちろんあるわよ。というか今も在籍はしているからね」
「在籍って。フィリアはシスターだからその本拠地には在籍しているでしょ」
「あっ、そうじゃなくてこれから行くところは――――」
「クロノ様―! フィリアー! 準備が出来ましたのでこちらに来ていただいてもよろしいですかー!」
セラが大きな声を出して二人を呼び出され、二人はワープポイントまで向かうと受付さんが既にワープポイントを起動していた。
「それじゃ、行くとしようか。そういえばフィリア、さっきなにか言おうとしてなかった?」
「そうだけど、今から言ったとしてもどうせもう手遅れだし、クロノちゃんには覚悟を決めてもらうしかないわね」
「え? フィリアそれってどういう――――」
「では、三名様セドナ王国へ転送開始しまーす!」
受付さんはいつも通り手際よく三人をセドナ王国へと転送するのであった。
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