わずかに残された安息の時
この世界からヴェドが消え去った事を確認したクロノは、全てを使い果たしその場に倒れるその瞬間にフィリアは、そっとその頑張ったその体を支える。
「お疲れさま、クロノちゃん!」
フィリアはクロノがよく知っている満面の笑みで、迎えてくれたことにクロノも出来る限りの笑顔をしてみせた。
「うん。そうだね、やっと終わったね」
クロノは体の限界以上の力を使っており、立っているのもつらい状態である。
「クロノちゃん体は平気なの?」
「何とか歩けるぐらいは残っているかな。ははっ、情けないな」
「情けなくないよ。ほらっ手伝うから」
「ありがとう」
フィリアの手を貸してもらいながらゆっくりと体を起こすと、クロノ達がいる世界がひび割れ始め崩壊が始まった。
元々、この世界はヴェドが創り出したもので、その支えとなっていたヴェドが消滅した今、この世界を支えられるものはこの場にはいないのだ。
「あらら、ここはもうダメかもしれないわね。そうなるとメイオールも救えそうにはないわね」
「せっかく、ヴェドを倒したのにこんな終わりなんて、少し残念だけど、まぁ役目は果たせたし、フィリアにも会えたし、これで終わりならそれでもいいかな」
「うーん。私は、まだクロノちゃんともいたいし、それにリフィアにも会いたいから、まだ終わりは嫌だけど―――――――」
フィリアは、そう言うと、クロノの傍に寄りその肩に頬を当て寄り添った。
「今はこうしていられればいいかな」
クロノは、そのフィリアの姿に心臓をバクバクと鳴らしながら、一番聞いておきたい事を、問いかけた。
「ねぇ、フィリア。フィリアはなんで僕の事をなんでそんなに気に入ってくれたの?」
「好きになったからよ。それ以上の理由なんてないわ。更に細かく言うなら、居心地が良かったからよ。もし気に入ってなかったら、あの酒場から出た後に適当にどこかに行っていたわ」
クロノとフィリアの出会いは偶然だった。初めて、アクアミラビリスにやって来たクロノは、へとへとになってその酒場で一際目立っていたフィリアに巻き込まれたのが、全ての始まりであり、その結果が今となっている。
「ははは、僕もフィリアも、一緒の理由だったとは、こんな偶然は滅多にないだろうね」
「そうなの? それなら、尚更悔いはないわ」
フィリアは微笑ながら呟き、二人顔を見合わせると、静かに惹かれ合うようにしてキスをした。ゆっくりとお互いを確かめながら、その時を愛し合った。ようやく、出会えた二人に残された時間はわずかなものだったが、その時間を補うようにお互いにキスを続け、二人はゆっくりと離れると、崩壊はさらに進みすでに半分は既に消滅していた。
「フィリア。ここはどこに繋がっているのかなぁ」
「どうかしら、でもどこに行っても私はいいかな。どーんと来なさい。今の私なら受け入れられるわ!」
フィリアはいつも通りの口調であったことに、クロノも笑いながら大きく頷いて、
「そうだね。どこに行ったって僕も怖くはないよ」
クロノはフィリアの肩を抱いて、目を瞑ってその時が来るのを待っていると、次第に崩壊は二人の場所にまで辿り着き三人はそのまま上も下も分からないまま闇の中へと急降下していくのであった。
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