許すことのできない怒りにクロノは剣を振るう
「何を言うと思えば俺様を倒す手順だとぉぉお? 馬鹿が! そんなものあるわけがねーだろ‼」
ヴェドは、絶えず否定を繰り返すが、クロノは一切動じなかった。
「ヴェド、もう僕は待ってはいられない。だから使わせてもらうよ」
これ以上の戦いを長引くことはさせない。だからここで使う。
「はっ、何をだよ」
「僕がみんなの想いに応えるために、譲ってもらった力だ!」
クロノの右手が漆黒の光を宿すとその光は更に輝きを増し漆黒の光が、クロノを包み込むと、その姿は執行服のようなものと共に全てが変化していた。
クロノ武器であるコクウは、元は短剣だがフィリアの持つ白剣と同じような長剣に変化している。そしてその漆黒の剣は、フィリアの持つ白剣とは対照的であった。
またこの変化にヴェドはその時無意識に少しだけ後ろに足を動かした。そして、この動きが何を表しているかすぐにヴェドは自ら察知した。
この俺様が、こいつを恐れているだと。
仮にも俺様は、あいつらと戦ったのだぞ。奴らは確かに強かったがそれは、いわゆる次元の超えた戦いであったはずで、普通の人間では考えられないものだ。
だが、なぜ目の前にいるこいつはあいつらと同等の力を感じられるのかが理解できない。いや、理解も識別も把握すら何もかもを、脳、思考が拒絶する。そして、今もその憎たらしい存在は、今も俺様に敵意を向け、殺気を放っていやがる。
「ヴェド、お前にはなんで僕が今の力を扱えているか分からないだろ」
「知るかそんなもの。つーか。どうでもいい! とにかく、目障りなお前を殺せれば何にも問題ないからよぉ!」
ヴェドは、先ほどよりもさらに、速さを上げてクロノを狙い済まし襲い掛かったが、それにクロノも追いつくように反応する。だが、ヴェドはその行動は見通しており、すぐに自分の有利な連撃でクロノを追い詰めようとするが、クロノはそれらをまたしても防ぎ切った。
「何⁉」
「言っただろう。もう、手順は決まったって」
クロノの自信にあふれた言葉を、耳に通すことすら、拒絶したヴェドは、奥歯をギリギリと噛みしめて、その怒りを爆発させるように吠えた。
「いいだろうッ‼ 認めてやるよ! だがな、テメェが言ったその手順はあくまでさっきまでのものだろうよォ‼ だからその済ました顔に敬意を払って俺も全力でテメェのそのムカつくツラの皮をはいでやるからよォォォォオオオオオオオオオオオッッッ‼」
ヴェドの咆哮と共に、ボトリ、ボトリと闇から何かが落ちてくる。クロノは警戒しながら、その落ちて来たものを見るとそれは、ゴブリンであった。
またゴブリン達はイフルや、アーロンと同様に禍々しい気を放っており、その姿は異常であった。
「なんだ、こいつらは?」
クロノは、その存在に首を傾げ、ヴェドは自分のコレクションを見せつけて自慢するように、声のトーンを少し上げて喋り始めた。
「あーそうだ、ついでに言っておくが、そのゴブリンを集めてくれたのは、そこにいるメイオールのおかげでな。メイオールが言葉の通り体を張って怖い、怖いって顔をぐちゃぐちゃにして泣きわめきながら、集めてくれたんだよ」
ヴェドはニヤニヤとしながら楽しそうに話し出し、クロノはその話に口を閉じ終始無言であった。
「しかし、そこまでするのにも大変だったんだぞ。メイオールを、ゴブリンの餌にするために全裸にして檻に閉じ込めて入れようとしたが、なかなか入らなくて、仕方なーく、少しでも反論したら、教会にいるシスターを代わりにするって言ったら黙って檻に自ら入ってくれたよ。それでな―――――――」
「黙れよ」
「あ? 今から話のいいところなんだ、邪魔すんな」
クロノは、ヴェドのことを、まるでゴミを見るような目で見下しながら、
「お前は、本当に救いようのない外道だな」
「ハハハハハハッ! 外道⁉ 上等だよ! むしろ俺はそれぐらい普通なんだよ! そして、このゴブリンは、俺の先兵となる大事な、大事な兵だったが、テメェを倒すためなら、出し惜しみなどしないわァァァァアアアアアアアッッッ‼」
そのヴェド奇声に、数体のゴブリンが反応し、クロノをめがけてその手に持つ、こん棒を振り回して走り出したが、
「お前らも今救ってやる。だが、この世から消えろ」
クロノは、一瞬でそのゴブリン達の首と胴体を切り離し、同胞たちが、一瞬にしてやられたことにより、ゴブリン達は更に闘争心を燃やして、クロノを強襲したが、
「目障りなんだよ‼」
クロノは更に速くゴブリン達を一蹴すると、その奥にいるヴェドに対して、鋭い眼光で睨みつけ、
「ヴェド! 次はお前だ‼」
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