すべての想いを胸に勝利を誓う
ヴェドはぎょろりとその頭部にある一つ目を動かし、すべての状況を確認すると、両腕から黒い霧を発生させ、横たわっていたメイオールを包み込もうとするが、それを察知したクロノは包まれる前にメイオールを抱えて、その霧から逃がし、ヴェドの注意が逸れたその瞬間を逃さなかったフィリアは、ヴェドめがけて剣を振るうが、ヴェドはそのフィリアの攻撃を体を逸らして回避しようとしたいたが、ヴェドとフィリアとの距離が詰まっていたので、全てを回避しきれないだろうと判断したフィリアは、そのままの勢いでヴェドを斬ったのだが、
「何こいつ⁉ 全く手ごたえがないじゃない⁉」
「へっへっへ、残念だったな! 俺はそう簡単にはやられねぇんだよ!」
ヴェドは、クロノとフィリアに対して吐き捨てる様に言い放ち、その言葉を真に受けたフィリアは、悔しそうに顔をしかめるが、クロノは特に気にしていない様子だったので、それを怪訝な表情で、その疑問を声に出した。
「おい、小僧? なんで、そんな顔が出来るんだ? お前らに勝つ手段がなくなったんだぞ、それなのに、なぜそんなに余裕でいられる?」
「そう言われると、どうしてかは分からないけど、今の僕に、それ程危機感が無いのは確かだね」
クロノはその言葉通り、表情も言動も特に慌てた様子はなかった。
「それに、その体には、間違いなく何かあるはずだ。それを見つけられれば一気に勝負はつくだろうからね」
クロノは余裕の表れなのか、そのままの純粋な気持ちで返答するのであった。そして、その言葉は。ヴェドには挑発としかとれなかった。
「クソがッッ‼ やれるもんならやってみなぁぁぁぁぁああああああ‼」
ヴェドは、クロノをめがけて先ほどよりも速度を上げて襲い掛かった。だが、再度その速さにクロノはついていっており、またクロノは更に速さを上げ、ヴェドの身体を切り裂いたが、やはり先程のフィリアと同様に全くと言っていいほどヴェドには、一打撃も与える事が出来なかった。
「おらおらおらッッ! どおぉーしたァッ! 俺様に傷一つでもつけられていないじゃねぇかよ!」
今度はヴェドがクロノに向けて、その手に持つ短剣でクロノを切り刻みに出た為、クロノは、その凄まじい攻撃をなんとか回避して隙を狙おうとするが、その苛烈な攻撃はヴェドの身体を自在に操る能力により、攻撃の軌道が読めない為、その瞬間、瞬間の攻撃を防いでいたが、
「もらったぁー‼」
剣による攻撃に集中していた為、そのヴェドの脚による薙ぎ払いのような蹴りの対処に遅れ、クロノは腹部にその蹴りを受けて、地を転がった。
「クロノちゃん!」
フィリアは、悲鳴のような声を出すのだが、クロノはすぐに立ち上り、ヴェドを睨みつけた。
「フィリア! 僕は平気だから、フィリアはメイオールさんをヴェドから守ってあげてくれ!」
「で、でも! クロノちゃん一人でそいつと戦えるの⁉」
「僕は大丈夫だから! メイオールさんをお願い!」
フィリアはこの時、クロノのお願いを聞かないで、すぐに傍に寄って一緒に戦いたかったが、その感情を抱きしめる様に抑え込み、
「分かった! 絶対に……絶対に! …死んじゃったたらダメだからね!」
「もちろんだよ!」
クロノはその言葉に力強くフィリアに向かって返事をした。
「おいおい、勝手に盛り上がってくれちゃってるけどよぉ~。おまえに俺様が負けることなんてあり得ないんだぜ」
ヴェドはクロノを見下すように言葉を発したが、クロノはヴェドを見透かしたように人差し指を向け、宣言をする。
「いや、それは違うよ。僕はもうお前を倒す手順は理解しているからな」
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