その再会にフィリアは感情を爆発させる
クロノはアーロンから聞いた話を思い出していた。あのイフルもアーロンも最後まで戦ったのだ。そして、自分を犠牲にしてまで、最後までメイオールさんは、一人で戦っていたのだ。そして、そのヴェドは、今も犠牲者を出そうとしている。
「早く行かなければ、そして終わらせないと」
周辺は、ほとんど何も見えない闇であったが、クロノはその中でも確信を持っているかのように進んでいくのであった。
その後少しずつ進んで行くと、何かが衝突するような音がする。そしてその音を頼りに足を進めるとその音は、近づくにつれて次第に大きくなり、探していたその姿がうっすらと見えた時に、心臓の鼓動が早まったが、クロノはそれを抑えるようにして、その場所に向かうのを阻む壁のような膜ともいえそうな障壁に、クロノは一時、足を止めたが、すぐにコクウでそれを切り裂きさらに中へと侵入し、メイオールとフィリアの戦いに乱入するのであった。
僕の乱入に気づいた二人は戦っていた手を止めて、お互いに距離を取った。そして、フィリアは、目の前の出来事が信じられないでいるようで、その大きな目を更に大きく開いて驚いていた。
「えっ? クロノちゃん⁉ なんでここにいるの⁉」
「いやー、いろいろあって――――――ってぶほぉあ!」
急にフィリアは、クロノを抱きしめたので、クロノはその豊満な胸の中へと吸い込まれてしまう。
「本物のクロノちゃんなんだね。私……ほんとうに寂しかったんだからね………」
フィリアの声から、本当に辛かったのであろうと感じ、僕もずっとこうしてフィリアの温かさを感じていたかったが―――――ここはまだ戦場だ。
クロノは、ゆっくりとフィリアから離れて、その傷だらけの姿を見た。
その痛々しいその姿を見て、クロノは更に闘志を燃やした。
「なぜ、お前がここにいる。イフルとアーロンは、しくじったのか」
「メイオールさん、あなたに言いたいことがっ……ってフィリア、今はちょっと待って」
「クロノちゃんまだまだ足りないよ。私、ずっと寂しくて、すぐにでもクロノちゃんに会いたかったんだよ」
話の最中に遮られる形で、フィリアが抱き着いて来たのだが、フィリアは、フィリアなりに色々と感情が爆発していたようで、先ほどの抱擁ぐらいでは、高まりきったその感情はまだ収まりきらなかったようだ。
「しかし、イフルもアーロンも本当に役に立ちませんね。せっかく強くなったのにまた負けるとは。これでは替えを用意する事も検討しなければなりませんね」
「本当のメイオールさんは、そんなことを言う人じゃない。だからこそ、あなたを救済してみせる」
「ははっ、言うようになったね。なら、そのお手並み拝見させてもらおうか!」
メイオールはクロノを狙って構え、その殺気にフィリアもすぐにクロノから離れて構える。
「クロノちゃん、私が戦うから援護よろしく!」
「いや、フィリアはもう少し休んでおいてくれないかな。それまで僕が戦っておくからさ」
「…………えっ?」
その言葉に、フィリアはきょとんとして、すぐに何か言おうとしたが、クロノの自信に満ち溢れた目の輝きを見て、
「……分かったわ。お言葉に甘えて休んでおく。…………クロノちゃん、言うようになっちゃったね」
フィリアはその可愛らしい口を尖らせて、文句を言う。
「嫌いになっちゃった?」
「ううん。それならカッコイイとこ見てみたいかな」
「分かった。見ていてね」
「随分と余裕があるようだけど、舐めすぎじゃないかな」
メイオールとクロノはほぼ同時に構え、先に動いたのはクロノであった。二人との距離がある為、近づきに出たのだが、そうはさせまいと雷撃を放つメイオールだが、クロノは最小限の動きで回避して、メイオールを切りつける。
傷は腕をかすめたほどだが、メイオールとしては攻撃を当てられたこということが一番不服であった。
「へぇ。さすがにあの二人を退いただけの力はあるのかな」
メイオールは、自身の持つ力で傷を治療する。そして、軽傷であった場所はすでに何もなかったように元の状態に治っていた。
「まだまだ、これからですよ」
「調子に乗っていられるのも今だけだよ!」
今度はメイオールが、クロノ目掛けて手に出現させた剣でクロノ目掛けて切りかかるが、その速さにピタリとついていたクロノはメイオールの一撃をコクウにて受け止めていた。
「なにっ⁉」
「メイオールさん。あなたが知らない間に僕は強くなりました。そして、多くの人の想いを受け取った今の僕には勝てませんよ」
「だまれぇぇぇぇぇえええええ‼」
メイオールは怒りに任せ、剣を振り回し、奇跡による攻撃をクロノに向けて打ち込み続けた。しかし、それでも、クロノには一切当たることは無く、全てを回避され、
「すみません。今終わりにします」
クロノは、一瞬にしてメイオールの懐までに潜り込み、その体に一撃、拳を叩き込んだ。
「ぐっ……はぁ……」
メイオールは、その一撃を防ぎきれず、そのまま、気を失って倒れそうになったところを、クロノは受け止め、そっと下ろし、メイオールも同様に身体から出て来たものを一瞬にして排除した。
「すっごい……、すごいじゃないクロノちゃん!」
「うん、なんとかメイオールさんも助けることが出来たよ。あとは……なぁ! 近くにいるんだろ! 出てこいヴェド!」
クロノは周辺に響き渡るような声でその名を呼ぶと、ヴェドが不気味な声を漏らす。
「ふっ、ふふっ。ふふふははははははは。あー。何で、分かったのか、分からないけど、俺もお前にはムカついているからなぁぁあ…………」
突然声がすると周辺に黒い霧のようなものが立ち込め、その霧は一つの集合体となってその姿を現すのであった。
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