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たとえ、心が折れたとしても、希望の光は輝き続ける


「何をとは…………、メイオールが受けた全てを話せばいいのか?」

「何?」

 

 その言葉に、アーロンは眉を動かし、明らかな敵意を向けた。


「いやいや、だから、メイオールにしたことを、全て言えばいいのかって聞いてんだよ?」

 

 ヴェドの言葉に、アーロンは違和感を抱いたが、それでも、言わせようとした時だった。


「アーロンさんダメです‼ そいつに、言わせてはなりません‼」

「なっ、どういう事であるか……」

 

 アーロンは、状況を理解出来ていなかったが、ヴェドはそのイフルの言葉につまらなそうに、


「なーんだよ。せっかく、メイオールが受けた恥辱の日々を教えてやろうと思っていたのによぉ。つまんねー」

 

 ヴェドは、つま先を石畳に何度もコツコツとぶつけながら、分かりやすい態度をとっていた。


「イフルどういう事であるか」

「そいつは、メイオール様を穢したのです!」

 

 イフルはその腕で抱く力なく倒れたメイオールの怒りを代行するように言い放つ。


「くっくく、いいねぇ……気の強い女っていうのは……ぞくぞくしちまうよぉお。うひっうひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」

 

 ヴェドは絶えずその大きな口をニヤケさせながら、メイオールを貶めたことを、悪びれることもない、その姿を見たアーロンは我慢の限界を迎え、


「このッ‼ 外道がァああああ‼」

 

 アーロン渾身の一撃がヴェドに向けて放たれ、その一撃は、ヴェドの身体の中央を打ち抜くように完全にとらえ、ヴェドはその勢いと共に遠くに吹っ飛ばされ壁に衝突する。

 

 確かな感触を感じたアーロンは、ヴェドに確実な一撃を与えた確信すると、すぐにアーロンはメイオール連れて、この場所から退避しようとしたのだが、


「あははああああああああああああ‼ いってぇなー! きいたぜ、今のはっきいたぜぇぇぇぇえええええええ‼ ――――――でも残念だったな。俺はこれぐらいじゃやられんよ」

 

 ヴェドは、何事もなかったように、すくっと立ち上り、自身につく砂を払っていた。


「なっ…………」

 

 アーロンは、その目の前の出来事に目を疑っていたその瞬間、


「ぐっがぁあ――――――ッ!」

 

 自分の腹部を重い何かが打ち抜いたような感触が伝わり、その目の前にいる存在を、睨みつける。


「てめぇには、用わねぇんだよ」

 

 瞬時にアーロンの腹部にその黒い拳を叩き込み、倒れたアーロンに吐き捨てるように言うと、その姿を見たイフルは「ひっ」と小さく怯えた声を出したのを、ヴェドは聞き逃さなかった。


「さて、気の強いお嬢さんは、どうするかな?」

 

 ヴェドは、ニヤニヤと笑いながら、イフルに対して余裕を見せそれに対してイフルは、ぎゅっとシスター服を握って、目の前にまで迫って来ている恐怖に負けずに、


「あなたは、一体に何がしたいのですか……?」

 

 絞り出すようにその声を出し、ヴェドはその問いに考えるような仕草を取ると、


「うーん。復讐かな?」

「復讐ですって……」 

 

 イフルは一瞬ヴェドが言い放った言葉を理解出来なかったが、それでも、思いついたようにその口は、次の言葉を放っていた。


「それは、メイオール様に対してですか?」

「いや、違う。それに俺は人間の事を嫌いではない。むしろ好きさ。だが、あいつらは勝手な理想でその人間から俺達を遠ざけ、破滅に追い込んだ。そして、今も一部の人間に力を与えて、こうしている。……ズルいじゃないか。俺だって、人間を愛していた。それなのになぜ奪った。多少の愛しかたは違ったが、それだけで、人間と手を取り合って俺達を滅ぼすなんて、酷過ぎる」

 

 ヴェドの言葉からは本当に悲しげなように言葉を発していた。だが、イフルはその言葉に一切、同情と言う感情は生まれなかった。


「あなたは、人間を愛していたと言いましたが、その愛する人間をこのような姿にするのですか!」

「仕方じゃないか、それが俺の愛しかただから、単にお嬢さんはまだ馴れていないだけさ、俺に、うひっ、任せ、うふっ、くれれば、きっと馴れるからさぁ~」

 

 ヴェドの時折、拒絶したいほどの、気持ち悪い話し方に、イフルは生理的に受け入れることは出来なかったが、今の自分ではこいつに勝てないと悟ると、イフルは立ち上がり、メイオールの傍から離れて、その折れかけていた心を自分でへし折り諦めた。だが、それは、自分ではこの事態を対処できないと諦めただけで、最後の希望は失ってはいなかった。


「ふっふふふふふ。なるほど、そうですか。あなたの事が今の話を聞いて思い出したような気がします。あなたは、私達が信じるあのお方に滅ぼされた者ですね」

「ああっ、お嬢さん。やはりそのように言われているのですね。そうやって嘘を学ばされているのですね。なんと悲しい」

 

 ヴェドは、哀れな者を見るような言い方でイフルに言い放ったのだが、それでもイフルの、目はさらに熱を持ち始めていた。


「いえ、私の意思は変わりません。私は、自分の信じてきたものに疑う余地はないと思っています。だから、私は自分の信じたものを信じ続け、必ず救ってくれると。だからこそ、希望を失いません!」

「あああああああああッッ! うるさい! うるさい! うるさい! メイオールみたいな事を言いやがって! お前らのせいで俺を人間嫌いにしないでくれ! ああ、早く救わなくてはぁぁぁぁああああああああ‼」

 

 ヴェドはその頭部を掻きむしりながら、悲鳴のような声を出し、その体から霧のようなものを噴出させ、その霧は一瞬にして、その身体を包み込むがイフルは慌てることなく目を瞑り、穏やかな表情で祈るように全てを受け入れた。


「あとは、託しました。――――――うっくああああああああああああああっ‼」

 

 ヴェドから放たれた、黒い霧のようなものに包まれたイフルは、苦痛の声を上げた。


「メイオール! そして、そこの男も俺のものとなれぇええええええ‼」

 

 メイオールとアーロンもヴェドから放たれた霧に包まれ、その浸食に苦痛の声を出すが、二人もイフルに気づかされ信じている希望に全てを託した。


「ああっ‼ くそっ! 全部あいつらのせいだ! 今すぐにでも片付けてやる。それに、ここにはフィリアとかいうすげぇ女もいるからな。あいつの力が弱まれば、俺の力を注いで、俺の大事な玩具にした後に見せつけてやる! 絶対に滅ぼしてやるからな! リフィア―ッ‼」

 

 部屋中に響き渡ったヴェドの呪いのような叫びに、呼び覚まされた三人は、亡霊の様に立ち上がるのであった。


最後まで読んでいただきありがとうございます! 引き続きブックマーク、評価、感想をお待ちしております!


この時、アーロンが隠れたチート能力とか持っていたら、それはそれで面白そうだなって思いました。

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