地下にある重そうな扉って見ただけでもなんか怖いよね
アーロンから二言程、纏まった情報を手にして、クロノはその空間に足をかけた。
「アーロンさん、情報ありがとう。それじゃ、行って来るよ」
「頼んだ……クロノよ……メイオール様を…………フィリアを救ってくれ」
アーロンは霞んだ視界から、クロノをその奥にある闇に入っていくのを見送ると、限界を迎えた体を地に倒し、クロノに伝えたあの出来事を思い出していた。
あれは、イフルがメイオール様の部屋で本棚をいじりまわしていると、偶然どこかに繋がる隠し通路を、見つけた時の事だった。
「アーロンさん。これは、隠し通路というものではないでしょうか!」
イフルは、いつもの落ち着いた雰囲気ではなく、やや興奮気味にその目の前にある階段に対して、その両髪にある縦ロールを揺らして興味を示していた。
「しかし、イフルよ。ここはメイオール様の部屋であるぞ。勝手に入るのはさすがに、まずいと思うのであるが……」
「いやいや、こんなに、面白そうな展開なんですから、ここは見に行ってみましょうよ」
イフルはアーロンの忠告に、口を尖らせて反論した。それに対しアーロンも気にならない訳ではないので、賛同してしまう。
「……分かったのである。しかし、イフルよ。もし何かあった時は、二人の責任であるからな」
「分かっていますよ。それじゃ、行くと致しますか」
イフルは、ふんふんと鼻歌を歌いながら、楽しそうに歩き始めた。そして、アーロンもそれを追うように進んで行ったのだが、後にこの選択をしたことを、後悔したかと問われれば、どの道何かしらの後悔は必ずしていただろうと答える。またこの後の出来事は全てにおいて弱い自分に、原因があったのだ。
二人は、こつこつ足音を立てながら、下へと続いて行く暗い階段を下りて行くと、鉄で出来た扉が道を塞いでいた。
「道はここまでのようですね」
「そうであるな。あとは、この扉の先に行くかどうかであるな」
目の前にある鉄の扉は重厚な造りで出来ており、とても頑丈そうに見えた。
「でも、ここまで来たからには、最後まで確認しましょうよ」
イフルは変わらずこの状況をどこか楽しんでいるように見え、アーロンもここまで来たのなら、最後までやり通してしまおうと、思っていたので、
「そうであるな。だが、もし、ここにメイオール様がいなければ、この事は内緒にしておくであるぞ」
「もちろんですよ。ふふっ、では行きましょうか」
二人は力を込めてその扉をゆっくりと開くと、来た道よりも更に暗闇のような部屋が広がっており、その中は異様な雰囲気と、鼻をつんとつくような臭いが充満していた。
「んっ…………、なんですかこの部屋は、それに臭いも、だいぶキツイですね」
「そうであるな……だが、なぜこのような部屋が教会にあるのだ?」
「その声は…………、イフルとアーロンか⁉ なぜここにいるっ! とにかく二人共今すぐ逃げろ‼」
「その声は、メイオール様! メイオール様どこにいるのですか!」
「来るな! 早く戻れ! その扉が閉まる前に早くしろ!」
メイオールは、暗闇の中で力を振り絞って、必死に二人に対して、帰るように言い放ったが、その部屋に潜む闇は二人を来客として向かい入れる為に、その鉄の扉をゆっくりと閉めるのであった。
「なっ⁉ 扉が勝手に⁉」
「何が、起こっているの…………」
暗闇の中で、イフルは先ほどの明るさを微塵も感じさせないほどに怯えていた。扉を閉めたその闇は静かに、這いずるように二人に近づきそっと声を出す。
「おやおや、お客様かぁ…………一人は男で、もう一人は……おおっ! 女じゃねぇかぁ! これは最高だぜ! そそるぜ! ギッンギンに、そそりやがるぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼ ぎぃゃはははははははははははははは!」
聞いたことのない、醜悪で汚い笑い声が、暗闇の部屋に響き渡り、アーロンは、どこにいるかも分からないその存在に対して敵意を向けて構えた。
「誰だ! どこにいるのである!」
「おおっと、すまないなぁ。今明るくしてやるから、ちょいっと待ってくれや」
その言葉の後に、部屋に紫炎の明かりが灯り、その部屋の全容が明らかとなる。
「なっ⁉ これは、一体なんのであるか⁉」
部屋は暗い洞窟のような部屋で、壁は荒く削れており、床は長年の時間の経過のせいか石畳は、苔のようなものが生えていた。
その中で最も目を疑うほどに驚愕したのが、この教会の主である、メイオールが、一糸も纏わずに、髪を乱し、体の所々を泥で汚し、力なく倒れていたのだ。
その姿を見たイフルはすぐに、メイオールの元に駆け寄り、そのメイオールの体に自身のもつ加護を使って、治癒を始めた。
また、メイオールの身体は、近づいてよく見ると、首に何かを着けていたのか一部が赤くなっており、体も、縛られていた跡がその体に刻まれていた。それの痛々しいメイオールの姿を見たイフルは、メイオールが受けたと思われる恥辱を、同じ女として直視する事が出来ることはなかった。
「メイオール様…………なんと、おいたわしい…………」
メイオールをそのようにした元凶は、今もその、黒いベルトのようなものを、体の全体を巻き付けた様に纏ったその姿から、ぎょろりと頭部にある、大きな一つ目を動かし、にちゃぁと、唾液のようなものを垂らしながら、その口を再度開く。
「ようこそ、俺の愛する玩具達よ。その、ありとあらゆる愛らしい全てを、このヴェド様が、穴が開くほど見つめて、舐めまわし、奥の奥までもしゃぶりつくして堪能してやるからよおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼ ひゃはっはっははははははははははははははは‼」
「貴様ぁ‼ メイオール様に何をした‼」
アーロンの怒りは爆発しヴェドに、向けて戦う意思を示すのであった。
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