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のじゃシスさんから受け取った力


 僕は意識が変わった時と同じ場所にいた。

 

 あの時と違うとしたら、僕はイフルによって押し倒されていたが、今はその近くで立っていることぐらいだろう。

 

 目の前にいるイフルは、顔を表現するのが難しいぐらいに歪めて、まるでそこに僕がいたかのように、大鎌は振り下ろしていたが、その場所には、すでに誰もおらずその大鎌が切断するのは、(くう)のみで、完全な空振りが確定となっていた。

 

 そして、時は動き出し、


「はっ……はぁ…やっと、ご命令通り近づくゴミを排除できたわぁ。うふふ。これでメイオール様に喜んでもらえるわぁ」

 

 イフルも相当興奮していたのか、完全にクロノ首を切ったと思い、一人で両頬に手を当ててその結果に酔いしれていた。しかし、そんなイフルを、僕は眺める様に見ながら、


「イフル。僕はまだここにいるよ」

「えっ? ……はぁ⁉ なんで⁉ おまっ、まだ生きているの⁉ 確かに今切ったはずなのに、どうしてよ⁉ どうして⁉」

 

 殺したと思っていた酩酊(めいてい)に近い状態から一気にイフルは錯乱した。

 

 しかしその反応は、当たり前の反応である。さっきまで自分の下にいた人間が目の前に、しかも無傷でいるのだから。

 

 その動揺はイフルの後ろにいるシスター達もしておりその動揺によるざわめきは、クロノの立っている場所にまで聞こえるほどであった。

 

 それでもイフルは、状況を完全に理解出来ていなかったが、すぐに後退しクロノと距離を取り、さも落ち着いているような振る舞いをした。


「なぜ、あなたがそのような状態になったか分かりませんが、もう一度同じ事をすればいいだけのことだわ」

 

 イフルは、自身の震える指を何とか鳴らして、シスターたちに今まで同様に火球の雨を降らせるように指示したがそこで一つの疑問が発生し、イフルはその動揺を抑えきれなかった。

 

 なぜ逃げない。

 

 今までであれば、必死に動いて少しでも範囲を広げて威力を下げていたのに、目の前にいるクロノは全く動かない。その異常行動にイフルは違和感と少しの恐怖に取りつかれていたがそれらを振り切りシスター達に命令する。


「あの男を焼き尽くせ!」

 

 その言葉と同時にクロノめがけて火球が放たれた。

 

 じりじりと熱を帯びながらクロノめがけて降り注ぎ直撃する。

 

 一切分散していない火の集合体は、数も合わさりその威力は上位魔法と遜色無いほどになっており、しばらくは火が消えることは無かった。

 

 その火の勢いは、クロノが苦しむ様や声すらも聞こえなく、最早、骨すら焼き切るのではないかと思えるほどであり、少しずつ火が収まり骨でも残っているかと思いながら見てみると、


「なんで! なんでよ⁉」

 

 クロノは焼死するどころか、無傷で火の海の中で立っていた。

 

 クロノを包んでいた火が消え去ると、すたすた、と歩き出す。それを見ているシスター達は目の前で起こっているが理解出来なくなり、更にざわめき始め、中には逃げ出しそうな者もいた。

 

 この状況がすぐにまずいと感じたイフルは、力が残ったシスターにとにかく目の前のクロノに向かって奇跡を打ち込むように命令し、属性も統制も無い奇跡(きせき)は乱雑に放たれ、中にはクロノに当たる前に消滅するものや、属性同士で打ち消し合ってしまっている奇跡もあり、効果は見るまでもなかった。


 それでもなお、歩くのを止めないクロノに対して、シスター達は恐怖に襲われイフルの静止も聞かず、各々狂ったように悲鳴を上げながら散るように逃げ出した。

 

 クロノは、それらも気にしないで、歩き進め、イフルとの距離はわずかばかりとなった。


「あなた、転生でもしてモンスターにでもなったの?」

「どうだろうね。もしかしたらなったのかもしれないね」

 

 イフルの皮肉に対してクロノは、あえて返事を茶化した。体が無傷になっただけではなく、落ち着きを取り戻して最早冷静となったクロノは余裕であり、逆にイフルはそのクロノの態度に苛立ちを隠せなかった。


「くっそ、ふざけんな! あなたは、死んでいるべきなのになぜこうもいられるの⁉」

 

 今度は、イフルの言葉をクロノは完全に無視して、その肩をすれ違ってクロノは進み続ける。


「無視するなぁ‼」

 

 奇跡で創り出した火球をクロノ目掛けて打ち込むが、その火球をクロノは振り向いて出した右手で受けて止めそして、握りつぶした。

 

 その事実にイフルは怯みながらも大鎌を振り上げて、クロノに切りかかるが、クロノは片手でコクウを使い、全て最小限の動きで防ぎきり、最後はイフルの大鎌を弾き飛ばすと、武器を手元から失ったイフルは地面にへたり込む。 


「ありえない。なんで……私はメイオール様から力を頂いたのよ。それなのに、なんで、あなたを倒せないの」

「それは、君が僕より弱いからではなく、相性が悪いだけだよ」

「相性って……あなたと、私との相性っていったいなんなのよ」

「それは、今分かるよ」

 

 クロノは、イフル頭にぽんっと手を置き、力を込める。そうすると、イフルは「くっ」と少し苦しむような声を漏らすが、それでもクロノは手を止めずに続ける。


 そうすると、イフルの体から一匹の黒い虫がじじっと羽ばたきながら出て来たのを見逃さず、一瞬にして切り刻むと、イフルは虫が体から出ていくのと同時に、糸が切れたように倒れたのだが、その体を瞬時にクロノは受け止め地面に横にさせた。

 

 イフルは体を酷使してしまった為、気絶してしまったようだが、息はしているし、顔色も悪くないのでこのまま寝かせておけば平気だろう。

 

 しかし、このまま放置しておくのも良くないので、辺りを見渡して隠れて僕たちを見ていたシスターを見つけ、手招きをしてイフルをお願いするように頼んだ。

 

 初めは、警戒して近づいて来なかったが、クロノがイフルから離れて教会の中へと向かって行った事を、確認してからすぐにシスター達が、イフルを介抱してくれていたので、安心してクロノは教会の中へと入り、フィリアに会う為に、その足に力を込めて教会の方に向け走り出した。


最後まで読んでいただきありがとうございます! 

引き続きブックマーク、評価、感想をお待ちしております!

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