表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/177

のじゃシスさん語ります


 傷だらけの体を引きずって、のじゃシスさんの元に近づき、痛みを堪えながら問いかけた。


「なんで、ここに、のじゃシスさんがいるの?」

「いいから、おぬしよ、こっちに座るのじゃ」

 

 僕は、のじゃシスさんが座っている長椅子の隣に座るように促され、言われた通り、のじゃシスさんの隣にゆっくりと腰を下ろした。


「おぬしは頑張りすぎじゃ。こんなの状況は強者でも、難しい状況じゃぞ」

「そうだね。でも、どうしてもフィリアに会いたかったから、無理をしちゃったよ。せっかく体が完治したのにまたボロボロになっちゃったね」

 

 これは、死んだ後の話なのか。それともまだ僕は生きているのか。首は繋がっているが体は傷だらけのままだ。そして、一体これは何なのか分からないでいる僕を気にすることも無く、のじゃシスさんは話を続ける。


「おぬしは完治なんてしておらぬぞ」

「でも、傷も治ったし、問題はなかったよ」

 

 また、ボロボロになってしまったけど。


「まだじゃよ。その場所はずっと傷ついたままじゃからの。それはわらわには治せぬから、わらわには完治させることは出来ぬのじゃ」

「それってどこなの?」

「心じゃよ。」

 

 その言葉にクロノは目を見開き、核心を突かれた。自分でも薄々気づいており、仕方ないと思う自分もいたのも事実だったが、その自分に負けない為に今まで戦ってきたのだ。


「心は奇跡(きせき)加護(かご)では治せぬ。だからわらわは、まだおぬしを完治させてやれておらんのじゃ」

「そうしたら、僕はどうしたら完治できるのかな?」

 

 クロノは、知らないふりをしながら、のじゃシスに問いかけたが、のじゃシスはそんなクロノの事を見透かしていた。そして、それを踏まえた上で問いかけた。


「おぬしは、なぜ、それほどフィリアの事が好きなのじゃ?」

「んー。そうだな、言われてみるとパッとは出てこないけど一緒にいて退屈しなかったからかな」

 

 照れも焦りも恥ずかしさもない。純粋に思うことが言葉となって思い浮かびサラッと言えてしまえた。そして、そう言えてしまう程、僕の中ではその事が当たり前になっていたのかもしれない。

 

 また、のじゃシスはここぞとばかりに、更に質問する。


「じゃあ、振り回されるのが好きなのか?」

 

 その質問にクロノは、顎に手を当てて「うーん」と唸りながら、考え、


「そうじゃなくて、なんというか見ていても、一緒に戦っていてもしっくりくるというか信じられるというか、とにかく……そうだなぁ居心地がいいと思っているよ」

「居心地と申すか。じゃが、フィリアは結構雑な所もあるのじゃよ。それにあのイフルっていう子の言うておった通り、横暴な所もあるし面倒じゃないのかの?」


 のじゃシスさんの、フィリアについての深い質問に、今度はサラッと、考えることなく即答する。


「確かに、厳しいところもあるけど、それは元々フィリアって興味を持っても飽きることが多いからだと思うんだよね。フィリアって色んな事に興味を持つけどすぐに飽きるから。だから、せっせとフィリアが喜ぶと思って同じものを用意してもその時には飽きているんだよね」


「分かるのじゃ! それ、本当に分かるぞ! 苦労して用意してやったのに、フィーちゃんは興味がないって言って跳ねのけるから困っちゃうのじゃ!」

 

 その時、のじゃシスは、ハッと、自分がしてしまった事に気づき焦ってすぐ横にいるクロノを見たが、クロノは特に気にしていなかったので、良かったのか悪かったのか判断に迷ったが、とりあえず流して話を続けようとするが、


「のじゃシスさんは教会でフィリアと一緒だったから、似たような僕と経験をしたんだね」

「うっ……うん。そう、そうじゃよ。あはははは」

 

 のじゃシスは誤魔化すように、笑っているが、クロノはその姿を愛おしく見ながら、


「そして、のじゃシスさんはフィリアの友達だったんだね」

「なんじゃ、やっぱりバレておったのか」

 

 のじゃシスさんはてへっと、舌を出して可愛らしく白状するのであった。


最後まで読んでいただきありがとうございます! 引き続きブックマーク、評価、感想をお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ