揺れる縦ロール
クロノが教会に到着すると、教会前には多くの人だかりが出来ておりクロノは、その中に加わり前へ前へと体を押し進めた。そして空を見上げると、空には薄暗い暗雲が立ち込めており、時折、雷のようなものが暗雲の渦中心で発生しており、それは最早禍々しさすら感じられた。
すると、教会から一人のシスターが、騒ぎながら群がる虫のように、この教会で集まりだした人達をうっとうしく思いつつ、その状況を不機嫌そうに眺め、ため息をつきながら向かってやって来ると、声を張り上げながら忠告を始めた。
「ここは危険なので、皆様! もっと離れて下さい!」
「おいっ! あれは何だよ!」
「申し訳ございませんがお答えできません。とにかくおさがり下さい!」
その忠告に、一人の冒険者が問い詰めたがが、そのシスターの答えが答えになっておらず、シスターは、最早その冒険者の事を全く気にすることはなかった。そして、面倒と思いながら、人混みを眺めていると偶然、クロノを見つけると奥歯を噛みしめ忌々しそうに、その名を呟いた。
「クロノ……やはり来ましたか…………」
クロノは、シスターにそのように思われていることを知らずに、クロノは謝りながら人混みをかき分け、シスターへと近づいて、食らいつくように問いかけた。
「ねぇ! あれは一体なんだよ! フィリアは何をしているんだ!」
クロノの前にいたシスターは、目を鋭くし、睨みつけるようにして、その両髪にある縦ロールを揺らしながらその口を開いた。
「私はイフルと申します。私はここから人を通さない様に言われていまして、また話す必要も無いと言われておりますのであなたが知る必要もございませんし、あなたも早くここから離れなさい。でなればあなたを排除します」
何の愛想も感じられないイフルに、腹を立てたクロノは、声を荒げて問い詰める。
「いいから答えろよ!」
「警告はしました、では、排除しますからなぁ‼」
イフルは目を大きく開き言葉を荒げ、手に込めた雷撃をクロノ目掛けて放ち、クロノはその雷撃により吹っ飛ばされ、その体を地面に叩きつけた。この突然のシスター攻撃により、教会前は悲鳴や怒号が飛び交いパニックとなるが、イフルは、それらを一切気にかけることなく、冷酷にクロノに対して吐き捨てるように言い放つ。
「あなたはメイオール様の命により、何があっても教会内部に入れてはならないと言われておりますので、そのままお戻りください。もし、また近づくような動きを取った場合は、おわかりですよね?」
イフルは、クロノを見下しながら更に忠告した。そしてクロノはその言葉から推測し、僕がいるとメイオールさんが困るとするとしたらそれはフィリアに関係する事だと結論を出した。
それにもしフィリアに何か起きているとしたら、今ここで逃げたらそれこそ取り返しがつかない程に後悔する。
「……嫌です。絶対に、フィリアに会うまで僕は諦めません!」
「そうですか。ならば強制執行を開始します」
イフルがパチンと、指を鳴らすと、教会の中から多くのシスターが現れた。その数は軽く三十人はいるであろう。
恐らく教会にいるほとんどのシスターが僕の排除に向けてやって来たということである。
だが、怖くはない。その為に今まで戦って来たんだ! ここで、この場所で、覚悟を決める。僕は、フィリアに会う為に強くなったんだ。逃げることなんてありえない!
戦うことを誓ったクロノは、コクウをいつも以上に力強く握り締めて構える。
「そうですか。この人数を目にしても戦うのですね」
イフルは、やれやれと呆れたように言う。そして、手を挙げて後方のシスター達に攻撃の合図を送る。
その合図に後ろシスターは、奇跡で生成した火球を放つ準備をする。そして、準備が整ったことを確認したイフルは発射の指示を送ると、一斉に火球や火の渦がクロノめがけて襲い掛かった。
クロノは、瞬時に大きく息を吸い、全力で両足に力を込めてその場を離れるようにして、教会めがけて走り出した。だが、イフルは冷静にクロノを狙い、シスターから受け取っていた大鎌でクロノに切りかかった。
とっさの判断で、大鎌に対抗すべく、上手くコクウを当てそのまま回避する。そしてさらに教会に向かって突き進もうとするが、すぐにイフルがクロノの行動を妨害する。
「いい加減。帰ってくださりませんか? あなた邪魔なのですよ」
「嫌です。それになんでフィリアに会わせてくれないんですか!」
「あなたが知る必要がありません。消えて下さい」
イフルは、冷たくそう言い放つと、すぐにまた手を挙げて、後ろのシスター達に攻撃の合図を送ると、シスター達はまた各自にクロノを狙って火球を放つ。そしてクロノは、イフルから離れてその場から退避しようとしたのだが、目の前にいるイフルは、その火球の落下地点から動かなかった。むしろ、クロノを逃さず追撃をしていたのだ。
「おいっ! 君も離れないと巻き添えを食らうぞ」
クロノが忠告しても無言でイフルはクロノを狙い続ける。さすがにこのままではすべての攻撃を受けてしまうと判断したクロノは、イフルを突き放して、急いで回避行動を取るが間に合わず、一部の火球がクロノの腕に当たりその事で火傷を負い、腕から伝わる、痺れるような痛みは、表情を歪めるほど痛んだ。
「ぐっううううう………っ!」
だが、まだ戦えないほどではない。そう思いながら自分を鼓舞して歯を食いしばってイフルを睨みつけるようにして見た。
それに、イフルだってあの火の海ではきっと無事では済まないだろうと思ったが、イフルは無傷で、不敵な笑みを浮かべながらその場所に立っていた。
「なんで……、なんで、そんなに余裕で立っていられるんだ……!」
「私は火に対しての加護及び耐性を持っていますので、全く問題ございません」
イフルはその事実を、クロノに対して見下しながら言い放つのであった。
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