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クロノ人生で初めてのデート


 次の日、太陽が昇ることで部屋が朝日に照らされ、その光が瞼に当てられることにより目が覚めるとゆっくり上体起こし、僕は頭の自重により押し付けられ潰れてしまった髪を右手で手櫛をかけながら戻している途中に、ふと目の前を見るとフィリアが両膝をついて両手を組んで祈りを捧げている。

 

 その姿は昨日の振る舞いからは考えられないほど神秘的であり、出会ってから初めてフィリアのことをシスターだと思えた瞬間であったが、この事は絶対に言わない様にしよう。なぜなら、この短時間で覚えた経験を参考にして、フィリアに言うのは危険だと本能が警告しているからだ。

 

 それでも、その姿を邪魔しない程度に眺めていると、祈りを終えたフィリアが僕の視線に気づきゆっくりと口を開く。


「あら、クロノちゃん起きたの?」

「おはよう。フィリア」

「うん。おはよう」

 

 挨拶を交わすと、フィリアはまたベッドの上に座り自分の荷物を整理し始めたので、僕は少しでもフィリアのことを知ろうと会話を続ける。


「どんな神様にお祈りをしたの?」

「秘密よ。それよりもクロノちゃん今日は暇かしら?」

「予定はないけど何かあった?」

「そうしたら一緒にデートしましょう」

 

                     ☆ 


 宿を出ると二人は手をしっかりと握り、現在はアクアミラビリス内を歩いている。

 

 今日も昨日と変わらず賑やかであるが、クロノは隣で今も鼻歌を歌いながら機嫌が良さそうに歩いているフィリアから漂ういい香りが今もクロノを刺激し続けると同時にすれ違う男達もその色香によってフィリアに興味を持ってしまうのと同時に、フィリアと手を握る僕を見て睨むのと舌打ちは止めてほしい。

 

 そんな僕を気にすることなくフィリアは単純にアクアミラビリスを堪能しようといているようだ。


「やっぱり都市はいいわね! クロノちゃんもそう思うでしょ!」

「ええ、まぁそうですね」

「クロノちゃん。さっきから元気がないけど、どうかしたの?」

「いや、あの皆さんの視線が気になってしまって……」

 

 田舎育ちのクロノにとってはアクアミラビリスのような都市にまだ馴れてすらいないのに、見た目がいいフィリアと一緒にいることで、他の男達からの視線が気になりさらに歩きにくくなっていた。


「そんなの、気にしなくていいって! それよりもあれ見てみようよ!」

「ちょっ、ちょっとー」

 

 フィリアは何かを見つけるとクロノの手を引っ張って連れ来たのは、手前に銃のような物が置かれていて、そのさらに奥にはぬいぐるみや、箱に入ったお菓子などいろいろな種類の物が並べられている露店であった。


「クロノちゃんこれやってみない?」

「いいけどこれってどうやるの?」

 

 並べられた銃を一つ手に取り、見てみるが銃の先は空洞になっており、どこから弾を入れるのかクロノにはわからなかった。


「これ、どうやって使うの?」

 

 クロノが色々と確認していると、フィリアはその銃を取りあげ、


「こうやってするのよ。おじさん弾をちょうだい」

「はいよ」

 

 フィリアがリグを払うとおじさんは皿に何発かの弾を乗せて渡され、皿にはいくつかのやわらかい弾が乗っていた。

 

 フィリアはその中から一つ手に取り、銃の先端に埋め込むように取り付ける。


「久しぶりだけどどうかしら?」

 

 そして銃口をぬいぐるみの前に向けて、ポンと音を立てながら発射された弾はぬいぐるみに命中するが、残念ながら少し右に動いただけで弾はそのまま、ぽとりと床に落ちる。


「うーん。やっぱり固いわねー」

 

 そう言いながらも次の弾を込めてまた撃つが今度は左に若干動いただけである。

 そして、それを繰り返すが依然とぬいぐるみは棚の上でそびえ立つように残っており、先にフィリアの手持ちの弾が尽きてしまう。


「あー残念。やっぱり難しかったか」

「残念だったね。もう一回やるかい?」

「それじゃ、次はクロノちゃんやってみる?」

 

 フィリアは銃を渡してきたのでクロノは受け取ると。


「じゃあ一回だけやってみようかな」

「あいよ。それじゃ、これが弾だ」

 

 フィリアと同じようにおじさんから弾の入った皿を受け取る。

 

「頑張って落としてね!」

「頑張ってみるよ」

 

 的の照準はもちろんフィリアと同じぬいぐるみである。

 

 しっかりと狙いを決めてポンと打ち込むが、やっぱり少ししか動かない。

 

 それでも、諦めずにフィリア同様に打ち込み続けると残りの弾は一発となった。


「残り一発だな。兄ちゃん頑張れよ」

「クロノちゃん。頑張れー」

 

 それなりに狙って打ち込んでいるので落ちてくれればいいけど、どうだろうか。

 

 少しの希望を持ちながら、最後のポンと一発を打ち込むが、無情にもぬいぐるみはまた少し動いただけで、落ちることはなかった。


「はい。残念だったね」

「まぁこれが普通だから仕方ないわね」

 

 その時だった。ゆっくりとぬいぐるみが傾き、そのままの勢いで下へと落ちる。


「え、もしかしてこれって」

「あ、う~ん。まぁ仕方がない。お兄ちゃんの運がいいということにしておこう。はいこれ、おめでとう」

 

 おじさんからぬいぐるみを受け取ると、モフモフとした柔らかい感触が心地よく、景品を取ったことの達成感も遅れながらも体に伝わっていた。あと、取ってからよく見るとこのぬいぐるみは頭に耳が付いているし亞人のぬいぐるみなのかな。


「すごいじゃないクロノちゃん」

「ありがとう。これフィリアが欲しかったんでしょ」

「ええまぁ、とりあえず、遊びたかったから適当に選んだだけど、くれるならもらっておくわね」

 

 フィリアはぬいぐるみをクロノから受け取るとクロノの反対側に抱き抱えるようにして持つと二人はデートを再開した。


最後まで読んでいただきありがとうございます! 引き続きブックマーク、評価、感想をお待ちしております!

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