メイオール様の秘密の部屋に入ります
現在二人は、月明りに照らされた教会内を横に並ぶようにして、メイオールの部屋に向かっている。
「しかし、まさかアーロンさんがついて来るとは思っていませんでした」
「我も、もしメイオール様が起きていらっしゃるなら、相談にしたい事があるのである」
「そういえば、アーロンさんは、体はもう大丈夫なのですか?」
アーロンはフィリアと戦い、完敗し、心身ともにズタボロにされ、その日以降その事で一部のシスターからは心配されたが、現在ではほとんど回復は終えていた。
「もう問題ないである。……しかし、我はフィリアに悪い事をしてしまったであるな」
あの後、何度もフィリアに向かってあの言葉を言ってしまった事に何度も後悔し、懺悔を何度も繰り返すその姿を陰で見守っていたイフルは、アーロンが現状に戻って安堵していたのだ。
「しかしフィリアの、教会内の評判は、最早これ以上悪くならないほどになっていますし、そのフィリアも、教会にいる誰にも心を許してくれませんから、参りましたね」
イフルの言葉に、アーロンはフィリアの心を動かせる人物が思い浮かんだが、その人物にもアーロンは会うことは出来ないと思っていた。
「……我は、フィリアとクロノに謝らないといけないであるな」
アーロンはうつむき、その表情はいつもとは違い本当に申し訳なさそうな表情であった。
「大丈夫ですよ。いつか必ずその機会がありますのでそれまで待ちましょう。それでその時が来たら、ちゃんと謝りましょうね」
イフルは、優しくアーロンに囁いた。そして、その言葉はアーロンの心の奥にまで入り込み、痛む心を和らげてくれた。
「そうであるな。あと、イフル、礼を言うである」
「いえいえ、それと、ちょうど着きましたね」
イフルとアーロンは、会話をしている間にメイオールの部屋に到着し、イフルはその扉を軽く叩いたが、返事がなかった。
「やはり、今日はもう、就寝されているのであるか」
アーロンはやはりと言った言い方であったが、隣にいるイフルは、
「うーん。しかし、こうなると困りましたね。それに次はいつ会えるか分かりませんし」
イフルは、顎に手を当てて眉をひそめて考える仕草をしており、そして何か考えが思いついたのか、
「ここまで来たら、とりえあえず、部屋に入りましょう」
そう言ってイフルは、扉の取っ手を掴むと、
「イフル。さすがにそれは良くないのであるか?」
アーロンはすぐに、イフルのその行動を止めようとしたのだが、
「アーロンさんは黙っていてください!」
イフルに語気を強めて言われてしまったので、アーロンは「はい」と小さく返事をして黙りこみ、その姿を確認したイフルは取っ手を引くとその扉は、きぃと、音を立てて開いたのだ。
イフルはその事に目を丸めて驚いた。いくら教会内といえども、不用心すぎないかと思ったが、今はそれでありがたかったので、それ以上気にすることはなかった。
「失礼します」
「失礼するである」
二人は、ゆっくりと足音を立てない様にメイオールの部屋に侵入し、メイオールを探した。だが、その部屋に人の気配はなく、
「メイオール様。いませんね」
「そうであるな」
イフルはその事に肩を落とし、アーロンは自分がしてしまった事の重大さに気づき、その罪悪感で押し潰されそうになっていたが、イフルはお構いなくメイオールの部屋を漁っている。
「ちょっ、ちょっとイフルよ。何をしているのであるか」
「何って、何かないか探っているんですよ。それに不用心な、メイオール様も悪いんですからね」
イフルは鼻歌を歌いながらどこか楽しそうに、メイオールの部屋を物色しており、それを眺めていたアーロンはさすがに良くないと思い、イフルを止めようとすると、
「あれ? アーロンさんちょっと来てくれませんか?」
「どうしたのである?」
「ここちょっと、変じゃないですか?」
イフルが指を指したところの本棚に指を当てると、その指に風が当たっていた。
「……風を感じるであるな」
「アーロンさん。やっぱり、ここに何かありますよ!」
イフルはこの事に目を輝かせているが対照的にアーロンは眉をひそめて、その今までのイフルの行動を諫めるように声を出す。
「いや、ここはメイオール様の部屋であるぞ。勝手にいじるのは……ってイフルよ! 何をしているのであるか⁉」
「いやいや、ここまで来たらやりきりましょうよ」
イフルは、ニヤニヤと笑いながら、本棚の本をいじりだして、いろいろと触れていると、がこんっという何かがハマった音がすると同時に、本棚が後ろに押し込まれ、壁面に張り付くように移動すると、そこには、下へと続く階段があった。
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