二人だけの話再び
手元の明かりを除けば、わずかばかりの月明りほどの明かりしかない教会内を、ある場所を目指してイフルは髪の両側にある縦ロールを揺らして、スタスタと歩いていた。
本来なら自室で、就寝している時間なのだが、なぜこのような時間に教会内を歩いているかというと、それはメイオールに会う為である。
イフルは以前からメイオールに用件があったのだが、事あるごとに会うことが出来ず、今日を迎えていた。また、他のシスターによると今日も時間帯が合えば会う事も出来たらしいが、お互いに多忙なので、その時間は全く合う事がなかった。
その為、イフルは失礼を承知でこの時間を選んだのだ。この時間になれば外出していない限り間違いなく、メイオールは教会の自室にいるはずであり、聞いた情報であればメイオールは、今日は外出をしていないのだ。
ならば今しかないとこうして暗い廊下を歩くことまでしているのだが、すでに就寝してしまっている可能性もあるので、そうなってほしくないと心の中で思いながら、歩いていると、
「あら? あの人は」
目を凝らして確認してみると目の前には、いつも通り見回りをしていたアーロンがいた。
イフルはアーロンを目視していたが、まだアーロンは、すぐ後ろにいるイフルの事に気づいていなかったので、イフルはニヤリ、と笑い、そのいたずら心を表に出さない様にして、息を潜めてすすすっと気づかれない近づいて、アーロンの背後を取り、その肩をポンと叩くと、アーロンはビクッと体を震わせて、顔を後ろに向けた瞬間、その右頬にイフルの細い人差し指が突き刺さったので、眉をひそめて、視線だけでイフルの方を見ると、左手で口元を抑えて、嬉しそうな顔をしたイフルがいた。
「……何をするのであるか……」
「あら、ごめんなさい。私としたことが、ついしてしまいましたわ」
イフルはすぐに指を引っ込めて、口では謝罪の言葉を述べているが、きっと本心ではそうは思っていないだろうと、アーロンは思っていた。そして、「はぁ」と一息ついてから、
「こんな時間に何をしているのであるか?」
「今日こそは、メイオール様にお会いしようと思っていまして」
「またであるか」
「そうです、またです」
イフルはアーロンの問いに、にこやかに答えた。以前もアーロンは見回り中に、イフルと出会っており、その時も、イフルはメイオールの事を探していたのだ。
「今日は、もうメイオール様は就寝されているはずだと思うが、それでも会いに行くのであるか?」
「そうです。確かに寝ていらっしゃるかもしれませんが、今日行かないと次に会える日はいつになるのか分かりませんからね。では、私はこれで失礼しますね」
イフルは、そう言って縦ロールを揺らし、メイオールの部屋に向かおうとすると、
「せっかくだから我も一緒に行ってもよいであるか?」
そのアーロンの申し出にイフルは、柔らかな表情で応えるのであった。
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