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与えられた十秒間のアタックチャンスタイム!……そして後の絶望


 二人が来た場所は、以前クロノとアーロンが戦った場所であった。

 

 フィリアがこの場所を選んだ理由も、後でアーロンに場所が悪かったからなどと言い訳などされたくないので、わざわざこの場所を選んだのだ。そして、フィリアは背中で腕を組み、にこやかな表情で、その提案を口にする。


「さて、そうしたら遊びを開始したいと思うけど、普通に戦ったら面白くないわね。そうだ! 私は、十秒に一回しか攻撃しないわ。それでどうかしら?」

「……随分と慢心しているであるな」

 

 まるで、そんなものはいらないと言いたげなアーロンを見たフィリアは思わず、ごみを見るような目をしながら冷めた声で、「早く答えろよ」と、憎しみのあまり漏らしてしまったのだが、さすがに今のは良くないと思ったので、丁寧に言い直して伝える。


「じゃあ、面白くないけど普通に遊ぶかしら?」


 フィリアはアーロンに向かって笑顔で言い直した。その姿はいつものフィリアであればその容姿も相まって、可憐で可愛らしい笑顔だったが、この状況でその笑顔は、ただただ不気味であったが、アーロンはそのフィリアを目視しても怯むことなく、


「いや、貰えるものは貰っておくである。それでその十秒に一回しか攻撃しないというのは、どういったものであるか?」

「それなら決めてあるわ。私は十秒に一回しか攻撃しない。もちろん防がれたら次に攻撃できるのは十秒後に一回のみ。そして更に攻撃するのは十秒後になるわ。それに、二十秒経ったとしても一回しか攻撃しないわ。どう? わかったかしら」

 

 ようは、フィリアはどのような状況でも十秒に一回しか攻撃しないという。しかも、時間の溜めなどは一切なしなので、連続して攻撃も出来ない。 

 

 それを聞いてアーロンは耳を疑った。なぜなら、そんな戦いはありえないからである。仮に一発を食らったとしても追撃があるのは最短でも十秒後。最早そんなのは追撃とは呼べるものではない。


「フィリア、貴様は我をなめているのであるか」

「ええ、そうよ。だから遊びましょうって、初めから言っているじゃない」


 フィリアは表情を歪め、口角を上げながら、楽しそうに言い放った。


「遊び。であるか。そうしたら、せいぜい遊びで怪我をしないといいであるな」

「そうね。気をつけましょう」

 

 準備は整い、お互いに距離をとり配置に着く。

 

 今回は、メイオールがいないのでクロノの時とは、違い防御魔法が無いので武器の使用はお互いにしない。しかし、アーロンは初めから武器を使用しないので、フィリアは自身が持つ白剣(しろけん)は使用しないだけである。


「それじゃ、アーロンから初めていいわよ。それと、開始したら数え始めるからね」

「本当にどこまでも余裕であるな」

 

 余裕たっぷりに言い放つフィリアに、言い表すことが出来ない感情が湧くアーロンは、どうしてもフィリアに一泡吹かせたかった。

 

 必ず一泡吹かせる。そう誓ったアーロンは、両足に力を込め、初めの一撃に全力で臨むことにした。その迫力と共にその覇気は凄まじいものだが、それでもフィリアは表情一つ変えない。


「では、行かせてもらうである‼」

 

 アーロンは渾身の一撃をフィリア目掛けて打ち込むが、その攻撃はフィリアに当たる寸前に、ひらりと回避されてしまい、フィリアに触れることすらなかった。


「凄まじい一撃ね。でも当たらなきゃ意味ないわね」

 

 フィリアは余裕の表情に対して、全力で打ち込んだアーロンはその反動により肩で大きく息をしていた。


「さて、十秒経ったし私もこれで一回攻撃できるわね」

 

 その言葉に、アーロンはすぐにフィリアと距離をとったが、フィリアは瞬時にアーロンの懐まで近づき、アーロンはフィリアに何をされるか分からない恐怖により顔を歪めたのに対して、フィリアは、「えい!」と可愛い声を出して、アーロンの額にコツンとその細い指を軽く当てただけだった。

 

 その一撃は声と同じぐらい可愛らしい一撃であった。また、アーロンはその攻撃により傷は負っていなかったが、恐怖から解放され一瞬、意識を失いかけたが、すぐに気を立て直して何事もなかったように振る舞う。


「…………何をしてくるかと思ったが……まだ、我を愚弄するのか……」

「強がらなくてもいいわよ。今したのは挨拶みたいなものだから」

 

 アーロンはフィリアから距離をとり、急いで息を整える。次の攻撃は十秒後に行われ、そしてその時計は今も動き続けている。

 

 呼吸を整え終え、次は連撃でフィリアに向かう。一撃がダメなら連撃でフィリアに攻撃を与える隙を与えなければいいのである。


 「ウオオオオオオオオアアアアアアアッッ!」

 

 声を出し、勢いでフィリアに向かって突撃する、全力の連撃は、威力こそ先ほどよりも低いが確実にフィリアに当たっている。

 

 いける。この戦法で戦えればフィリアに確実に攻撃を与えられる。アーロンはそう感じると、わずかばかりだが笑みがこぼれ、そのアーロンを目を細めて眺めるように見続けるフィリアは無言でアーロンの連撃を防ぎ続けるが、フィリアの腕や、肘、腿などにアーロンの攻撃が当たり、少しの痛みが体に伝わったがそれよりも今は、


 「……じゅう」

 

 十秒の時を待つことに専念したフィリアは、待ちに待ったその瞬間に、うっすらと笑みを浮かべるのであった。


最後まで読んでいただきありがとうございます! 

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