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その完成度に最近のシスターは職種が変わったのかと思えるぐらいだ


 クロノと、のじゃシスは、朝早くから一緒にギルドのワープポイントの近くに来ていた。クロノは到着してすぐにクエストの確認も終え、受付さんにワープポイントが使える事も確認が取れていた。

 

 しばらすると、ワープポイントの順番がクロノ達の番になり、のじゃシスは、ようやくやって来た順番に心躍らせ、歩を進める。


「それじゃ、行こうかの」

「あっ、ちょっと待って、のじゃシスさん、ここからは僕一人で行ってくるから、のじゃシスさんは家で待っていてくれないかな?」

 

 のじゃシスは、クロノにそう言われ、昼食が入った籠を持ったその腕をだらりと、伸ばしてクロノの顔を見ながらぽかーんとしていた。そして、数舜後その小さな口を大きく開いてぎゃあぎゃあと騒ぎ出す。


「えー! わらわはお留守番なのか⁉ 嫌じゃよ! わらわも一緒に行くのじゃ!」

「気持ちは嬉しいけど、地竜は危ないから、のじゃシスさんは、こっちで待っていてね」

 

 ギルドに来る途中まで、のじゃシスさんは、うきうきと楽しそうに籠を持ちながら歩いており、その事もあって、クロノは最後までその事を言えなかったのは、クロノも申し訳ないと思っていたが、ここで言わなければならないと思ったので、意を決し伝えたのだが、その後にのじゃシスさんは、うつむいて、その小さな口を一文字に結んでいた。

 

 クロノはその姿を見て、悪い事をしてしまったと、心を痛めたが、ようやく分かってくれたのかとも思いクロノは、ワープポイントに向かって進もうとすると、


「それはわらわが、幼女みたいな姿をしておるじゃからか?」

「えっ?」

 

 急に、のじゃシスが、あの武器屋で見せた周囲を凍てつかせるような冷たい声を出し、その声にクロノは、自分でも分からずに心臓をバクバクと鳴らしており、すぐに口を動かすことが出来なかった。


「確かにおぬしと一緒にいた女は、わらわよりも大人じゃったが、だからと言ってわらわがそれでおぬしと一緒に行けないのは酷なのじゃ。………でも、おぬしがそう言うなら(つれていけ)わらわはおぬしが帰って来るの(つれていけ)を待っているからの。しかし、あの家だとやることがない(さもなくば)の。そうじゃ! 余った時間で部屋の掃除とかを(どうなるか)やっておくから楽しみしておくのじゃ(わかっておるのぉ)な!」

 

 一見、のじゃシスさんの満面の笑みは幸せそうで、年相応の可愛らしい笑顔だったのだが、クロノにはそのようには見えなかった。

 

 むしろ、クロノはそののじゃシスの言葉に戦慄した。部屋を片付ける…………だと。

 

 確か、のじゃシスさんは、僕のお世話しに来ただけで、お手伝いをしに来た訳では無いと始めから言っていたことを思い出し、それらを考えてみると、この言葉からは連れて行かないのであれば、お前の家がどうなっても知らないぞと、脅しにきているのである。

 

 その脅迫の仕方は完璧で、最近のシスターは職種(ジョブ)が変わったのかと思えるぐらいだ。

 

 しかも、幼女の段階でこの完成度であれば、フィリアがあのような振る舞いをしていてもおかしくはないだろう。

 

 今度、あの教会に行ったらどんな教育をしているのか問い詰めたいぐらいだ。


「いい子ですね。私も部屋の掃除をしておかなくちゃ!」

 

 受付さんは、クロノと、のじゃシスとのやり取りを微笑ましく眺めていたが、その被害者であるクロノはそんなに悠長(ゆうちょう)にこの事態を見る事が出来なかった。

 

 ただでさえクロノは、最近のシスターによるとてつもない威力を誇った精神攻撃を、何度も受けていた為、この事態を、穏やかに言えるという事は、この事態がどれだけ危機的状況かを理解していないからだろうと、叫びたかった。

 

 さらに後ろからは、ワープポイントの順番を待つ冒険者が早く行けと言葉を荒げている。しかし、そんなことなど気にならないぐらい。この事態は危機的状況なのだ。

 

 ん? ちょっと待て、今誰だ、僕をロリコンって言った奴、今すぐに出てこい。この危機的状況を理解させてやる。

 

 だがクロノよりも先にその攻撃の主犯となる、この小さなシスターは、クロノに向けてトドメの一撃をその小さな口で発する。


「それで、どうするのじゃ?(帰ってきたら) 部屋の掃除をして(どうなっているのか)おけばいいのかの(わかっておるの)?」

「…………一緒にクエストに行こうか」

 

 クロノは、奥歯を噛みしめながら、のじゃシスとクエストに行くことを決断した。


「わーい。なのじゃ!」

 

 のじゃシスはわざとらしいぐらいに、大げさに喜びを表現し、クロノは、のじゃシスの提案のような脅迫に負けてその小さな手を取り、一緒にワープポイントへと進むのであった。



最後まで読んでいただきありがとうございます! 

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