そういえば、あの方って誰なんだろう
「ああ~、やっぱり温泉は最高だね~」
「そうじゃの~。ぽかぽかじゃ~」
クロノと、のじゃシスは二人並んで部屋の中からアクアミラビリスが、一望出来る貸し切り温泉で、疲れをとっていた。
二人は、アクアミラビリスの各所にある温泉をどれにするか二人で話合った結果、温泉専用の衣類を着て、なお二人で入れるこの温泉に決めたのだ。
またこの温泉は、アクアミラビリスの温泉の中でも評判の温泉である為、値段は他の温泉よりも高めなのだが、クロノはコクウを買った時に余ったお金で、のじゃシスへのお礼も兼ねてこの場所にしたのだ。
今はお互いに用意された脱衣所で着替えてから、どっぷりと体を温泉に浸からせて湯船に浸かっているのだ。
「しかし、おぬしは本当にいい奴じゃの~」
「僕も、のじゃシスさんには、感謝しているからね」
「そうか、そうか。おぬしがそのままいい奴であれば、またいいことがあるから、ずっとそうしておくのじゃぞ」
のじゃシスとクロノは、お互いに顔を緩めて、なんとも幸せそうな表情をしていた。
温泉の温度は少し熱めに感じるぐらいであったが、その温かさがじんわりと足の指先まで温めてくれており、心と体を癒やしてくれていた。そして現在は、二人共静かに温泉を心行くまで楽しんでいると、クロノはふと、あることが気になった。
「のじゃシスさん。ちょっといいかな?」
「なんじゃ~?」
「僕があの教会に入って、あの方から奇跡や加護を手にする事って出来るのかな?」
のじゃシスはクロノの質問に、その大きな目をつぶりながら答える。
「やめておくのじゃな。おぬしがあの教会に入るのは、わらわから進めることは出来ぬ」
「なんでダメなの?」
クロノは体を、のじゃシスの方へ向けて問いかけ、のじゃシスはその問いに対してよく話してクロノを分からせようとする。
「今から、おぬしが奇跡や加護を手にしたとしても、どのみち急には強くはなれないのじゃ、それに前にも言ったことじゃが、あの方は、おぬしが奇跡や加護を持っておらんでも気にせんよ」
「そっかー、やっぱり今のままで頑張るしかないのか」
「そうじゃ、今は、そのまま真っ直ぐに進めばよい」
クロノは、のじゃシスに説き伏せられ、大人しく湯船に深く体を浸からせた。そしてクロノにはもう一つ気になることがあったので、せっかくだからこの機会に、のじゃシスに問いかける。
「そういえば、あの方ってどんな人なの?」
「どんな人というのはどういう意味じゃ?」
「単純にどういう人なのかなって」
フィリアの友達であり、メイオールさん達のようなシスターやモンクに力を授ける人で、現在その人はどこか遠くにいるらしいが、それ以上の事を知らなかったので、クロノはもっとその方の事を詳しく知ろうとしており、のじゃシスはそのクロノ問いに、いつもと変わらない口調で、
「ああ、それはじゃな。簡単に言うと神じゃよ」
「神様ですか⁉」
クロノは、ばしゃと、お湯を湯船から押し出しながら、のじゃシスの答えに開いた口が塞がらないほど、びっくりしていた。
「おぬし、むちゃくちゃ驚くのぉ」
「だって、神様だよ! そりゃ驚くよ!」
この時、クロノは予想を遥かに超える答えに、衝撃を受けていた。しかし、思い返してみれば、奇跡や加護を与えるという行為を行っているのが、神様であれば理解できる。
「フィリアは神様と友達だったのかぁ。やっぱり、フィリアはすごいな」
「そうじゃな。さて、わらわは先にあがっておるぞ。これ以上入っておったらのぼせてしまうからの」
クロノは、フィリアの事をうらやましいと思っていると、のじゃシスは、湯船からそそくさと脱衣所へ行ってしまったので、クロノも、のじゃシスを追うように湯船から出て、自分の脱衣所へと向かうのであった。
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