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クロノ、武器屋で憧れの武器を買う 後編


 のじゃシスが決めた勝負は、お互いに手を組み、肘をついて先に、左側の台に手の甲をつけたら負けと言う勝負であった。

 

 またこの勝負では、魔法の使用は一切禁止で、完全な力比べの勝負であった。

 

 クロノ側は、のじゃシスを入れた二人で、対して相手は三人であった。初めは二対二で勝負するはずだったが、男達もここまで来たら卑怯と言われてでも勝ちに来たのだ。

 

 だが、クロノは、のじゃシスは戦えないと思っているので実質一対三の勝負であると覚悟していた。


「なんか、昨日の事を思い出すなぁ」

 

 昨日もクロノは、突然フィリアに連れて来られて勝負する事になったので、また昨日のようなことが起きなければいいと思っていたが、すぐに弱気になっちゃダメだと思い、両頬をパンパンと叩いて気合を入れるのであった。

 

 そのクロノの姿を見たのじゃシスは、座っているクロノの後ろに来て、


「おぬしー絶対に勝つのじゃよ……。負けたらどうなるか……分かっておるのよぉ…………」

 

 のじゃシスは、ほほ笑みながら、その小さな手でクロノの両肩を軽くポンポンと、叩きながら応援しているのだが、クロノには、その言葉は応援というより命令としか聞こえなかった。


「もちろんですよ。それと、のじゃシスさん……なんか怒っていません?」

「わらわが怒る?…………はっ! ……おぬしも面白いことを言うの……それならば―――――」

 

 のじゃシスは、クロノの言葉を鼻で笑って否定すると、ゆっくりと男達の前に出ようとしたので、クロノは急いで、のじゃシスの手を取って止める。


「のじゃシスさん待って!」

「なんじゃ?」

「のじゃシスさんの分も僕が晴らしてくるから、のじゃシスさんは僕が勝てるように祈っていてよ」

 

 のじゃシスは、そのクロノ言葉に対して、にっこりとほほ笑みながら、


「おぬしには、わらわの至極の祈りを送ってやるぞ。だから、勝ってくるのじゃぞ」

「うん! 行ってきます!」

 

 クロノは、元気よく返事をしてその戦場へと向かって、クロノは目の前にいる男をじろりと見ると、そのクロノを見た男は不機嫌そうに、


「おまえには恨みはねぇけど、ここまで言われちゃ、俺達も引き下がれねぇのよ」


  男はクロノを憎たらしく見下すが、クロノは一歩も引くことなく男を睨みつけた。


「では両者手を組んでくれ」


 武器屋の店主に促され、クロノと男はその右腕を台に置き、手を組み合い、店主はその組み合った手に自分の手をのせる。二人はその勝負が始まるのを今か今かと待っているおり、そして店主の「はじめっ!」という合図と同時にお互いに力を込め決戦の火蓋は切られた。

 

 試合開始後、クロノと男は、お互いに一歩も譲らない拮抗した流れであった。

 

 男は自分よりも背丈の低いクロノが、ここまで出来ることに驚かせられたが、まだ焦るほどではない。男にはまだ余力があり今も、ほんの少しだが、クロノを追い詰めていた。 

 

 だが、その事をじれったく思った男は、クロノに向かって話しかける。


「なぁ、おまえがここで負けてくれれば、お前に一万リグをやるよ」

 

 男のその言葉に、ピクリとクロノは耳を動かし、その反応を見た男は、たたみかけるようにクロノに向かって囁く。


「どうだ? 一万リグだぞ。お前じゃ簡単に手に入らない金だ」

 

 男はクロノを侮辱しながら、更に言い寄る。だが、クロノは一切その言葉に反応しない事につまらなく思った男は面倒になり、


「お前のような雑魚は、大人しく従っていればいいんだよ」

 

 クロノは男が発したその言葉に目を見開き、静かに囁くようにしてクロノは言う。


「……そ…………って………だ………よ」

「あ? なに言ってんだよ?」

「その言葉訂正しろよって言ってんだよ!」

 

 その言葉はクロノの逆鱗に触れ、クロノはスバンッと一瞬で、男の手の甲を台につけるのであった。


「はあぎゃあああああああああああああああ‼」

 

 手の甲を台につけた男は肘を手で抑えながら床にゴロゴロと転げ回る。


「僕はこんなところで負けていられないんだよ‼」

 

 クロノは転げまわる男に向かって吐き捨てるように、言葉を発したそのクロノの姿を見た男の仲間は、酔いが覚めてくるとあることを思い出す。


「おっ……おい、まさかあいつって、あのブラックスターじゃねぇか……」

「ブラックスターって……アノ、地竜を瞬殺したアノ、ブラックスターか⁉」

 

 クロノは、フィリアとの最初のクエストで地竜を倒しており、受注から帰還までの時間が初心者冒険者では、考えられないような速さであったことから、クロノの着用している服装である黒色と期待の新星ということで、一部の人達からブラックスターと呼ばれていて、その傍らには、いつまでも見ていたいと思えるほど美少女がいるとも言われている。


「俺、そんな奴に勝てる気がしねぇよ!」

「俺もイヤダ!」

 

 残った二人は、急におどおどしだし、それの二人を見たクロノは、


「次はどっちが、戦うのかな?」

 

 クロノに恐怖している二人は、その姿が恐ろしく見え、二人は、顔を見合わせると、


「「すいませんでしたー‼」」

 

 床で転げまわる男を二人で掴んで、引きずるようにして全力で走って逃げだした。

 

 その姿を見てクロノは呆気にとられるが、とてとてと近づいて来た、のじゃシスがクロノの手を掴み、


「おぬしよくやったな!」

 

 力強くのじゃシスが褒めると、クロノは元気よく返事をした。


「うん! やってやったよ!」

 

 その気持ちが晴れ晴れする結果に二人は大きな声で笑い合い、店主はその笑い合う二人に近づき、


「それじゃあ、このコクウを買ってくれるか?」

「はい、もちろんです!」

 

 クロノは、代金を支払い、憧れのコクウを手にして、天に掲げるのであった。


最後まで読んでいただきありがとうございます! 

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