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色鮮やかに輝き続ける魔石を買い取るおばあさん


 その後は、クロノは精神を少し疲弊しながらも、短剣が折れることとなったアーロンとの戦いについて、のじゃシスに語っていた。

 

 その戦いは突然開始され、終始拮抗する戦いであった。クロノは持てる力全てを使いアーロンに挑み、その戦闘はどちらが勝つか分からないほどのお互いに一歩も引かない白熱とした戦いであり、途中まではわずかな差ではあったが、クロノが優勢だった。アーロンもクロノを認め全力の力を出し始めてからは優劣が決められない一進一退の攻防が続き、クロノは最後の底力を使ってアーロンを追い詰めたが、アーロンの最後の一撃が、クロノの短剣を粉砕し、クロノは負けとなった。


 以上が、短剣が壊れてしまうまでの出来事だということをクロノは、のじゃシスに話終え、その話を聞いたのじゃシスは、うんうんと頷きながら、


「戦いはさておき、おぬしの話を聞く限りじゃと単純にその司教が、おぬしの事が嫌いだったのじゃろう。後は、おぬしが部外者だったからということも考えられるしの、まぁ言ったらキリがないがとにかく言えることはその司教の思惑に上手く乗せられただけじゃな」

 

 クロノは、のじゃシスの話に納得する。クロノはあのフィリアについて行くだけの力があり、尚且つあのアーロンと互角であれば力は問題ないはずだ。


「そうなると、僕は厄介だから適当に誤魔化して排除されただけなのか」

「簡単に言うとそんな感じじゃな。さて今の話を聞いてみておぬしはどうするのじゃ」

「もちろん、あの方って言う人が来てもいいって言っているなら、僕もその場所に行ってもう一度僕はフィリアに会うよ。」

 

 メイオールさんやアーロンさんが、どんなことを言ってきたとしても、あの方という人が来ていいといっていたとのじゃシスさんが、言っているのなら問題ないはずだ。


「そうじゃな。さて、その為にもまずはここで金を用意しなくてならないの。おぬしの覚悟は変わっておらんか?」

「もちろんだよ! でも本当にここで売れるの?」

 

 二人は今、アクアミラビリスで魔石を取り扱う店の前に来ている。その店は大きな通りから一つ離れた細い路地にあり、その店構えは、深みのある作りで、店の壁にはツタが屋根まで伸びており、よく言えば知る人ぞ知る店であった。 


「のじゃシスさん、こんなお店よく知っていたね」

「まぁの。さてわらわはここで待っておるからおぬしは早く済ませてくるのじゃ」

「わかったよ。あと、何かあったら、すぐに大声で呼んでね」

「子供扱いは無用じゃよ。ほらはよ、入れ!」

 

 のじゃシスを子供扱いしたせいでギロリと睨まれながらクロノは、のじゃシスに押されてその店に入店する。

 

 中に入ると、薄暗い店内に一人の老婆が、かすれた声で「いらっしゃい」と、クロノに声をかけた。そしてクロノは初めて入るお店に戸惑いながら、魔石の買取りをしているかを問いかけると、老婆はクロノに対して待つように言い、近くにあった木製の三脚椅子に腰かけ鑑定道具を取り出した。

 

 クロノは、老婆に買い取ってもらう魔石を渡すと、老婆はゆったりとした手つきで鑑定にとりかかり始め、クロノは柱の隣で突っ立っていると、それを見た老婆は、


「ぼうやも、その椅子にお座り」

 

 老婆は、クロノの後ろにある老婆が今座っているのと同じ木製の椅子に向かって指をさし、クロノは遠慮なく椅子に腰かける。

 

 魔石一つにかかる鑑定の時間はそれなりに長かった。そして、その間にクロノは店内をキョロキョロと見渡していると、魔石はもちろんだが、それ以外の物も年期が入っていそうな物ばかりであった。

 

 その後老婆は鑑定を終えると目に手を当てて、服の中から煙草を探り出し、口に咥え魔法で指に火を灯し、煙草の先端に火をつけると、すぅーと吸い込み気持ちを良さそうに煙を吐いて一服すると、右の歯で煙草を咥え直し、ゆっくりとした動作でクロノを見て、かすれた声で言う。


「ぼうや、いいものを持っているね……。どこで手に入れたんだい?」

「これは、自分のいた村で手に入れた物と、草原地帯で手に入れたものです」

「そうかい。……久しぶりにいいものを見せてもらったよ」

 

 老婆は、よっこらしょと、言いながら椅子から立ち上り、がちゃがちゃと金庫の鍵を開けて、その魔石の買取り金額をクロノに提示する。


「そうだね、全部まとめて売ってくれるなら十万リグだが……どうだい?」

 

 クロノはその金額にギョッとしながら、目の前にある大金を見て悩むことなく即決する。


「これでお願いします!」

「それじゃあ、今小袋を持って来るから待っていてくれ」

 

 老婆は背中を丸めながらのろのろと、小袋に手にしてリグをその中に詰めてクロノに手渡し、また三脚椅子に座るのであった。


「お婆さん、ありがとうございました!」

「また、おいで」

 

 老婆は、クロノに手をゆっくりと手を振りながら見送るのであった。

 

 クロノが店から外に出ると、石を足元で転がせて暇そうにしているのじゃシスがいた。そして、のじゃシスはクロノが店から出て来たことに気が付くと、とことこと、クロノに近づきその手を握る。


「どうじゃった? 売れたか?」

「うん! 予想以上に高い金額で買い取ってもらえたよ!」

 

 クロノは、のじゃシスに笑みを見せながらその成果を伝えた。


「それなら次は武器を買いに行くとしようかの」

「そうだね! 早く買いに行こう!」

 

 早く武器屋に行きたくてうずうずしているクロノは、早速武器屋に向かって歩き出そうとした時、のじゃシスは静かにクロノに問いかけた。


「……中の店の者はどうじゃったか?」

「お店の人は年をとったお婆さんだったけど、まだ元気そうだったよ」

 

 その言葉を聞いたのじゃシスは、穏やかな口調で、「そうか」と呟くのであった。


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