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のじゃシスさんと一緒に初めての買い物に行きます


 のじゃシスの叱咤激励(しったげきれい)により復活したクロノは、少しでも早くクエストに向かう為に部屋で荷物の選別をしていたのだが、短剣がないことに気づき意気消沈しかけたが、すぐに負けるものかと、熱意を取り戻した。

 

 そして、のじゃシスは、またしょぼくれたクロノの姿を見て、一瞬クロノの事を気にかけたが、どうやら大丈夫そうなので、のじゃシスは安堵(あんど)し、小さく息を吐くのであった。


「そうしたら、おぬしの相棒を買いに、いかんといけないの」

 

 だがクロノは、冒険者になってからまだ日が浅く、村にも仕送りをしていたので、手持ちのお金は生活に困らないほどしか残っていなかった。


「そうだね。でも短剣を買うお金がないなぁ」


「しかし、おぬしは武器がなければ、どうにもならんじゃろ」

 

 クロノは、のじゃシスと同意見であったのでどうにかして武器を調達しようと深く考えると一つの案を思いつく、


「そうだ、魔石(ませき)を売ろう」


 魔石はクロノの大切なものであり、魔石の価値についても熟知(じゅくち)している。本来ならば手放したくはないが、そう言っていられないので、踏ん切りをつけて売ることにしたのだ。


「おぬし魔石を持っておるのか? たしかに魔石は高価じゃが、そう手に入るものではないぞ」

 

「僕なりに頭を捻った結果だよ。それにこれから僕と共に戦ってくれる相棒の為だから、よしとするよ」


「まぁ、おぬしがよければそれでいいのじゃが」

 

 のじゃシスはその大きな目をぱちくりさせて言うのに対してクロノは、思い切って言うのであった。


 そして現在はクロノが使う次の相棒を求めて、アクアミラビリスの市場に向かってクロノと、のじゃシスは、仲良く手を握って並んで歩いている。そして、クロノはこの時、フィリアともこうやって手を握っていたなと思い出していた。


 またクロノの手を握るのじゃシスの手は、ちいちゃくて可愛らしい手であった。


「でもまさか、のじゃシスさんが、一緒に来るとは思っていなかったよ」


「わらわはあの方から、ぬしが完治するまで一緒にいろと、言われておるからの」

 

 クロノが、一人で新しい武器を買いに家から出ようとすると、とことこクロノを追うようにして、のじゃシスはクロノの手を掴んできたのだ。


 「そういえば、あの教会の人達が言うあの方って結局どういった人なんだろう?」

 

 クロノはフィリアと行動を共にしていたが、教会との関係は全くないので、そのあの方という存在がよく分かっていなかった。


 「まぁ、言ってしまえば、シスターやモンクの、力の源となる存在と言えば、分かりやすいかの。そして、その力が奇跡と加護じゃ」


 のじゃシスは、左手の人差し指を伸ばしながら、手首をクルクルと回し、ゆったりとした口調で話始める。

 

 シスターとモンク達には、奇跡(きせき)加護(かご)が与えられており、奇跡と加護は、主にその使い手や人々を危機から救い、または守る為にも使われる。


 またその奇跡と加護には個人差があり、絶対の鉄則がある。それは最初に授かった以上に力が増えることはないということだ。

 

 だが、その力はシスターやモンクの使い方にもよるので、仮に力を多く授かっていたとしても、力を発揮出来ていなければ、結果として無駄となる。

 

 その為、自分が与えられた力を熟知することが、その力を使う為には必須なのだ。

 

 そして、その力を授かったシスターやモンクには体の腹部か背中に刻印が刻まれるということらしい。また刻印は稀に腹部や背中以外も刻まれるらしい。


 「まぁ、細かく言えばもっとあるのじゃが、今はこれぐらいでよかろう」


 「ということは、フィリアにあった。あの刻印はあの方によるものだったのか」

 

 この時クロノは、薄っすらと覚えている記憶を辿(たど)り、フィリアに出会ったばかりの、あの夜に見たフィリアの体に刻まれていた刻印を思い出していた。そして、おまけにフィリアの白く滑らかで透き通るような肌も思い出してしまい顔を赤くする。そしてその事に気づいたのじゃシスは、


 「あれ、おぬし、なぜそんなに顔が赤くなっておるのじゃ?」


 「いや……その……のじゃシスさん、ちょっと暑くないかな?」

 

 クロノは、額から汗をかきつつ、ぎこちない口調で、のじゃシスの方を見ながら言ったのだが、誰でも見抜けるほど、狼狽(ろうばい)したクロノを見てのじゃシスは、「はっは~ん」と言いながら口角を上に向けてニヤリと笑うと、


 「おぬし~、もしかしてその女の裸を見たのかのぉ~?」

 

 まさにその通りのことを言われたクロノは、ずささっと、足を広げながら後退(あとずさ)りをして、のじゃシスから距離を取る。


 「なっ! なんのことかな! 僕はフィリアの裸なんて見ていないよ!」


 「ほう。それならおぬしはその女の裸を見ていないと、神に誓えるのじゃな。もし嘘を言っていた場合は、どんな罰を受けても、後悔せぬのじゃな」

 

 クロノは、のじゃシスから放たれるオーラのような圧力に、動きを封じられた感覚襲われ、すぐに白状するのであった。


 「すいませんでした! 確かにフィリアの裸を全部見ました! でも偶然なんです! それだけは信じて下さい!」


 「まぁ、おぬしは女を襲える度胸も無さそうじゃし、信じてやるのじゃ」

 

 クロノの胸程の高さしかないのじゃシスに、クロノは頭を下げて懇願(こんがん)し、のじゃシスは、にんまりと笑いながらクロノを信じるのであった。


 「さて、こうしておっては日が暮れるぞ」

 

 のじゃシスは、ぐいっとクロノの手を引っ張ったので、クロノはその手に引かれるようにしてまた歩き始めるのであった。


 そしてこの時クロノは、ここがアクアミラビリスの市場内であれば、社会的にクロノは(ほふ)られていたので、到着する前で本当によかったと心から思っていた。


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