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そして今も。これからもずっと続く未来。

「ねぇ、この絨毯を掃除する洗剤はどこにあるのかしら?」

 

 第一学園の廊下は全て絨毯が使われている為全てを掃除するとなると、かなり時間がかかってしまうので順番に掃除を進めているのだ。

 

 それでも特に今日は範囲が広めの日なので掃除当番に当たった者達はため息まじりに作業を開始していたのだが、更にこの場所の担当は困っていた。


「あ、あのそちらの掃除も私達がやりますからどうかその掃除道具をかえしてくれませんか?」

 

 フリフリのメイド衣装をまとったその者は、やる気に満ち溢れており、今も指示を待っている。


「嫌よ。それとも私が掃除をするって言っているのに文句があるの?」

「いえそんなことは! それに掃除だってどこで覚えたのか知りませんが完璧ですので文句のつけようがありません」

「でしょ! だから、絨毯も掃除してあげるから、洗剤を早く寄越しなさいよ」

 

 褒められたことが嬉しかったのか、笑顔で洗剤を要求する。


「あうううう。でもでも、やっぱり恐れ多くて怖いですよ」

 

 新しくやって来た掃除人に元々担当してしたシスターは今では涙目である。


「泣くことないじゃない。ほら、これ使って」

 

 涙目のシスターにハンカチを差し出すと、シスターは断るわけにもいかないのでありがたく借りて涙を拭いた。


「ありがとうございます。こちらは洗濯してお返しいたしますね」

「そのままでいいわよ」

「いえ、そのままお返しするなんて絶対に出来ません!」

 

 シスターはぎゅっとハンカチを握りしめて離さなかった。


「そうなの……それなら洗って返してね」

「ええ、命に代えても」

 

 若干目の前にいるシスターの扱いに困っていると、よく知った人物が通りかかる。


「今日も掃除、頑張っているね」

「もちろんよ。負けたからには約束は守るわ」

「そんな律儀ならなくてもいいのに。でもクォンがこっちに来てくれるとは思っていなかったよ」

「ふふっ、そうね。でもあたし的にはこっちの方が性に合っている気がするから今は結構楽しいよ」

 

 クォンの輝いた微笑みにクロノもつられて微笑む。

 

 一見その姿は微笑ましく見えたのだが、その煌めいた環境に対して気に食わなかった者が即座に行動する。


「はいはい、お掃除メイドクォンちゃんは、ちゃんとお掃除しましょうねー」

 

 どかっと間に割って入るようにしてフィリアは割り込む。


「ちょっと痛いじゃない! なにすんのよ」

 

 クォンは持っていたモップを床に叩きつける。


「えーだって。邪魔だったしぃ」

「しぃ、じゃないわよ! こっちはあんたのゆった事を約束通りに守っているのに、邪魔とはひどいじゃない!」

「まぁまぁ、二人共仲良く! ね! だから落ち着いて!」

「グルルルルッ!」

「ガアアアアッ!」

 二人はクロノに仲裁されお互いに手を出す一歩手前でなんとか押し留まるのであった。


 クロノは用事があってどこかに行ってしまい、残された二人は向かい合いながら話し合っていた。 


「それで新米お掃除メイドクォンちゃんは本当にこのままでいいの?」

「それが約束だし、仕方がないでしょ」

 

 クォンがお掃除メイドとして第一学園にいるのは、最近行われた模擬戦が関係していた。

 

 ただの模擬戦かと思いきや、始めて早々に負けたらクロノには第二学園で過ごしてもらうという条件が裏で仕組まれていたのだ。

 

 しかしクロノ達はそれでもいつもの実力を発揮し、シュメル達の連携の取れた戦法に劣らず攻め続けた。

 

 だが予想通りクォンは遠距離からの攻撃を開始し、それに翻弄されるクロノ達だったがすぐに単騎で対抗し続けたのはフィリアであった。

 

 全ての攻撃をフィリアが引き受けたおかげで、再度攻めに転じたクロノは相手の主軸であるシュメルを狙っていたが、幻影使いのアビッソが行く手を阻み、灼火の奇跡を扱うタルティーが更に追撃するという戦法を全てイフルが引き受け、稼いだ数秒でセラが盾となりクロノを援護しシュメルに一撃を叩き込んだ。

 

 シュメルを撃破するとクォン達の機動力が無くなり、傷だらけでもフィリアが白剣を強く握って振るい続けてクォンを少しずつ追い詰めた。

 

 だが、受けていたダメージは相当であり、クォンはなぜそれ程動けるのか理解出来なかった。

 

 またシュメルを失ったとはいえ、まだ戦えるアビッソとタルティーの連携を崩すのにクロノはかなりの時間を費やしてしまった。

 

 満身創痍で剣を向けるフィリアの執念にクォンは敬意を払って全力で向かい打ちフィリアを撃った後に現れたクロノに瞬きさえ許さないその一瞬で斬り伏せられたのだ。

 

 互角の勝負が終了し会場は拍手に包まれながら、全員医務室に送られ全快した後に、クォン自ら今の立場になることを打診し、最初は断れたがフィリアによって連れて来られたのだ。


「本当にあんた達の連携には驚いたわ」

「あんなの連携じゃないわよ。ただの意地」

 

 フィリアは口を尖らせて反論し、クォンは笑う。


「そうね。特にフィリアの意地は強いものがあったわね。あれには参ったわ」

「それが私であってそれが強さであり、意思だから」

「ふふっ、そこんところは見習うところがあるわね」

 

 その時クロノが駆けてやって来る。


「二人共、話しているところ悪いけど、冥獄凶醒(めいごくきょうせい)の詳細が判明したからすぐに向かうよ!」

 

 クロノは準備があるのかすぐに走り去ってしまう。


「どうやら敵が見つかったようね」

「でもこんな敵なんて大したことはないわ」

 

 二人の双峰はお互いを見つめ合う。


『私の一番の恋敵(てき)はあなただから』



『ただの冒険者がシスターと出会ってS級のチート能力を手に入れました』を最後までお読みいただきありがとうございました。

これにて一度この物語は終わりとなります。

毎話投稿するたびに評価、ブックマークをしていただき嬉しかったです。

最後に、また新しい物語でお会いできるのを楽しみにしております。


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