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これはあたしのじゃなーい!

「なんなよ。まったく。勝ったのはあたしなのに、あいつがあたしの服を持って行ったせいで、なんでこうなるのよ」

「ごめんねクォン。僕からも謝るから機嫌をなおしてよ」

 

 フィリアによって服を持って行かれたクォンは頬を膨らませながらクロノの上着を借りて町を歩いていた。

 

 結局フィリアは水着をそのまま着てどこかに行ってしまったので、その分の料金とお詫びということでクォンの水着もクロノがお金を出して買ってあげたのだ。


「悪いのはあいつであってクロノは悪くないし。むしろ機嫌だって別に悪くないし……」

 

 勝負もあったおかげでだいぶ時間が進み、外に出ると日が傾こうとしていたのでやることもなくなった二人は学園へと向かっていた。


「それにしてもまさかあたしが勝つとは思っていなかったわ」

「そうかな、実際二人共すごく似合ってからどちらも勝つ可能性は充分あったよ」

「でもまぁ。勝つってやっぱり気持ちいいから嬉しいしいわね。特にあいつに勝ったから尚更ね」

「あとはフィリアがちゃんと学園に戻ってくれていることだけが心配だよ」

 

 服は持って行っているからどこかで着替えていると思うけど、もし戻っていなければ探しに行かなければならない。


「心配しなくていいと思うわ。あいつ多分今頃悔しくて一人になりたいと思うから」

「どうしてそう思うの?」

「女の勘ってやつよ」

「クォンもフィリアっぽい事言うね」

「だって考えたって仕方がないし。あとは早く帰りましょ!」

 

 クォンはクロノの手を引っ張るようにして歩き進めるのであった。


                 ☆

 

「フィリア様ならすでにお戻りになっていますよ」

 

 学園の入り口で仕事をしていたモンクによるとどうやら、フィリアは無事に学園に戻っていたようだ。


 フィリアの場合だと予想も出来ない行動を取る可能性があるので無事に学園に戻っているかどうか心配だったが、無事に学園にいるようでよかった。


「その時の服装とかは普通だった?」

「はい。しっかりとシスター服を着ていましたが、何かあったのですか?」

「いえ何でもないわ。気にしないで」

 

 学園の中に入ると特に慌ただしい様子も見られないので、どうやら平常通りになっているようだった。その後しばらくしてクロノとクォンは部屋に向かう都合で別れることになる。


「上着ありがと。ここまで来れば水着でも問題ないわ」

 

 クォンはクロノから借りていた上着を返し、上着を受け取ったクロノはそのまま着ずに手に持った。


「フィリアが迷惑かけてごめんね。僕からもしっかり言っておくから」

「あ、でも……いや、クロノからしっかり言ってもらったほうが効きそうだからよろしく頼むわ」

 

 初めはフィリアの言動にご立腹だったが、勝負にも勝利したことによってその事はすでに気にならないほどになっていた。


「明日は今日みたいにならない様にするために、場所も考えておかないとならないわね」

「そうだね。また今日みたいになるのはよくないからよろしく」

 

 元々今日は使徒の力を出して戦ったがゆえにこのような一日を過ごすことになったのだ。だが、この時のクォンはこの一日を素直に楽しめたようで、その表情は明るかった。


「じゃあ僕はこっちだからまた明日ね」

「うん。また明日」

 

 別れるとクォンはクロノに背中を向けて廊下を歩き続けていたが、この学園に来て初めて水着で歩くこの廊下はなんだが不思議な感じがした。


 誰かに出会ってしまったらどうしようかと思ったが、結局誰とも会うことなく部屋に入ると、すぐにピュリファが駆け寄って来る。


「クォン大丈夫だった⁉」

 

 部屋の奥にある机の上には着ていた心配そうなピュリファの表情を見るにどうやら負担をかけてしまったようだ。


「平気よ。それよりもあの奥にあるのは私の服でしょ」

「うん。フィリアさんが持って来てくれて、迷惑をかけたから渡しておいてほしいって」

「そっか」

 

 面と向かって謝るのが一番であったが、こうした形でも謝ってきたのはそれなりに評価してもいいだろう。

 

 丁寧に畳まれ机に置かれた制服を持ち上げると、紙が入っていたのかそのまま床にポトリと落ちる。

 

 それを拾ってみると中は折りたたまれた手紙が入っていて広げようとすると、ピュリファが話かけてくる。


「それにしても、クォンはずっとその恰好で歩いていたの?」

 

 ピュリファは苦笑まじりに言う。


「さすがにそれだとヤバいから、クロノに上着を貸してもらっていたわ」

「それならよかった。クォンがそんなに可愛い水着を着ていたら知らない人に言い寄られていたかもしれないから」

「そんなやつが来たらあたしだけで吹っ飛ばしてみせるわ! あと、この水着やっぱり可愛い?」

「うん。水着も可愛いけどそれを着ているクォンはもっと可愛いよ!」

「そっか、えへへ」

 

 ここまで褒めてもらえるなら素直に喜んでしまう。

 

 思わず手紙のことを忘れそうになり、広げて書かれている内容に目を通す。


 なになに、今回は私の負けでした。正直負けるとは思っていなかったのでとても悔しいです。今度は絶対に負けません。


 どうやら、負けて本当に悔しいようだ。ざまぁみろって言ってやりたいわ。


 クォンは上機嫌で手紙を読み始めここまでの内容はフィリアの気持ちが伝わる内容だったが、問題は次からであった。


 また負けましたのでお詫びの品を用意させてもらいました。ぜひ着てみてください。あと田舎臭かったので着ていたものは捨てておきました。追伸 似合うとは微塵も思いませんが(笑)

 

 その驚愕の内容に慌てて制服の中を漁ると露出度の高い下着が中に入れられていた。


「なによこれ⁉」

「ク、クォン。どうしたの? それにそれ……」

 

 ピュリファはクォンが手に持つ下着を見て顔を真っ赤にしており、慌てて下着を隠す。


「ちがっ、これはあたしのじゃなくて! フィリアー! 覚えていなさいよ‼」




最後まで読んでいただきありがとうございます! 引き続きブックマーク、評価、感想をお待ちしております!

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