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突然の来訪者

「って言ってもやることないわねー」

「そうは言っても日が傾いてからじゃないと帰れないからね」

 

 まだ日は傾きそうにない位置にあり、特にやる事もない二人はぶらぶらと町の中を歩いていた。

 

 町に来るとちらほら人の姿が見られるが、この町はどうやらいわゆる人族の町らしい為すれ違う人はほとんど人族であった。

 

 ヴィゼン王国は他種族が集まった国家である。だが他種族が共存する国は他国でも見られることなのだが、戦争からそれ程時間が経っていないので、基本的に住む場所は元にいた地域となっているのだ。


「ここはあたしと似たような種族の村だからお店とかもそっちよりなのよねー。スラドンの故郷とかに行くと、逆にあたし達とは違うから始めはいろいろと戸惑ったものだわ。ほんと文化の違いっていうのは難しいものね」

 

 第二学園は他の学園よりも種族が多い学園であるので、その代表であるクォンの苦労は想像以上に多いのかもしれない。


「人族と言っても、獣人や鬼人。人族に近くても角族や羽族もいるし。あとは魔族とかいろいろいるよね」

「そうよ。あたし近くだけでもよりみどりよ。本当に言語の共通化魔法があって助かるわ。もしなかったら学園の会話も大変よ」

「確かに言葉もそうだけど他種族がいる学園のその代表であるクォンは大変だね」

「そうね。でも女の子が多い第一学園の使徒であるクロノもいろいろと大変じゃないの?」

「……そうだね。僕もクォンの事を言えないぐらい気を使うことが多いよ」

 

 女の子と接することは、村でもあったのでクロノは特に気にすることは無かったが、第一学園にいるのはクロノを除く全ての人物が女である第一学園はさすがのクロノも困ることは多々あった。


「でも、もし結婚とかする時になったら相手もいっぱいいるし、選びたい放題だから男としては最高の場所じゃない?」

「そうは言ってもそんなに手を出していたら失礼だよ。それに僕は充分恵まれているからこれ以上は求めないよ」

「謙虚ねー。でもそれがクロノらしいのかもしれないわ」

 

 二人で話しているとクロノの背後から何か柔らかい感触と甘い香りが襲って来て慌てて後ろを見るとそこには見慣れた赤髪のシスター服を着たフィリアが抱き着いていた。


「クロノちゃん、何しているの?」

「フィ、フィリア。急にどうしたの⁉」

「あたしも気づかなかったわ。話に集中していたせいかしら」


 クロノとクォンが並んで話している姿を見つけたようだ。そこでクロノを驚かすために限界まで気配を消してクロノの背後に襲い掛かったのだ。


「クロノちゃんとここで会えるとは思ってなかったけど、今日の特訓はどうしたの?」

「それが学園に迷惑がかかっちゃって途中で中断になったんだ。それで時間もあるからクォンと一緒に時間を潰していたんだよ」

「…へぇ、そうなんだ。それで手までつないでいたんだ」

 

 なんだ。背後からおぞましい程の殺気がする。それにさっきよりも絞めつけがキツくなったような気が……。


「マズいみゃ―。まさかここでフィリアさんが登場するとは思っていなかったみゃー」

「シュメルどうするっすかね?」

「クォンちゃんもあれじゃ居づらいだろうし、ここまでじゃない」

 

 離れたところで見ていた三人もフィリアが来たことで、任務を諦めようとしようとしていた。


「それじゃ、お相手も来たようだしあたしはここからは別行動にさせてもらうとするわ」

 

 さすがにここまで見せつけられてクロノと一緒にいるのは色々とすり減りそうだと思ったクォンはクロノの手を離してどこかに行こうとする。


「でも、まだ学園には戻れないけどいいの?」

「いいったらいいの」

 

 クロノに呼び止められ、クォンは足を止めるがその思いは変わらない。


「ああ言っているし放っておけばいいんじゃない。それよりもクロノちゃん一緒に水着を買いに行きましょうよ!」

 

 フィリアが指を指す方向には水着店の看板と思われるものがあった。


「水着ってお風呂の時に着るやつのこと?」

「それもそうだけど、ここでは海に入る時も着るらしくて、とっても可愛いのが多いの!」

「そうなの。でもあれって下着みたいだし、僕が付き合うのはちょっと抵抗があるような」

 

 クロノは自然にクォンの方を見てしまい、その視線に気づいたクォンは首を横に振る。


「残念でした。あたしには協力はできないわ」

「そ、そっか。なら仕方ないか」

 

 クロノは観念して一緒に水着を選びに行くことにする。


「慣れれば平気だし、あの田舎臭い女に聞いてもどうせ、大した助言なんて出来ないから意味ないわよ」

 

 そのフィリアの言葉に反応したクォンは言い寄る。


「ちょっと待って。今田舎臭いとか言わなかった?」

「ええそうよ。言ったわよ」

 

 フィリアは殺気を放つクォンに怯むことなく言い返す。


「あんた。ちょっと胸がデカいからって調子に乗ってんじゃないわよ。あたしだって可愛い水着持ってんだから」

「はいはい。どうせ、自分で選んだご自慢の水着ですね。良かったですね。それじゃ忙しいのでー」

 

 フィリアはクロノの手を取ってその水着屋に向かおうとすると、クォンがフィリアの肩を掴み、足を止める。


「あんた。いい加減しなさいよ」

「痛いんですけど、あと田舎臭さがつくのでやめてくれませんか?」

「あ? 殺すぞ?」

「は? やってみれば?」

 

 その言葉が引き金となってお互いに武器を解放しようとした時に二人の間にクロノが割って入る。


「二人共! 仲良く! それなら一緒に水着を見に行けばいいじゃない!」

 

 クロノはこれ以上二人が喧嘩しない様に慌てて仲裁する。


「へーそれなら、あたしが可愛いってことを教えてあげるわ」

「そうね。その哀れな姿を見せてくれるなら来なさいよ」

「ちょ、ちょっと二人共⁉」

 

 二人は無言でクロノの手を取って水着店へと向かうのであった。


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