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リフィア様ってどう?

 釣り堀を終えて今度はヴィゼン王国の中でもいろんな店が集まる場所に到着したころには時間はお昼になっていたので、クォンが決めた喫茶店に入り、クォンのおススメを聞きながらそのまま注文して用意された昼食を食べ終えたのであった。


「ここはたまに来るけど、お店の中も静かだし料理も飲み物も美味しいからあたしのおススメ出来る場所の一つね」

「確かに料理も美味しかったし、雰囲気もいいよね」

 

 照明も薄っすらと照らされる暖色を使っており、座っているだけで落ち着いてくるどころか眠くなってきてしまう。

 

 また食事を取り終えたことによりさらに眠気が襲ってくるので、眠気を覚ますためにクロノはクォンに話かける。


「時間はそれなりに経ったと思うけど、まだ帰ったらダメかな」

「あの言い方だと、帰るのは日が傾きかけたぐらいの方がいいわよ。それにせっかく外に出ていられるなら、こうして羽を伸ばすのも悪くないし」

 

 クォンは指を組んでからそのまま天井に向け肩を伸ばしている。


「そうだね。それなら次はどうしようか?」

「それよりもクロノちょっと聞きたいことがあるけどいい?」

 

 クォンもちょうど聞きたいことがあったようだ。


「いいよ。何でも聞いて」

「聞きたいのはリフィア様についてだけど、クロノはリフィア様のことはどう思っているの?」

「リフィアについてかー。うーんそう言われると難しいかな」

「やっぱり何かあったりしたの?」

 

 クォンが心配そうに見つめるのでクロノは首を横に振る。


「僕にとってリフィアはどういう存在なのかなって考えてみたら言葉にするのは難しいなって思ってさ」

 

 その答えにクォンは上手く理解が出来ず、首を傾げた。


「それってどういうこと? 普通に力を与えてくれた神様じゃないの?」

「もちろんそれも合っているけど、実はリフィアは僕が使徒になる前に会っていたんだ」

「え、クロノもそうなの⁉」

「その感じからすると、クォンもそうだったの?」

 

 クォンは小さく頷いてから、カップを手に取り口を潤してからその口を開いた。


「そうよ。あたしは使徒になる前にサリメナとそれなりに会っていたの。でもあいつ、いつも勧誘ばっかりでしつこかったから当時は本当に面倒だったわ」

「サリメナ様って会った事ないけどクォンの話を聞く限り、厄介そうな性格をしてそうだね」

「厄介そうじゃなくて厄介なのよ」

 

 クォン忌々しそうな声音からして、どうやらその言葉には嘘はないようだ。


「でも、そのサリメナ様のおかげで戦争も終わったし、第二学園も出来たんでしょ」

 

 クロノが読んだ書物によればヴィゼン王国になるきっかけを作ったのはサリメナであると書かれていた。


「あれも、あいつの描いた構想が思い通り上手く行った結果よ。そしてその思い通りにはあたしもピュリファも含まれているわ」

「それってどういうことなの?」

 

 サリメナの使徒であるクォンもそうだが、書物にも荒れた海を鎮めてピュリファを象徴にしたと書かれていたが、他にも何かあるのだろうか。


「鍵となる存在に問題が起きてしまった時に、サリメナがちょうど上手く現れて全てを片付けたのよ。おかげでサリメナは一部を除いてこの王国中にいる全ての国民に認められていると思うわ」

 

 今のクォンの話を聞いてクロノには疑問がいくつかあった。その疑問について問いかけようとすると先にクォンが別の質問をしてくる。


「それでリフィア様ってどうなのよ?」

「どうって?」

「だーかーら! 使徒になる前に会っていた時にはどうだったのって聞いているの!」

 

 クォンはグイっと体を前のめりにして問いかけてくる。


「え? それって言わなきゃダメ?」

 

 リフィアとの出会いについては忘れることは絶対にないと言いきれる程よく覚えているが、あの時の苦い思い出もついでに思い出してしまうので出来れば言いたくない。


「えー、言いたくないの。それとも何? あのフィリアっていう女が関係していてのろけ話になるから言いたくないっていうこと?」

 

 クォンは不満そうに口を尖らせて文句を言っていたことに、クロノも先ほどのクォンの話を聞いてしまった事もあったので、仕方なく言うことした。


「じゃあ、教えてあげるけど他の人には言わないでね」

「分かったわよ。それでどうなのよ」

「僕がリフィアに出会ったのは、とある事情で心身共にボロボロになった僕を心配して来てくれたんだ。それで僕が治るまでずっと支えてくれて、最後は僕が無茶をしたせいで、リフィアが力を与えてくれたおかげで全ての今があると思っているよ」

「だから、その恩返しも含めてこうしている訳ね」

「そういうことになるかな。まさか、村を出てきてこうなっちゃうとは思ってもいなかったけど与えられた役割だと思っているよ」

 

 クロノの表情には不満や恨みのようなものは一切感じられなかった。

 

 その表情を見てクォンはクロノの事を羨ましくも思えたが、自分の境遇を思い出せば、出すほどその気持ちは増すばかりであった。


「そっか。教えてくれてありがとね」

「うん。僕もクォンの事がまた知ることが出来てよかったよ」

「さて次に行こっか」


 店を出るとクォンはクロノの手を取って呟いた。


「結構あたし達って似ているのかもしれないわね」

「えーそうかな」

「こら。そこは、同調しておきなさいよ」

 

 クォンは肘で軽くクロノの脇腹を小突くのであった。


最後まで読んでいただきありがとうございます! 引き続きブックマーク、評価、感想をお待ちしております!

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