使徒模擬戦開始
「どこからでもかかって来なさい」
クォンはクロノに余裕を見せながら出方を伺っているようなので、クロノもすぐには動かずに見ていていたが、どうやら本当に待っているので、探りも含めてそれなりに強めの攻撃をする為に、構えを取ろうとすると、足元に銃弾が撃ち込まれる。
「かかって来いって言ったくせに撃ってくるのかよ!」
「そりゃそうよ。ていうか、構え取ったら試合開始でしょ!」
すかさずクォンは二撃目を撃ってきたので、たまらずクロノは回避する。
今回の模擬戦で使用した魔法は防御魔法と、威力を測定できる魔法で、威力に対して魔法を使わなければ、どれだけ体に影響があったか分かる魔法とそれに対する負荷の魔法などが複合してかけられている。
またクォンが持つ銃による攻撃はモンスターが放つ遠距離から攻撃とは違い、銃による攻撃は溜めがないので、攻撃の瞬間を読むことが出来ないのでクロノはすぐに跳躍しながらクォンから距離をとった。
「逃げても無駄よ」
無数の銃弾が撃ち込まれ、クロノは回避しきれないと判断し、剣を握る手に力を込めて振り続けた。
「ハアアアアアアアアアアアッ‼」
剣に当たり跳弾する銃弾と共に、狙いとは逸れた誘導弾には、一切目をくれずに弾丸を叩き落とし続けた。
「うっそ。さすが、数々の戦いをくぐり抜けただけあるな~」
クォンの予想では対抗されるとは思っていたがここまで耐えられるとは思っていなかったので、その口元を少しだけ緩めてしまった。
想定では今頃狙いたい箇所に数弾は被弾させていたが、どうやら被弾はほとんどないようだ。
しかも被弾した箇所はほとんど狙いたいところではなく全て急所は外されていた。
「撃ってこないってことは弾切れかな。それなら」
クロノは弾切れだとは全く思っていなかったが、自身が持っている武器が剣である以上近づいて相手を斬らなければならない。
誘われているのを承知の上で、目指すはクォンの下のみ。
足に力を込め飛ぶように地面を蹴る。
「ハアアアアアアアアアアアッ‼」
コクウを振り上げクォン目がけて振り下ろす。
「ちっ!」
銃では対処できないと判断したクォンは舞うように跳躍しながらクロノから距離を取ろうとするが、速さで勝るクロノはすぐにクォンとの距離を詰めて斬りかかる。
帯の上からであるが、剣を振り下ろし、更に続くようにして振るい続け手元に伝わる感触からとらえた確信した。
「どうだいクォン。この勝負僕の勝ちじゃないかな」
あれだけ斬れば勝負はついたはずだ。だが、その思考を吹き飛ばすように一発の弾丸がクロノの頬をかすめた。
「ふっふ~ん。余裕の表情とはいただけないわね。それはあたしがするものよ」
銃口を向けたクォンが不敵な笑みを浮かべてクロノを見るが、問題はあれほど手ごたえのあった攻撃だったのにも関わらず、無傷であったことだ。
「おかしいな。手ごたえも充分だったし、確かな感触もあったけど、クォンが傷を負っていないとなると理由はその帯か」
「正解。よく出来ました。この惑わしの帯はあたしとの距離を掴みににくくする大事な防具よ」
クォンが腰に巻いている足元に届きそうなぐらい長い帯には光を反射する装飾がされていて反射すると目がチカチカして距離が掴みづらくなるのだ。
「それじゃ、ご褒美よ!」
またしても銃弾を撃ち込まれ、必死に対処するクロノだが、なぜだがこの戦いに楽しさに近いものを感じている。
アルチベータとの戦い以来の本気に近いこの戦いに今までと違う何かが身体中を巡っており今もそれは加速をし続けている。
そして今分かることはこの戦いが僕を熱くさせる。
その中で勝利を見出すには集中に集中を重ね放たれる弾丸を予測し、クォンに近づく。それが今の必勝法。その勝利へと一歩踏み出そうとしたその時。
「やめるみゃああああああああ‼」
がっしゃゃぁぁああああん! と音を大きくたてながら扉を勢いよく開いたシュメルが更に怒りの大声を張り上げて特訓場内に響き渡り、そのシュメルの声に二人は動きを止めた。
「シュメル急にどうしたの?」
「どうしたもこうしたもないみゃ! 使徒が二人で戦い合ったら闘技場どころか学園がぶっ壊れるみゃー‼」
どうやら二人が感情に任せて戦ってしまったことにより、その力の余波で学園中は警報が鳴りまくり警戒状態になってしまっていたのだ。
「とにかく学園が落ち着くまでちょっと二人共外にでてくるみゃ!」
『えー』
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