一日の出来事
「ただいまーって誰もいないか」
鍵を開けて部屋へ入るが、この部屋は僕にだけ用意してくれた部屋なので、誰もいないのだが、いつも癖なのか、自然と挨拶してしまう。
でもたまにリフィアがいたりもするから、意外と意味のある行為なのかもしれない。
誰もいないと思っている部屋の奥へと入っていくと、奥の方から物音がしたので、やっぱりリフィアがいるのかと思いながら扉を開けると、ベッドの上で足をプラプラさせながら寝ころびながら本を読んでいるフィリアがいた。
「クロノちゃん。おかえりー」
「ただいま。というか、なんでフィリアがここにいるの?」
クロノが覚えている限りだと、朝に一緒に食事をしてから自室に戻ったはずだが。
「それなら、もう一つのこの部屋の鍵をもっているからよ」
フィリアはシスター服の中から鍵を取り出して、チャリチャリと音を立てながらクロノに見せつけてからすぐにまた元の位置に戻してしまった。
「部屋には戻らなくていいの?」
「うん。まぁ、本当ならあっちにいてもいいんだけど、今のセラとイフルと一緒にいたらこっちまで嫌な気分になっちゃいそうだから、クロノちゃんさえよければ、ここにいさせてもらいたいけど……ダメかな?」
「いいけど、あとで二人にも伝えておくんだよ」
「はーい。分かっているって」
フィリアの甘えるような仕草と可愛い声音によるおねだりに屈したわけではないが、学園に来た時からからフィリアは僕の部屋にいるので、正直どちらでもよかった。
結果フィリアはこの部屋にいるようなので、クロノは荷物をおいてから椅子をベッドの近くにある椅子に座ってフィリアに話かける。
「フィリアは今日何をしていたの?」
「今日は暇だったから、外に出て海をずっと眺めていたわ。あとはちょうど来たピュリファとお話をしたぐらいね」
「へー。ピュリファも海を見に来ていたんだ」
まさかピュリファの名前が出てきたので、少しだけ驚いた。
「そうなの。あの子も暇だったらしくすることも無いし、誰も構ってくれないから来たらしいわ」
ピュリファと親しいクォンはクロノと行動してしまったのと、シュメル達はどこかに行ってしまったクォンを探していたので、結果ピュリファは暇になってしまったのだ。
「それでなにかピュリファと話した?」
「うーん。あんまり覚えていないけど、たしか世間話的な感じだった気がするわ」
「念のために聞くけど、クォンの使徒に関することは言っていないよね。ピュリファもその事は知っているけど、フィリアは知らないはずだから」
「もちろん言っていないわ。でも、少しだけクォンっていう女の事については喋ったと思うわ」
「へー。そうなんだ。やっぱりクォンの話題になったのか。でもあのことさえ言っていなければ問題ないか」
クォンが使徒を辞めることに関係すること以外であれば、揉め事にならなければ、話をしても特に問題はないだろう。
「そういうクロノちゃんはあの女と何をしていたの?」
「それはもちろん特訓だよ。クォンは強いから、今日も徹底的に鍛え上げられたよ」
そのせいで身体は今日もボロボロだ。
「ちなみだけどその特訓ってあの女は見ているだけなの?」
「見ている時もあるけど、その時は声をかけてくれるし、一緒になってする時はしっかりアドバイスをしてくれたりするんだ」
「そうなんだ。随分と献身的にしてくれているのね」
フィリアのその言葉にクロノは少しだけ焦りを感じた。
この言い方は嫉妬をしているか、ふてくされる前兆な気がしてクロノはすぐにフィリアの機嫌を取る為に言葉を急いで繕った。
「いやでも、クォンは同じ使徒だからまだ使徒になって間もない僕の事を気遣ってくれているだけだから特に他に他意はないというか……」
まずい。僕の語彙力がないために上手く言えていない気がする。
恐る恐るフィリアの方を見るとフィリアはそれほど気にしている様子はなかった。
「まぁ、そうでしょうね。私もそんな気がしていたから予想通りって言ったところかしら」
どうやら、フィリアの機嫌は損ねていないようなので、クロノは安堵すると、急にお腹が空いてきたので、夕食前だが小腹が空いたので軽くお腹を満たせるものを取り行くために立ち上がる。
「でも、その同じ使徒だからということがあの女にとって重要なのかもしれないわね」
「え? 何か言った?」
立ち上がった時と同時にフィリアが小さく何かを呟いたので、上手く聞き取ることができなかった。
「ううん。なんでもない。それより私の分も一緒に用意しておいてね!」
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