サリメナのお願い
「それでわらわを呼んでどうしたのじゃサリメナよ?」
「リフィアしゃんにも、聞いてもらおうとおもってね~」
千紫万紅の花が咲き誇るリフィアが住まう場所であるエリシュオンで、幼い姿の二人は椅子に座ってその足をプラプラさせながら話し合いをしていた。
「おぬしが急に来たからには何かあったと思うのじゃが、なにがあったのじゃ?」
「うん。そうだよ~。この話はリフィアしゃんに、許可をもらわないといけないと思っていたから~」
サリメナの口調は基本スローペースなので、会話のリズムがとりづらいのでリフィアは早めに会話を終わらせたいと考えていた。
「それなら早く用件を言うのじゃ」
「じゃ率直に言うね~。そっちのクロノしゃんを貸してもらってクォンちゃんに種付けさせて~」
「ごっは! お、おぬし! 何を言っているのか分かっておるのか⁉」
「わかっているよ~。それでサーしゃんが、思いついたのが題して種付け作戦~。使徒の人材に適した人材を手にするには時間がかかるから子供を作ってもらうのが手っ取り早いと思ってね~。それで現状使徒同士の二人の子供であれば、間違いなく使徒としての素質があると思うの~」
率直なサリメナの意見と作戦名にリフィアは口元をヒクつかせた。
「今のおぬしが話した内容からして色々と言いたいところじゃが、それよりもまず、その要望はクロノが承諾するとは思えないのじゃ」
クロノには最愛と言っても問題ないフィリアがいるし、フィリアもクロノの事を好いていることからそう簡単には、クロノを送り出すことはしないだろう。
それに、もし無理やりでも行おうとするならば、その際には血なまぐさい争いも考えられる。
「わかっているよ~。だから、リフィアしゃんに、クロノしゃんの性癖を教えてもらいたいんだぁ~」
「なにを悠長に話しておるか⁉ そんなの知らぬのじゃ!」
「え~。もしかしたら、のじゃロリ神様が好きかもよぉ~。あ、でもそれだとクォンちゃんにはできないか~」
「あるわけないじゃろう!」
即答で否定してしまったが、それはそれで寂しさを感じてしまう。
正直言えば、あってもいいじゃけど。やっぱりクロノとはそういう関係はマズいだろう。
でももしクロノが望むのであれば……っていやいや、絶対にダメじゃろ!
血祭りにわらわは参加したくない。それに第一フィーちゃんとは争いはしたくない。
「しかし、急になぜそんな提案をしてくるのじゃ」
「それはね~。サーしゃんの使徒であるクォンしゃんが、使徒を辞めたいってしつこく言ってくるから、辞める条件を伝えようと思ってね~。本当に面倒だったけど考えてあげたんだよ」
サリメナは夜色の瞳を怪しく輝かせて、話すその姿は不気味であった。
しかし、サリメナと付き合いの長いリフィアはサリメナの事をよく知っているので、これぐらいの態度で動じることはない。
むしろ、サリメナの使徒であるクォンの事を気にかけることができるぐらい余裕が残っていた。
「別に使徒など無理に用意せんでもいいじゃろ」
リフィアが過去に使徒にした人間は数えられる程しかいない。
それにはとある理由があったが、その理由とクォンの考えはそう遠くないものである。
だからこそ、いくら強大な力を持つ使徒を所持することに対して固執はしていない。
だが、リフィアと異なる事情を抱えているサリメナはそうはいかないのだ。
「え~。やだよ~」
サリメナは目を細めて嫌そうに唇を尖らせる。
「じゃが、使徒の負担が大きいのは事実じゃろ。だからこそ無理強いは出来ぬはずじゃ」
「それはリフィアしゃんの能力が必ず使徒の存在を必要としないからでしょ~。サーしゃんの能力は『共存』だからどうしても軸となる使徒は必要なの~!。それなのにクォンしゃんは辞めたいとか言うし、困っちゃうよ」
リフィアとは真逆にサリメナは能力の関係上必ず軸となる使徒が必要となる。
また、その軸を選ぶことが楽ではないことは過去に行っている選定の過程で何度も失敗をしているサリメナ自身も感じていた為、なんとしとも使徒の力を手元においておきたいのだ。
「知らんのじゃ。それにおぬしの能力に関しても別にAクラスのシスターを使った複数軸にすればいいことじゃろ」
「え~。それでも使徒の方がいいし、数が減ったら困るし~」
「この話はもう終りにするぞ。あと言っておくがクロノを鍛えてもらう件については感謝しておるが、あまりこちらに迷惑をかけてもらうのは困るのじゃ。それじゃあな」
リフィアはこれ以上の会話は不要と判断し、サリメナの前から消え去った。
「まったくも~。リフィアしゃんは能力のせいで重要性が分かっていないな~。使徒は必ず必要。それはあのアークベルトだって同じなのに~。仕方がない。こうなったらサーしゃんが直接動くとするか。あ、そういえば結局性癖のことを聞くのを忘れてた~。仕方がない~あの子達に聞いてもらお~」
リフィアの協力を得られなかったサリメナは作戦成功を確実にするために行動に出るのであった。
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