お互いの悩み
「シュメル。ちょっといいかしら」
「ピュリファ様どうしたのですかみゃ」
寝不足によりあくびが出そうなのをこらえながら歩いていたシュメルは、ピュリファに呼び止められたのでみゃみゃとピュリファの下へと近づく。
「ちょっと暇なのと話を聞いてもらいたいので相手をしてもらえると嬉しいのですがいまは平気でしょうか?」
どうやら気を使ってくれているようだが、今日はそれほど仕事がないので、話をすることぐらいは寝不足であっても余裕でできるのだ。
「平気ですみゃ。そうしたら、そちらの部屋でお話しましょうみゃ」
シュメルは空き部屋にピュリファを先に案内してから、周辺を見わたして一人のシスターを見つけると、お茶とお菓子を用意するように頼んでから部屋へ入った。
「ごめんなさい。シュメルはいつも忙しいのに」
「そんなに気にしなくていいですみゃ。ちょうどみゃーも休もうとしていたところみゃ」
「それならよかった。それで早速聞いてほしいのだけど」
「そんなに急いで話すとみゃるとクォンちゃんのことですかみゃ?」
シュメルの言葉にぴくんと体を揺らしたピュリファを見て、少しだけシュメルは口元を緩めた。
「なんでわかったのですか?」
「それは、ただの勘ですみゃ」
シュメルは勘と言っていたが、ここ最近の出来事から推測できるとしたらピュリファと同室であるクォンの事である可能性は高く予想しやすいことがわかっていた。
普段から時間のある時は今日のようにピュリファの愚痴を聞いてあげているシュメルは、いつもと同じクォンのキュートな迷惑行為を言われると思っていた為、少しだけ楽しみにしていたのだ。また、その話の内容が愚痴であったとしてもクォンが大好きなシュメルにとっては微笑ましい話なのである。
「それで聞いてほしいことがあって、昨日の夜クォンがクロノ様を連れて来たのだけど、クォンたら使徒を辞めるってクロノ様に言ってしまったの」
ピュリファの話を聞いてその情報の多さと、内容にシュメルは目を見開いて驚くと同時に頭が痛くなり、自然と耳に手をあてる。
え? クォンちゃんが自室にクロノ様を連れて来たみゃ⁉
それに使徒も辞めるって伝えてしまったのみゃ⁉
まさか、クォンちゃんからそのような行動をするなんて、みゃー以外の他の者達も予想が出来るはずもみゃい。しかもクォンちゃんは自ら行動してクロノ様に会っていたのとは驚きみゃ。
あ、焦るなシュメル。もしかしたら、もしかするかもしれないけど、ここはまず詳細を聞かなくては。
この時まだ僅かばかりに冷静さが残っていたシュメルは、慎重に言葉を選んでピュリファに問いかけた。
「そ、それはどういう成り行きで言ってしまったのですかみゃ」
「そのことだけど、部屋に連れて来たときからクォンが上機嫌だったし、それにクォンが飲んでいるお酒を勧めて飲ませてたことから始まったの」
「な⁉ クォンちゃんの好きなあのお酒をみゃか⁉ ……クロノ様はズルいみゃ。みゃーも滅多に飲ませてもらえないのに」
クォンと酒を飲むことがあるシュメルだが、そのお酒はあまりもらえたことがなかったので、シュメルは恨めしそうにクロノの名を言った。
「それでね。クロノ様の使徒になった経緯を聞かせてもらってから、クォンも話せる範囲ではなしたのだけど、その最後に辞めるって伝えてしまったの。私もまさかクォンが言うとは思っていなかったけど、言ってしまったの」
「みゃ~。このままだとまずいみゃ~」
「そうよね。クォンは大事な使徒だというのに役目を辞めてしまうとなると困る人達も大勢出てしまうでしょうから」
「それもそうなのみゃ~。ですが、このままだとう~ん」
この時シュメルにはピュリファとは違う悩みがあり、それは昨日の夜に唐突に言われたことであった。
しかも、確か今はクロノ様とクォンちゃんは特訓をしていることを思い出して体が反射的に動きそうになったが、今の役目を思い出しなんとか駆け出してしまいそうな気持を抑えた。
「シュメル。やっぱりクォンは使徒を辞めてしまうのかしら」
「クォンちゃんはその気で言っていみゃすけど、実際、辞めるとなるその代役が必要となりみゃすし現実的ではないみゃ」
「そうよね。はぁ~。クォンもクロノ様みたいに真面目だったらなぁ」
ピュリファは同じ使徒であるクロノとクォンを比べて、現状は使徒になった時間の差によってクォンの方が使徒の力に慣れているが、向上心と責任感においては、クロノの方が上だとピュリファは思っていた。
「そうですみゃ。でもその同じ使徒であるからこそ、ややこしい問題が発生しているのみゃ」
シュメルは恐らく自分しかしらない事情と、クォンの状況をクロノが知ってしまっていることに唸りながら悩んだ。
クォンが使徒を辞めたいと言っていたことは以前から知っていたが、まさかその想いをクロノに伝えていることは想定外であった。
もともとクロノが第二に来ることだって、突然言われたことであったのに、こうもいろいろと進展されてしまって新たな問題が出てしまうと、他にも多くの案件を抱えているシュメルには追いついて行くことが困難となっていく。
また、その問題はある意味順調に解決できそうな流れに進んでいることが腹立たしい。
いろいろな出来事によって自然と緊張していたのかシュメルは喉の渇きを感じたので、ここに来る前に頼んでいたお茶の事を思い出す。
「それしてもお茶がくるのがおそいみゃ。ちょっと見てきますみゃ」
シュメルが部屋を出て見に行こうとしたその時扉が開かれ、大人しそうなシスターと目が合った。
「あ。あの、遅れて申し訳ございません。お茶とお菓子をお持ちいたしました」
シスターの手には用意されたものが乗せられているワゴンがあった。
「ちょうど今聞きに行こうと思っていたところみゃ。持ってきてくれてありがとうみゃ」
「では、運ばせていただきますね」
シュメルはシスターを部屋に案内させ、お茶とお菓子を運ばせた。
「どうぞ。ピュリファ様」
「ありがとう。今日のお茶はどういうのなの?」
「えっ? ええっと。今日のお茶はリラックスできる香りとなっています」
「それはいまのみゃーには助かるみゃ。ありがとうみゃ」
「で、では、運び終えたので失礼します」
シスターはわたわたとしながら頭を下げて部屋を出て行く。
「さて、お茶も届いたことみゃし、ちょっと休憩をしてから、話を続けましょうかみゃ」
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