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おやすみからおはようまで


 次に目を覚ました時は、目の前には寝床の天上があった。

 

 外は明るくなっており、隣にはフィリアはいない。


 あれからどれぐらい寝ていたのだろう。そして昨日の夜はフィリアに救われた。もしあのままだったら眠るどころか何をしていたか分からない。

 

 クロノがテントの外に出るとちょうどどこかに行っていたフィリアが戻って来た。


「あら、クロノちゃん起きたの?」

「おはよう。フィリアはどこへ行っていたの?」

「うん。おはよう。私は温泉に行っていたわ」

 

 どうやらフィリアは温泉が気にいったようだ。

 

 紹介した側からすると嬉しいことである。


「そうしたら僕も朝食を食べたら行ってこようかな」

「うん。それがいいよ。それに温泉に入ると気持ちが落ち着くわ」

「それじゃ、今から朝食をつくるので少し待っていてね」

「はーい。じゃあ、私はあっちで待っているわ」

 

 クロノは食料袋から卵を二つ取り出して、火を通しながら炒める。

 

 そして調理中の火を見て、夜の出来事を思い出す。

 

 火竜の恐ろしさを目の当たりしたクロノは、恐怖で震え上がった。

 

 その恐怖でどうしようもなくなったクロノはフィリアに救われたのだが、クロノはその事を思いだして今はかなり恥ずかしくなっていた。


 確かに言ったことを変えるつもりはないけど、かなり乱れていたのは間違いない。


 だが、してしまった事はなくすことは出来ないので諦めて朝食作りに集中した。

 

 そして出来上がった朝食を運ぶとそれに気づいたフィリアが近づいて皿を一つ取る。


「これ持つね」

「ありがとう」

 

 クロノは料理が乗った皿を渡して平たい石の上に座り、


「「いただきます」」

 

 二人は出来上がった朝食をとる。

 

 今日も味付けは完璧であると自分の料理を褒めてからフィリアの方を見るとフィリアも、もくもくと食べているようなのできっと上手く出来ているのだろう。


「クロノちゃん、気持ちはもう平気?」

「夜は一人で乱れてしまってすいませんでした」 

「気にすることは無いわよ。普通、火竜は怖いからクロノちゃんは普通通りに反応しただけだよ。それに漏らしていないだけ、偉いと思うわよ」

「漏らしてなんかいませんよ!」

「えっ? そうしたらあの時に感じた手の湿り気は何だったのかしら?」

「そこまで怯えていませんよ!」

「でもクロノちゃんが寝た後に感じたのは……」

「まさか、確認する為に変なこととかしてないですよね」

「変とは?」


 ニヤリしながらと聞くフィリアに対してクロノは、


「もういいですからやめてください! 今は食事中ですよ」

「ごめん、ごめん。冗談を言いすぎたわ。それに火竜は私が倒すから安心してね」

 

 今日もフィリアは僕をからかって楽しんでいる。

 

 いつも、フィリアは僕をからかう時は楽しそうにしている。

 

 からかわれる側としてはあまり面白くないが、フィリアが楽しそうならいいとする。それにもし、本当にもしフィリアをからかえる日があるのなら思いっきりからかってみたいものである。それは、僕の密かな野望なのかもしれない。


「本当に頼りにしていますからお願いしますよ」

「任せて頂戴。シスターの私が強いってところを見せてあげるわ」

 

 本来シスターは戦闘以外で頼りになるはずだとクロノは思ったのだが、この時は言うのを止めておいた。

 

 その後、食事を終えてから各自支度を整え、一緒に火竜を探しに山道を歩き回った。

 

 拠点も一度は解体して一緒に持ってきているのだが、あの場所は二人共気にいっているので、高確率でまた戻るだろう。

 

 そして今は、昨日火竜(かりゅう)が火球を放った場所に向かっている。

 

 もしかしたら火竜が獲物を狙って放って捕食した後に、そこで寝ているかもしれないという事で、向かっているのである。

 

 途中、小型のモンスターに遭遇した時は、クロノが基本倒すか追い払って歩き進み、ようやく目的の場所にたどり着く。


「ここかな」

 

 到着した場所は、ごつごつした岩場の場所であった。


 その一か所に、黒焦げた箇所があり岩場がえぐれるように損傷していることから、火竜の一撃は相当な威力だったことが伝わった。


「これは、相当強い火竜かしらね。メイオールも難易度が高い依頼をしてきたものね」

 

 残念ながら火竜はその場におらず手掛かりもなかった。

 

 結局、手探りで探すことになり、二人で岩場の道を歩き進んでいた時だった。クロノの目はとあるものをとらえ立ち止まる。


「これは⁉」

「どうしたの。クロノちゃん?」

「フィリア、ここに珍しい魔石が埋まっているよ!」

 

 さすが山岳地帯。この場所に来た時に少し期待していたけど、本当に見つかるなんて本当に運がいい。だが、フィリアの反応は対照的であった。


「……だから?」

「だからってそんなことを言わないで! ねぇフィリア少し休憩しないかい?」

「クロノちゃん。休憩ならさっき取ったばかりじゃない。それに早く探さないと日がくれてしまうわ」

 

 フィリアの言う通りこの場所に来る前に、もしも火竜がいたら戦闘になるという事で、たっぷりと休息をとってあったのだ。

 

 その為、二人共疲れなどは全くない。


「そうだよね。今回はフィリアの友達の為に、この場所に来たからね」

 

 クロノはそう言って歩き出す。しかし、その姿は明らかに先ほどよりも元気がなく、しょんぼりしているように見える。

 

 それを見かねたフィリアは、一つ小さく息を吐くと、


「クロノちゃん休憩しましょうか」

「でもさっき休憩したばかりだって言ったのは、フィリアじゃないか」

「いいから、私は疲れたって言ったら疲れたの、だから休憩よ」

 

 そう言うと、フィリアは適当な岩に座り込む。

 

 突然の休息宣言をしたフィリアを察し、


「フィリアありがとう!」

 

 クロノは急いで採掘道具を取り出して魔石採掘を開始する。


「クロノちゃんたら、楽しそうにしちゃって……。まぁ急いだって仕方のない事だしゆっくりしてもいいかしら」

 

 フィリアは岩に寝ころび、クロノの採掘音を聞きながら空を見上げていた。

 

 それからしばらくして、続いていた採掘音が止み、クロノの方を見るとそこには、クロノが目を輝かせながら魔石を手に持っていた。


「フィリア! 見てよ、これすごくいい魔石だよ!」

 

 はしゃぎながら、魔石を見せつけてくるクロノから魔石を受け取り、近づけて見てみると、この間見せてもらった魔石より良い物なのがフィリアにも分かった。

 

 外の外殻も充分だが、中央部分の漆黒具合がさらに深かった。


「フィリアのおかげでこんなにいい魔石が採掘出来たよ! 本当にありがとう!」

 

 喜びながらお礼を言うクロノを見て悪い気はしなかったが、時間は元居た場所に戻るなら戻らなくてはならない時間となっていた。


「今日はもうここまでね。戻りましょうか」

 

 結局、火竜は見つけることが出来ず、今は朝にいた場所にまたクロノは拠点を作り、その間にフィリアは余程気にいったのかまた温泉のところに行っていた。

 

 そして二日目は、これといった収穫はなかった。

 

 クロノはこの時なるべく早く終わらせてフィリアの友達に合わせてあげたい気持ちはあるけど、手探り状態の状況だとどうなるかは予想がついていた。


 そしてフィリアもその事に気づいていたが、それでも口に出すことはなかった。

 

 またあの夜クロノが火竜を見たので、この山岳地帯にいるということが分かっているだけありがたい情報だったのかもしれないと二人は思っていた。

 

 そうこう考えているうちにまた作り直している拠点が完成すると同時にフィリアが温泉から戻って来たので、見張りを変わってもらってクロノも温泉に入りにいった。

 

 温泉の効能は疲労回復にとても役に立っている。

 

 昨日もあれだけ歩き回ったのにほとんど疲れが残らなかった。

 

 そして体を温め終え、その後フィリアと明日の予定を話し終え二人共眠りについた。

 

 フィリアは今日もすぐに眠ってしまっているが、この日クロノはなかなか眠ることが出来なかった。

 

 フィリアは寝袋があまり気に入らないようで初めから固定部分を外して寝てしまっており、クロノはあの日から荷物を並べ、壁を作ってあるがどれだけ持つかは分からなかった。

 

 しかし今はそれよりも寝られないので、星でも眺めていようかなと思い、クロノは寝床の外に出る。

 

 外に出ると今日も星空がとても綺麗であった。

 

 今日はさらに雲がほとんどないのでほとんど周りが見られた。

 

 クロノはしばらく間、何も考えず夜空を見ながらふけっていると、またあの大きな影が現れ、大きな翼を羽ばたかせながら飛び回る火竜が現れたが、クロノは火竜を見つけてからずっと目から離さなかった。

 

 初めに見た時は恐ろしくてならなかった存在だが、今日は体も震えない。

 

 また自由に飛び回る火竜は今日も何かを見つけたのか、急降下して地上に降りて行く。

 

 そして少しすると何かを捕まえ、暴風を起こしながら上昇するように飛び上がり、火竜はその後、一直線に洞窟の中へと入っていった。

 

 またクロノは火竜が入っていったその洞窟を見逃さないでいた。あそこに火竜の巣があることを確認し、クロノは火竜に向かって叫ぶ。


「待っていろよ火竜! 絶対に討伐してやるからな!」

 

 フィリアとその友達の為にも負ける事は出来ないと心に誓うクロノであった。


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