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地獄の特訓

「はい。もう一周頑張れー。最後の力を振り絞るのよー!」

「はぁ。ぜぃ。なんで、こんなことを……」

 

 クロノは広い特訓場の外周を何周も走らされ、今は息が切れそうになりながら、走り続けており、ようやく最後の一周となったのだ。

 

 よたよたの足でゴールすると同時に、地面にばたりと倒れているとクォンが上から覗き込むように見て僕の頬にひんやりと冷たいボトルをあてる。


「はい。お疲れ様。それ飲んで休んだら次いくわよ」

「……はい」

 

 差し出されたボトルを手に取り中身を口に注ぐと、渇いた口内が潤うのと同時に熱くなった体に爽快感が広がった。

 

 特訓場に連れてこられたクロノは早速使徒の力を解放してクォンと特訓を開始しようとしたが、一向に力を解放しないクォンに問いかけたら、まずは基礎を鍛えると言われて先ほどのように基礎を測られているのだ。

 

 最近はずっと使徒の力を使いこなすために常に解放しながら特訓をしていたが、力を使わずにこうして今ある体力を使って体を動かすとなると思った以上に体が動かない。


「さて、お次は剣を振るうにも必要な腕の力ね。はい、準備する」

 

 休む暇なく、クォンの指示通り腕立て伏せを開始すると同時に、背中に何か柔らかいものが乗せられたと思い、視線を背中の方へと向けると、僕の背中にクォンが乗っていた。


「なに休んでいるのよ。早く始めなさい」

「あの、おも……って痛っ! 痛いよ! 頭を叩かないで」

「重いわけ無いでしょう! その痛みはあたしを愚弄したバツよ」

「なんて理不尽……」

「あ? なんか言った?」

「なんでもありません」

 

 結局クォンを背中に乗せたまま腕立てを開始するのだが、腕を曲げるたびに筋肉が震えていたが、それでも止めることなく特訓を続ける。

 

 開始してからそれなりの回数に達したころに、蓄積した疲労により動きが鈍くなってきてペースが落ちてきているのを感じ取られたのか、クォンが優しい声で話けてくる。


「辛かったらいつでもやめていいからね」

 

 その言葉に、クロノは一瞬気が緩んだ。


「ならお言葉に甘えて……」

「その代わりに次の特訓を倍にするから」

 

 クロノはギリッと歯を食いしばって腕立て伏せを継続した。


 悪魔だ。悪魔がいる。しかしこの事を口に出せば、何を言いだすのか分からないので、奥歯を噛み合わせて決して口が開かないようにした。

 

 クロノの上に乗っているクォンも口元を緩ませてある意味楽しんでいたが、クロノの邪魔をしない様に、絶妙なバランスを取っており上手くクロノに負荷をかけているという鍛えられた体幹が成せる技をしていた。

 

 そして苦しみながらもクロノは最後の一回に辿り着き、その一回に残った全ての力を注ぐ。


「ほら、最後よ! 頑張りなさい!」

「フォオオオオオオオオオオ!」

 

 プルプルと震える腕を曲げ終え、最後の咆哮を上げながら腕を伸ばし終えると、荒い息をしながらも、ここまでやり終えたことで身体中に達成感が満ちていた。


「ちゃんとやりきるなんてすごいじゃない」

「な、なんとかね。でもこれ以上はさすがに出来ない気がするよ」

 

 このまま伏している訳にもいかないので、何とか体を起こして立とうとするが、足も腕も笑っているかと思える程力が入らない。


「うん。ここからさらに特訓したら怪我をしてしまうかもしれないから、鍛えることはしないよ」

 

 クォンはそう言って、足を開いて座っているクロノのひたひたになっている背中にその柔らかな胸をあてながら後ろから顔を近づける。


「ちょ、ちょっとクォン……その僕。今汗をかいているし、そ、それに胸も当たっているような」

 

 クロノの背中には確実に柔らかいものが二つ当てられている感触があった。また女の子らしい甘い香りも合わさってその感触はフィリアと少し異なるが充分心地のいいものであったので、クロノは離れたくなる誘惑を振り払えずにいた。


「これは頑張ったクロノへのご褒美よ。それにしてもクロノったら顔を赤くして可愛いなぁ。」

 

 クォンが耳元で話すため、耳に吐息があたってさらに感情が高ぶるのと、特訓の後ということもあってクォンの行為にクラクラしてしまう。


「クォン。嬉しいけど、そろそろ離れてくれないかな」

 

 さすがにこのままだとどうにかなってしまいそうであり、またこの状況を誰かに見られてそれがフィリアにでも知られたら、今度会った時には白剣で斬られるかもしれない。


「ふふっ。だーめ。だってこれからが本番だもんっ!」

 

 クロノはクォンの甘い声がその耳に囁かれると同時に行われた悪魔のような行動に叫びだす。


「ぎぃやあああああああああああああああああああああッッ‼」 

 

 クォンは背中に胸を当てたまま体を倒すと、そのままクロノの上半身を倒し、その際にクロノが逃げないようにする為に両手で瞬時にクロノの足を抑え、地獄の柔軟体操を開始した。


 そのクォンの行為により先ほどまで感じていたおっぱいの感触よりも、強烈な張り裂けそうな痛みが身体中を駆け巡っており、思わず出した地竜の咆哮を彷彿させるようなクロノの叫びが特訓場内に響き渡る。


「体が硬いわね。これではダメよ」

「あああああああああああああああああああああああああああッッ‼ 裂けるッ、裂けちゃうよ! お願いだからもっと優しくして! そうじゃないと壊れちゃう!」

「だーめ。これもクロノの為なのよ。だから頑張りなさい」

「いやあああああああああああああ‼」

 

 その後も続く柔軟体操により悲鳴を上げ続けたクロノは、度重なる柔軟を終えてクォンに解放されたときには潰れたスライムのように横たわっていた。


「ふー、これでよしっと。じゃあこれで特訓を終わるからあとは自分で調整しておきなさいね」

「あ、ありがとうございます」

 

 なんとか声を絞り出して言ったお礼を聞き届けるとクォンはそのまま特訓場を出て行ってしまう。

 

 一仕事終えたクォンはぴしゃりと特訓場の扉を閉めてから、ゆっくりと歩き出すと、誰にも聞こえないような小さな声で呟く。


「う―恥ずかしかった。ちょっと羽目を外し過ぎたわね」

 

 途中から自分でも抑えきれない行動に出てしまっていたクォンは赤くなった頬を擦りながら、汗を流しに浴場へと向かうのであった。


最後まで読んでいただきありがとうございます! ブックマークをしていただいた方ありがとうございます! 引き続きブックマーク、評価、感想をお待ちしております!

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