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朝食会


 こつこつと二人そろった足音を立てながら、朝食が用意されている部屋へと向かっていた。


「ねぇクロノ。普段もあんな早くに起きて特訓とかしていたの?」

「いや、それはしていないよ」

「そうなの? 昨日から見たところ頑張り屋さんなんだなぁと、思っていたけど、第一にいる時は、そんなに動いていなかったの?」

「まぁ、僕が使徒になってからそれ程時間は経っていないし、他にもやることがいっぱいあったからね。それに第一学園に到着してすぐに冥獄凶醒(めいごくきょうせい)がいるっていう報告があったから、ほとんど時間はそっちの対策に時間を割いていたよ」

「なるほどね。冥獄凶醒(めいごくきょうせい)かぁ。いつかはあたしも戦うのかな」

「そりゃもし、ヴィゼン王国に現れた時には戦うことになるだろうし、もしかしたらどこかに派遣されて戦う可能性だってあるかもしれないよ」

 

 冥獄凶醒(めいごくきょうせい)はどこに現れているか分からない奴らであり、出来れば何かが起こる前に対処しておきたい敵なのだ。


「そうだよね。でも、出来ればそれはもうちょっと後だといいなぁ」

 

 クォンは遠くを見つめながら声を発する。


「それは、使徒をやめてからってこと?」

 

 クロノの問いに首を振って否定する。


「ううん。違うよ。この国がもっとまとまってから、みんなで戦えるといいなって思っているの」

 

 一瞬だけ見せた悲しさを感じた表情からクォンの言葉は本心からきっと言っているのだろう。だからこそ、何も知らないクロノは何も言えないのだ。


「さてさて、しんみりした話はこれでおしまいにして、中に入って朝食を頂こうじゃない」

「そうだね。今はしっかり食べて、体力をつけよう」

「あと、あたしの使徒の件については内緒にしておいてね」

「わかっているよ」

 

 二人は揃って中へと入ると、着々と準備が進められており各々の知った顔達が集まっていた。


「あ、クロノ様! おはようございます!」

「おはようクロノちゃん」

 

 クロノを見つけたフィリアとセラは我先にとクロノの下へと近づいて行く。


「みんなおはよう。それにしても美味しそうな朝食だね」

「ちゃんと美味しい朝食ですみゃ。クロノ様」

「シュメルもおはよう」

「おはようございますみゃ。この後については朝食が終わり次第お話しますみゃ。なので、先に皆さんに席を案内させてもらうみゃ」

 

 シュメルがみんなの席を案内しようとした時に、そっとイフルがクロノの傍に寄り、小さな声で短く話す。


「あとで相談したいことがあります」

 

 イフルは一方的に話を終え、すぐに案内された席に座ってしまう。

 

 クロノはなんだろうと思いながら、シュメルに案内された席に着くのであった。

 

 席の順は、右側がクロノ達で、左側がクォン達となっており、上座にはピュリファが座っていた。


「さて、そうしたら、みゃー達の最強チーム率いる使徒クォンちゃ……クォンと、クロノ様と交流を含めた。朝食を頂きたと思いますみゃ。ではピュリファ様よろしくお願いしますみゃー」

「それでは、いただきましょう」

 

 朝食は海が近いヴィゼン王国らしい朝食で海産物が豊富に使われており、クロノは滅多に食べたことが無い海藻や、魚で取った出汁のスープは絶品だった。

 

 美味しい朝食を味わいながら食べ進めながら、横を見てみるとセラとイフルは、前に座る羽属のタルティーさんと目隠しをしているアビッソさんと話しており、イフルはプニプニ体をしたスライムの魔人であるスラドンさんと話している。

 

 二人共順調に会話をしているようなので、問題無さそうだが、問題はこちらで起きようとしていた。


「ねぇねぇクロノちゃん。これプチプチして美味しいね」

「うん。そうだね。なにの卵かな?」

「それは、ボラボラの卵でしてお祝い事の時に食べたりするのですよ」

「へー。お祝い事の時に食べるんだ。そんな珍しいのを食べられて嬉しいよ」

「ふふ、クロノ様が喜んでくれて嬉しいです。あと、そちらは————」

 

 ピュリファが、説明していると一人で食事を進めているフィリアに向かってクォンが声をかける。


「ねぇ、あんたがあのフィリアなの?」

「そうだけど、どうかしたの?」

「クロノを使徒にしたきっかけを作ったっていう話は本当なの?」

 

 その言葉に、フィリアが目を細めた。


「そうだけど、なに?」

「そんなに怒らなくてもいいじゃない。それよりもあなたが使徒にしたクロノが頑張って戦うことにあんたはどう思っているの?」

「それは、私だって一緒に戦いたいと思っているわ」

「でも、結局死にかけたのはクロノだけって聞いているけど?」

「ッ‼」

 

 フィリアが出した殺気に部屋にいた全員が話を止めて二人の方を見た。


「で? どうなの?」

 

 殺気を当てられても動じないクォンの問いかけにフィリアは何も言えずに奥歯を噛みしめていると、肩に手を置かれて振り向くと、クロノが頷きながら見ており、フィリアは自然と力を抜いてクォンに今言える言葉を伝える。


「悔しいわ。ただただ悔しい。それだけよ」

「なるほどね」

「みゃみゃみゃみゃ。クォンちゃん! そんなこと言ってはダメみゃ! 第一の人達とは仲良くしてこれからの困難に立ち向かっていくのみゃ。だから仲良くしようみゃ」

「わかっているわよ。さて、お腹もいっぱいになったし先にあたしは出て行くとするわ。あーそうだ。クロノ。今日はあたしが特訓してあげるから」

「あ、うん。わかったよ」

 

 クォンが指導してくれるのは、当初の目的であるので、クロノも快諾するのだがこの後に続く一言が余計だった。


「昨日の夜みたいに特訓場にいてね」

「昨日の夜?」

 

 フィリアはその言葉に反応する。


「はいはい。またよろしく」

 

 しかしクロノは気にすることはなかった。

 とりあえず僕が出来ることをして、それをクォンが見ているということか。なら僕も支度をしなければ。


「では、皆さん食べ終えたようなので、今日もよろしくお願いしますね」

 

 ピュリファの挨拶によって朝食会が終わり、席を立とうとすると、服の裾をきゅと、フィリアに掴まれる。


「クロノちゃん。ちょーといいかな?」

 

 クロノはこの時のフィリアの笑顔に何故だか恐怖を感じるのであった。


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