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優しいあの人

 私は目を覚ますとその身体には朝日に照らされていることから、どうやら待っている間に寝てしまったようだ。

 

 目的が失敗したことを少しだけ悔やみながらゆっくりと体を起こすと、体に毛布がかけられていたことから、優しい誰かがきっと寝てしまった私に毛布をかけてくれたのだろう。

 

 そんな優しい人は思い当たるのは一人だけで、その人は、私に気を使ってどこかで寝ているのだろう。

 

 そう思った私は髪を整えてからその人に見られても恥ずかしくない様にさらに念入りに確認をしてから、部屋の中を探していたが、どこにも見当たらない。

 

 覚えている限りだと、私の方が起きるのは早かったはずだし、寝るのも早かったのはおそらく私だろうから、その人はまだ寝ているはずだったがどこにもいない。

 

 結局、部屋中を探しても見つからなかった私は少しだけ拗ねて、ベッドに腰を下ろす。この部屋に来たのも私の意思でありその理由も、もっとあの人に近づきたいと思ったからであったが、いないとはちょっとひどいと思う。


 私は近くにあった枕をポンポンと叩きながら、次に何をしようか悩んでいる時に、入り口の扉が急に開かれ、私は喜びのあまり扉に近づくと、


「おはようフィリア。あれ? クロノ様いないの?」

 

 部屋に来たのは昔からの付き合いのあるセラであった。


「ああ、なんだセラか。おはよ」

 

 フィリアの素っ気ない態度にセラは苦笑いする。


「その感じからしてどうやら失敗したようね」

「だって、クロノちゃん帰ってこないから先に寝ちゃったし」

「え? クロノ様、夜にこの部屋にいなかったの?」

「ううん。たぶん戻って来ていたけど私が気づかなかっただけ」

「へー。あのフィリアが気づけないほどにフィリアは疲れていたの?」

「そうじゃないわよ。単純にクロノちゃんの力が強くなっているだけよ」

「なるほど、それにしても、クロノ様はどんどん強くなってしまうわね」

「そうね。私が出会った最初の時なんて可愛いさが一番に感じられたのに、今では少し頼もしくも思えるようになってきたわ」

 

 フィリアはしんみりと話すその姿から、本当にそう思っているのだろうとセラは、感じ取ると、フィリアの背中をポンと叩く。


「だからなんのよ。むしろそうじゃなければ、セラ達の代表であっても困るだけだし、クロノ様がどんどん強くなってくれるのはみんなの為にもなるじゃない。そう。だからね。セラ達も遅れないようについて行って支えてあげないと」

 

 セラの力強い言葉にフィリアは、思い悩んでいたものが少しだけ薄らいだ気がした。


「そうね。セラの言う通りだわ。でも、それよりもセラ」

「なによ」

「そうなるとセラはすぐにでも次の力を用意しないといけないわね」

「うぐ。ここでそれを言うの」

「だって今のセラって戦える力ほとんど残っていないでしょ。だからセラが一番遅れを取っているからどうにかしなさいよね」

「わかっているわよ! それに昨日だって夜にイフルと一緒にいろいろ考えたんだから」

「へー。なにを考えたのよ」

「これよ!」

 

 セラに差し出された紙を見る。


「んーと、なになに。妖精の丘に妖精が集まる?」

「そうよ。今のセラが力を手にするのはこれが一番早いと思うの!」

 

 セラは自信あり気に話しているようだが、私はセラほどこの話をいいとは思えない。なぜならこの紙に書いてあるのは、妖精にお願い事をしよう! という内容なので、これはそういうイベントだと感じている。


「だからね。ここでバシッと妖精を掴まえて、妖精の力と私の力でクロノ様を支えてあげるのよ!」

「そっかー。そうなるといいわねー」

 

 せっかくここまで楽しそうに話しているセラに、いま私が思っていることを説得しても聞いてくれるかわからないし、紙の内容からしても何かあっても問題無さそうだ。まぁ昔のよしみで希望が叶うことを祈ってあげよう。たとえ、このイベントが子供向けであったとしても。


「よーし。セラもやってやるわよー!」


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