神様の特徴
「本当に反省しています」
「クォンが暴走するから悪いんだよ」
「はい。気をつけます」
「今度また暴走したら、他の秘密の話もするからね」
「え⁉ それってどの話。もしあの話なら絶対にクロノには言わないでよね」
「さぁ、どうしましょうかね」
ピュリファは、腕を組んでクォンを見ているが、その表情からしてこれ以上は問題なさそうなので、クロノは話題を変えて、クォンに問いかけた。
「とりあえず僕の話はしたけど、ちなみにクォンは使徒についてどう思っているの?」
クロノの質問にクォンは、グラスをゆらゆらと回しながらその中身を見つめながら、静かに話し出す。
「そうね。クロノも使徒になった経緯を教えてくれたし、教えてあげる」
「クォン……」
クォンが話し始めようとした時に、心配そうに見つめるピュリファに気づき、ゆっくりとその亜麻色の髪を撫でながら耳元で囁くように話かける。
「平気。それに、あの話はしないから」
「うん。わかった」
クォンはピュリファの目を見ると、ピュリファは安心したのか静かにクォンの話を邪魔しないように静かに口を紡いだ。
「それじゃ、話すとしますか。私もクロノやピュリファと同じで元は特に秀でたものは何も持っていない普通の女の子だったわ。毎日朝早く起きて、山菜を積みに行ったり、美味しい湧水が沸く秘密の場所に行ったりする毎日だったわ。でも、それが当たり前のようで奇跡のような毎日だったとは思ってもいなかったの。ちなみにクロノは、ヴィゼン王国の歴史については知っているの?」
「ごめん。ピュリファにも聞かれたけど、こっちに来るのが急に決まったから、本当に少しだけしか知らないんだ」
「そう。それなら、クロノは戦争や大型モンスターに襲撃された国や村は見た事はある?」
「ううん。ないよ。僕の村はたまに暴風雨があるぐらいでほとんど今まで平和に過ごして来たよ」
クロノの村は、基本貧乏な村であったが、生活には困ることはない大好きな村である。クロノは今でもその大好きな村が少しでも楽が出来る為に、給金が出れば仕送りを忘れることなく送っている。
「それなら、その大事に村が襲われたとしたらどう思う?」
「今なら、すぐにでもどんな手段を使っても駆けつけて行くよ」
「そうね。今のあたしも仕事があったとしても駆け付けるわ。そしてあの時も同じだった」
「それって……」
クォンは、静かに瓶から自分のグラスへ注ぐと、唇を湿らせるために少しだけグラスの縁に当ててから、話し出す。
「そうよ。あたしも、力が欲しくて目の前に差し出されたその力を手にしたの」
クォンの声音は手に入れて喜んでいるものではなく、後悔しているようにクロノには聞こえた。
「クォンも僕と同じだったのか」
クロノも使徒の力を手にするきっかけを作ったのが、忘れもしないイフルとの死闘であった。腕を磨き強くなったとはいえ、凶になっていたイフルとシスター達による猛撃により、クロノは絶体絶命の危機にさらされたが、リフィアの使徒になるということでその危機から脱したのだ。
「さっきの話からすると、クロノとあたしが似ているように思えるけど、あたしはそうは思わない」
「それならどうして、クォンは使徒になったことに後悔しているの?」
クロノは同じ境遇で疑問に思ったその感情を隠すことなく問いかけた。
「ううん。後悔はしていない。でも、なんであたしなのかってことは今でもずっと思っているの。だって、あたしは普通よ。それこそ、前に言った通り、そこら辺にいるシスターと同じように過ごしていたに違いないわ」
「クォン、やっぱり……」
「ピュリファ。言いたいことは分かってる。でもクロノには正直に伝えておきたいの」
「そう。なら、私も頑張るね」
「ごめんね。さて話を続けるわ」
話続けようとしているクォンの隣で、静かにしているピュリファの表情は先ほど明るい姿からどこか寂しさを感じたが、今のクロノにはかける言葉が見当たらず、クォンの言葉に耳を傾けた。
「あたしがクロノと決定的に違うと言えるところは、あたしはこの力をあたしが本当に望んで手に入れたわけではないということ」
クロノはそのクォンの言葉に違和感があり、その違和感を払拭せずにはいられなかった。
「それって、どういうこと?」
「クロノは、ヴィゼンの事を知らないって言っていたけど、この第二で奉られているサリメナことは、知っている?」
「ううん。そのサリメナの事もよくは知らないよ」
「それなら、そこからね」
クォンはグラスの中身を一気に飲み干し、静かに置くと真剣な表情で声を出す。
「サリメナはこの第二にいるモンクとシスターに力を与えている神よ。まぁそれはクロノのところで奉られているリフィア様と同じね。それであたしが使徒に選ばれた理由は、そのサリメナが与える能力の特徴が関係していたの」
「サリメナ様の能力?」
「そう。サリメナが与える能力の特徴は、簡単にいうと共存よ」
クロノはクォンの過去についてと神が与える能力に特徴があることを知ったことに、頭の処理が追いつかない間に更に新たな情報が入り込んでしまって、やや混乱気味であったが、ここで話を止めてしまうと、話が進まないと感じた為、ただただ話を聞き続けた。
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