夜会の続き
「しっかし、クロノぉ。あんたも大変だったのね」
「うん。でも今は問題なくしているし、僕自身としてはあまり気にしていないかな」
「あれ程の過去をお持ちだったのに、それでもこうしていられるとなると、クロノ様はお強いのですね」
ピュリファは感嘆しながらクロノの過去を聞き届け、クォンはグラスの中身を一気に飲み干す。
「ふーん。確かにすごいよ。でもさ、そのアルチベータとかいう奴との戦いで、結局死にかけたわけじゃん。それでもなの?」
「確かに思い返せばいつも大変な出来事だったけど、それでも僕は今の立場に不満とかないんだ。でも、クォンの言う通りこれからも辛い思いはするかもしれないけど、フィリアとの出会いが後悔する気はしないし、むしろ感謝しているからね」
「それだけの苦労がありながらも、それだけの強い意志をお持ちとはクロノは本当にすごいですね」
「ありがとう。でも、もちろん何も起こらないことが一番だけどね」
クロノはクォンから渡されたジュースを飲むと、甘酸っぱさの中に喉越しのようなものを感じる。やっぱりこれお酒じゃないのか。
「それにしても、あたしもそのフィリアっていう子に会ってみたいわね。クロノをここまでしたからには、ピュリファと一緒で、きっと何かあるはずに違いないわね」
「ちょっと、クォン。口を滑らせて変な事を言わないでよね」
「ごめんごめん。気をつける」
ピュリファは、クォンに注意するが、その頬をほんのりと赤くしているクォンにその声が本当に届いているようには見えなかった。
「そういえば、ピュリファはあの食事会の時に元はただの少女って言っていたけど、あれはどういうこと?」
「それについてはですが、私は元々どこにでもいる少女でしたが、このヴィゼン王国と私の繋がりが判明すると同時に、私には特別な力が秘められていることがわかったのです。そしてその特別な力が発動すれば、この国は滅ぶと言われているのです」
「え⁉ そんなにすごい力がピュリファにはあるの⁉」
クロノは無意識にピュリファを足の先から顔までを見尽くすとピュリファはもどかしそうに、体を縮こませた。
「ク、クロノ。そんなに見つめられたら…恥ずかしいですよ……」
「あ、ごめん! つい」
「くぅー、可愛いよ! ピュリファ! もっと恥ずかしめたくなるわ! あー可愛いなぁピュリファは、本当にかぁいいよ」
ピュリファは「はぅうう」と口元に頬を赤くしながら手を当てて恥ずかしそうにしており、それを見たクォンは、先ほどよりも顔を赤くしながら、ピュリファを抱き寄せて頬を合わせてスリスリしていた。
「ちょっと、クォンやめて! それにお酒臭い!」
「えー。いいじゃない減るもんじゃないし! 今日はクロノのお祝いなんだから無礼講じゃー」
クォンはさらに頬を押し当てると、ピュリファは恥ずかしさよりもその絡みに嫌そうに手でクォンを押し返そうとするが、クォンの力が強いのか一向に引きはがせなかった。
「ク、クロノ。助けて」
「ほらクォン、ピュリファも困っているから、ここまでにしようね」
「えー。もうちょっといいじゃない」
「強引なのはダメなの。それにクォンその恰好って事忘れていないでしょうね」
クォンはピュリファに言われて自分が着ている服装を確認すると、バスローブが少しだけ緩んでおり、胸元が見えそうになっており、確認したクォンは、直すよりも先にピュリファから引きはがしたクロノへと視線を向けると、クロノが顔を背けていたので、ニヤリと口角を上げる。
「ふーん。クロノもしかして見たの?」
「い、いや。見てない」
「へー。それならどうして、そんなに顔を赤くしているかしら?」
「そ、それは……お酒のせいだよ」
「まだ、しらばくれるの? じゃあ、サービスでもっと見せちゃおうかなー」
クォンはクロノの反応を楽しんでいると、ピュリファがさっきのクォンがした行動のお返しに、突き刺さるような一言を言い放つ。
「クロノ。クォンは痴女だから、早く離れたほうがいいわよ」
その言葉にクォンは反論する。
「なっ⁉ この若さで痴女なわけないでしょ!」
「へー。この間も私にパンツを脱がすように指示したよね。それにあの時も……」
「わーわー。言っちゃダメだって! それにあの時は疲れていたから‼ っていうか、クロノの前でそんな恥ずかしいこと言わないでよね!」
ピュリファは口を三角形にしてクォンの恥ずかしい話を暴露し、たまらずにクォンは反論しようとするが、ふと、クォンはクロノの事が気になり見てみると「うわぁ」と言いたげな表情で見ていたことから、たまらずクォンは二人に頭を下げて謝った。
「私が悪かった! だから許して!」
明るい部屋にクォンの声が響き渡るのであった。
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