寝苦しい夜に暴風はありがたいのか
現在二人は温泉から戻って来て寝床で休んでいる。
この場所に来る準備をする時に、寝床は二人分準備しようとしていたが、フィリアが僕を気遣ってくれて一つでいいと言うので、一つにしたのだが、自分で荷物を運ぶという考えはなかったのかと今更ながらクロノは思っていた。
周りには、魔法の結界が施されているので、ほとんどのモンスターからは二人がいる場所は見えなくなっているため二人は安心して寝床の中に居られるのだ。
「結局今日は火竜を見つけることが出来なかったわね」
「今日の目的は移動だったし、明日から本番だよ」
「そうだといいわね。明日には会えるいいわねー」
二人はその後軽く話してから静かに眠りについたのだが、クロノは寝ている途中すごく寝苦しくなり目を覚ますと、フィリアが寝袋の中から出ており僕に抱き着いていた。
フィリアが僕を抱きかかえるようにして寝ており、更に胸が顔に当たっていることもあり僕としてはこっちの対処をどうすればいいか早急に考えなければならない。
現状何とか腕は動かせるので少しずつ寝袋の固定を外していき、あとは僕の頭を抱えて寝ているフィリアから離れるだけなのだが、どうしても動くと胸に触れながら動かなければならない。
しかし、このままいるのも良くないので、意を決してなるべく触れないように頭を動かす。そしてなんとかあと少しで離れられそうなところで、試練が起こる。
「うっ……うん……」
「ヴんっ⁉」
さらに、フィリアが僕の頭を抱き寄せた為、その豊満な胸から外れようとしていた顔がフィリアと密着する。
状況は更にいろいろとマズい方へ走ろうとしており、そして今も顔に密着するフィリアの胸がクロノの呼吸を阻害して息もままならない状況になっている。
まずいこのままでは、いろいろと危険だ。
状況もそうだが僕の感情とかもヤバいことになる。
危険を感じたクロノは、フィリアが一瞬腕の力が緩んだ隙を見てフィリアから離れる事に成功する。
なんとか、フィリアを起こさず離れることに成功したクロノは、月明かりの中で見にくいが、フィリアの寝袋を見つけとりあえず近くに置いておいた。
この間の夜も投げだして寝ていたし、クロノはフィリアは寝癖が悪いのを忘れていたことを思い出していた。そして今回はおそらく寝袋が窮屈だったので前の固定部分を外してしまったのだろう。前回は裸で寝ていが今回はまだ服を着たままだっただけマシなのかもしれない。
そしてクロノは明日また一緒に寝る時にどうするかを考えながら一人で外に出る。
外は星空が輝いて見えるほど澄んでいた。
自分がいた村の空も星が綺麗だったが、ここはそれよりも綺麗だった。
そしてクロノは今回のクエストの事を改めて思い出していた。
今回は前に戦った地竜よりもはるかに強い火竜の討伐というフィリアに会う前のクロノであれば、生きているうちに討伐をすることを考える事すらなかっただろう。
地竜でもクロノにとって強敵だったのに数日でそれより強い火竜と戦うのだ。
クロノはここに来る時に火竜と戦うのは無謀と即答した。しかしそれを変えさせたのはフィリアである。
つかめない所ばかりで、謎ばかりだけど分からない魅力あるからそれに僕は魅かれているのかもしれない。でも僕はまだフィリアの強さを知らない。
この間の地竜と戦った時のことを思い返せば、僕は無我夢中で戦っていたからフィリアがどういった援護をしてくれていたのかは見ていなかった。
あの時もっと冷静に……いや、無理だ。仮にあの状態の僕が同じ状況であるとしたら百回あったとしても地竜以外を確認する余裕なんてなかっただろう。
しかしクロノはフィリアがきっと強い力を持っていると思っている。
そうでないと、こんな無謀に思える火竜討伐なんて行こうと思わないだろうし、ただでさえ謎な部分が多いのだろうからフィリアはきっと強いだろう。
その時だった。
目の前を大きな影が横切った。
その影はそのあたりを周回するように動いていた。
上を見るとそこにいたのは、
「か、火竜⁉」
夜空の天空を舞う火竜がそこにいた。
巨大な体躯をその両翼の翼により夜空を飛ぶ火竜は、恐ろしさを通り越しその姿にただただ、釘付けとなった。
しかし、その時間もほんのわずかであった。
火竜は急に何かを体を反転させ、地上に向かって急降下していく。
その急降下により発生する暴風をこらえながら、僕は見続けた。
火竜は地上に向かい急降下の途中、火球を打ち込んだ。
火竜が放った火球の強さは燃えた何かが、はるか上にいるクロノのところまでに届くほどの威力であった。
そしてクロノはその熱で我に返り、目の前で起きた事が急に恐ろしくなり寝床に逃げ込んだ。
僕達はこれからあんなに、恐ろしいモンスターと戦わなければならないのだ。
僕は、どうかしていたのだ。
ちょっと上手くいったから調子にのっていたのだろう。
体の震えを抑えるように、強く抑え込むが止まらない。
これほど恐怖したのは、生まれて初めてかもしれない。
「……クロノちゃん?起きているの?私もさっきの風で目が覚めちゃってね」
どうやら、フィリアが火竜の行動によって発生した風で目を覚ましたようだ。
月明かりも相まってその姿は神々しく見え、恐怖で理性がおかしくなってしまっているクロノはフィリアに抱き着いた。
それに始めは驚いた素振りを見せたフィリアだったが、静かに僕の頭を撫でながらそれを受け止める。
「クロノちゃんどうしたの? 怖い夢でも見たの?」
「フィリア、お願いだから一つだけ答えてくれないか? フィリアは火竜よりも強いの?」
フィリアはその問いに即答する。
「強いわ。多少は苦戦するかもしれないけど、間違いなく私の方が強いわ」
その言葉を聞いて安心したのか、体の震えが止まる。
「僕、フィリアを信じるよ。これからもずっと」
「急にどうしたの?」
「言葉にするのは難しいけど、簡単に言うとすごく安心するからかな」
「私はシスターだからね。だから今は安心して休みなさい」
フィリアは優しく僕の頭を撫でながら言う。
僕はそのフィリアの言葉を聞いてからそれ以降のことを覚えていない。
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