寝かせないよ~
「う~、ようやく仕事が終わったみゃー。あれみゃ? あれはもしかして」
シュメルは一仕事終えて、ようやく自分の時間になろうとした時だった。廊下を二人並んで歩いているよく知った姿を見つけ、小走りで駆け寄る。
「あら、シュメルじゃない」
「シュメル、お疲れーっす。今日はもう仕事は終わったんすか?」
「ちょうどさっき終わったところみゃ。それにしても帰って来るのが随分と遅くなったみゃな」
シュメルが見つけたのは、二人そろって同じバスローブを着ているタルティーとアビッソであった。
「そうね。予想以上に困難な仕事だったから、大変だったわ」
「おかげで、ご馳走も明日に食べることにしたっす」
「そうだったのかみゃ。そういえば、クォンちゃんはどうしたのみゃ?」
シュメルはキョロキョロと周辺を見渡すが、その最も今会いたいその姿は見られない。
「クォンちゃんなら、到着してすぐに、部屋に戻ってお風呂に入りに行ったわよ」
「うちらが、お風呂場についた時にはいなかったっすから、もう寝てしまったのかもしれないっすね」
「そうなのかみゃ。出来れば少しぐらいクォンちゃんとお話をしたかったみゃ」
しょんぼりするシュメルを励ますようにタルティーが声をかける。
「また明日になったなら、会えるわよ。それにクォンも疲れているから、今日会ったとしても適当にあしらわれるだけよ」
「それでもみゃーは、会いたかったみゃ」
「明日の楽しみってことで今日は諦めなさいな。それともお姉さんが慰めてあげましょうか?」
タルティーは両翼と両手を広げてシュメルを受け入れようとしたが、シュメルは顔をプイっと横にする。
「みゃーは、クォンちゃんがいいのみゃ」
「がーん。そんなにみんなお姉さんとは嫌なの……」
「タルティー、今日は二回目っすねー。あっはははははは!」
アビッソは、クォンとシュメルに断れたタルティーを指さして笑っていると、いつの間にかその足元に光の縄が這いよっており、そのことにアビッソが気づいた時にはすでに遅く、その縄が瞬く間に体中に巻き付くと、アビッソは抵抗することなくグルグル巻きになり、バランスを崩して倒れそうになりながら、悲鳴のような声を出すと同時に、優しく柔らかな羽に包まれ、視線を上にあげると、困ったような表情をしたタルティーの表情が目に入った。
「お姉さん。今日はすっごく疲れたのに、誰も癒してくれないから、今日は仕方無くアビッソと楽しいことをしてから寝るとするね。だから相手よろしく! アビッソ!」
「なっ! ちょっと待つっす! うちも早く寝たいっす!」
「さて、タルティーの相手も見つかったようだし、今日はみゃーも加護で清めて、もう寝るとするみゃ。そうじゃないと明日の仕事に支障がでるしみゃ」
「そうね。睡眠は美容にいいものね」
「ちょっと、シュメル! 助け……むごっごごご!」
縛られてもなお、抵抗しているアビッソだが、その口に羽を当てられてもごもごしているが、この光景はシュメルにとって見慣れたものなので、気にせずに小さくあくびをする。
「それじゃ、おやすみみゃ~」
「おやすみなさい」
「ちょ、シュメル! うちを助けてくださいっす!」
アビッソがタルティーの奇跡である光の縄に縛られてままタルティーに担がれて行くのを見届けて、二人と別れたシュメルは、今も襲い掛かっている睡魔を噛み殺しながら、歩き続けて部屋に入るとすぐに着ているシスター服を脱ぎ散らかすように脱いで下着姿になり、そのままベッドにダイブしようとすると、そのベッドにはすでに先約が待っており、ベッドを占拠しているそいつは、待っていましたと言わんばかりに小さな足を組んで、シュメルを見つめていた。
「やぁ~。シュメルしゃん。こんばんは~。今日もお仕事お疲れ様ですと伝えて~、すぐで申し訳ないけど~今度はサーしゃんに、付き合ってくれるかな~?」
「サリ……メナ様」
シュメルはスローペースで話続けるよく知ったその姿に一瞬、表情を強張らせたが、すぐに解いた。しかし、このクソ眠たい時に、最も会いたくないお客が来ていたことに頭が痛くなるが、目の前にいる相手は簡単でない相手だということは、出会った時から知っている。だから、諦めのため息を吐いて睡魔を打ち払うように、気合を入れなおす。
「やれやれみゃ。どうやら今夜はみゃーもまだ寝れそうにないみゃ」
「今夜は寝かせないよ~」
シュメルは首を横に振って、何かを含んだような笑顔で無邪気に笑うサリメナと会話を始めるのであった。
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