食後の運動をしよう
「それにしてもいっぱい食べたなぁ」
現在クロノは自室に戻り、椅子座って膨れたお腹を擦っていた。
歓迎会だと感じられたのは、始めと最後ぐらいで残りはピュリファ様との食事会のようなものであった。
その為、食事やピュリファ様との会話に集中できたのだが、充分すぎるぐらいのおもてなしされてしまい、今ではお腹をパンパンにしてしまい少し息をするのが苦しいぐらいだ。
「僕もみんなみたいに食べれば良かったけど、やっぱり断るっていうのは苦手だなぁ」
他の四人は、適度に断りを入れて量を調整していたので退出する時も特に問題が無かったが、クロノはそのお人好しな性格によって、ほとんど勧められた料理を綺麗に平らげてしまうことになり、部屋を出る時の足取りは重くなっていた。
時計を見ると寝るにはまだ早いが、かといってやることもない。でもこのお腹の状態では、寝るとして胃が重すぎて上手く寝られないだろう。だとしたらやることは一つだけだ。
「このままだと、消化するのに時間もかかるし、今日はほとんど動いていないから、ちょっと運動してこようかな」
自室を出ると、ちょうど廊下を歩いていたシュメルと目が合い、シュメルがそのまま、クロノの下へと歩いて来る。
「クロノ様、お出かけですかみゃ?」
「うん、ちょっとね。お腹もいっぱいだし体を動かそうと思ってね」
「そうでしたかみゃ。それならこの廊下を真っ直ぐ行って、つきあたりを右曲がって、途中の階段を下に行くと、近くに特訓場があるみゃ。そこで体を動かすといいみゃ」
「へー、こっちにもやっぱりそういう場所はあるのか」
「そうみゃ。よかったらみゃーが案内しようかみゃ?」
「今の話だけで充分分かったよ。ありがとうシュメルさん」
クロノはシュメルの話通りに、廊下を真っ直ぐ歩いてつきあたると、右へと進んで行くのであった。
「さすがクロノ様みゃ。あの頑張り屋さんなところをうちのクォンちゃんも見習ってほしいみゃ。しかし、どうせであれば、クォンちゃんがいれば他にもクロノ様の発散方法を他にも提案出来みゃけど、そのクォンちゃんがまだ帰って来てないみゃからなー。でもまだ時間はあるから慌てる必要はないみゃ。この次の機会にやればいいみゃ。ってみゃみゃ?」
シュメルは仕事に戻ろうとすると、クロノの部屋の扉の前で、一人の赤髪の女性が部屋を覗いていたので声をかける。
「あれ、フィリアさん、どうしたのみゃ?」
「ああ、あの時の。ねぇ、あなたクロノちゃんを知らないかしら?」
部屋を覗いていたのは、フィリアであった。この事にシュメルは少し前に、警備室より第一学園から来たシスターが使徒様に用事があるということで、部屋の予備の鍵を渡していたという報告があったことを思い出す。三人の内の誰かなのかは知らなかったが、どうやら鍵を借りていたのはフィリアのようだ。
「クロノ様なら、さっき特訓場へ向かったみゃ」
「そうなの? クロノちゃんも真面目ね」
「もし急ぎの用事であれば、場所を案内するみゃ」
「ううん。いいわ。どうせすぐに戻ってくるだろうし、中で待っているわ」
フィリアはそのまま部屋の中に入ろうとするが、シュメルは入られる前に声をかける。
「よかったら、クロノ様が戻って来るまで、みゃーがフィリアさんのお話相手でもしましょうかみゃ?」
「気にしないで。それにあなたにも仕事はあるんでしょ」
「あはは、確かに仕事はあるみゃ。でも第一学園やセドナ王国の話も興味がありみゃして……」
「滞在はいつまで続く分からないけど、まだ時間はあるだろうから、その時話してあげるわよ」
「そうかみゃ。なら、その時を楽しみにしているみゃ。では、おやすみなさいませみゃ」
「うん。ありがと」
シュメルはフィリアがクロノ部屋の中へ入るのを見届けると、再びコツコツと音を立てながら、灯りに照らされた赤い絨毯が敷かれた長い廊下を歩きながら呟く。
「あれがフィリアさんかみゃー。聞いていたとおりの人みゃけど、うちのクォンちゃんには負けてもらっては困るみゃ。だからこそみゃーが何としてもくっつけてあげないとみゃ」
クォンの事を一番知っていると自負しているシュメルは、少しだけ歩く速さを上げて目的の場所へ向かうのであった。
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