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ピュリファ様

「うん。こっちのお酒も美味しいわね。すぐになくなってしまうわ」

「フィリアには前歴があるんだから、飲み過ぎ注意よ。」

「セラ、それは分かっているって。それよりも料理はまだかしら?」

「ちょうど来たようだよ」

 

 給仕たちによって運ばれてきた前菜が置かれていくと、その綺麗な盛り付けに目を輝かせる。

「綺麗な料理ね」

「それにこれっ、美味しい!」

 

 セラが絶賛して食べているのは、貝を使った料理で、植物系のオイルの香りと、貝の触感が舌を喜ばせてくれる前菜であった。


「これはお酒と合いそうですね。私ももらうとしますか」

「イフルさんもお酒飲めるの?」

「そうですね。普段は飲みませんが、こういうお祝いの時だけは、貰うようにしています」

「そうすると、ここで飲めないのはセラだけね。こんなに美味しいのに飲まないなんてもったいないわね」

「フィリアうるさい。セラはこの美味しい食事だけで満足なのよ」

 

 セラは果物ジュースをグイっと一気に飲み干す。


「クロノ様歓迎会楽しんでくれているかみゃ?」

「うん。お酒も料理もとっても美味しくて、みんなも満足しているよ」

「それは良かったみゃ。それでなんみゃが、こっちの使徒様の到着がどうやら遅れそうなので、会えるのは結局明日になりそうみゃ」

「そうなの? まぁ、僕は気にしないけど、この会にも参加できないなんて使徒さんも残念だね」

「いや、うちの使徒様はそれでも今頃喜んでいるみゃ……。それはいいとして、クロノ様にお願いがあって、この方とも一緒に食事をしてもらえるかみゃ?」

「初めましてクロノ様。私の名前は、ピュリファと申します。今日はご一緒にお食事をさせてもらってもよろしいですか?」

 

 その姿には年相応の幼さ残されているが、それよりも何か心内で敬意を自然と示してしまうような不思議な雰囲気が少女から感じられ、クロノは自然と席を立って頭を下げていた。


「クロノ様への挨拶も終わった事みゃし、ピュリファ様もこちらの席で食事をとりましょうみゃ」

「うん。ありがと、シュメル」

 

 ピュリファは、空けるように指示されていたクロノの右側の席に座った。


「それでは、ピュリファ様を任せたみゃ」

「シュメルさんは一緒に食べないの?」

「みゃーにはいろいろとすることがあるのみゃ。それじゃよろしくみゃ」

 

 シュメルはそのままどこかへと歩き去ってしまった。


「はじめして、改めて今回来させてもらったクロノと言います。今日は歓迎会を開いてくれてありがとうございます」

「はい。ようこうそヴィゼン王国へ」

 

 その優しさが溢れるような笑顔にクロノも、思わず表情を緩めてしまいそうになるが、なんとか堪える。


「しかし、クロノ様はただの冒険者だったのに、今ではこうして国の象徴様と隣で食事をしているとは、考え深いものです」

「そうよ、イフル。クロノちゃんと私との出会いからこうしてなっているのよ」

 

 フィリアはグラスを揺らしながら自慢していると、ピュリファがそのことに驚く。


「そうですか、それなら私と一緒ですね。私も元はただの少女でしたから」

「そうなの?」

「そうなのです。ちなみにクロノ様はこの国の事を知っておられますか?」

「ごめんなさい。急に来ることになったから、今知っているのはこの国が鎖国をしていることぐらいしか知らないです」

「そうでしたか。それなら今度時間がある時に、お話させてもらってもいいですか?」

「うん、是非お願いするよ」

「ええ、私もその時を楽しみにしていますね」

「しかし、ただの冒険者だったクロノ様が国の象徴とお話とは、やっぱり使徒になるということは夢がありますね」

「イフル、まだいうの?」

 

 さすがにフィリアも気になったようで、ちょっと不機嫌な声音でイフルを見る。


「ごめんなさい。でもやっぱりすごいなと、思いまして」

「そうですね。使徒様になるということは、今までの生活を一変させるほどですから」

「うん。確かに前の僕ならここにいる事は無かっただろうからね。それに、今はいないけど、こっちの使徒様に使徒の立場についてとかも聞いてみたいし」

「そうですか。クロノ様も気になるのですね」

「うん。まぁ、そうですね」

「こっちの使徒様も、いろいろとクロノ様に質問をしてくると思いますが、是非答えてあげてくださいね」

 

 クロノはピュリファの言葉に何かを期待しているような感じがしたが、気にするとこなく短く「うん。そうですね」と返事をした。


「ふふっ。約束ですよ」


 ピュリファは、楽しそうに口元を手で押さえながらも、少しだけ頬を緩めて笑うのであった。


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