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相談役イフル~フィリア編~ ハードモード

 フィリアは小さく何かを呟やくと、イフルと目を合わせて伝える覚悟を決める。


「あのね。私は昨日の夜クロノちゃんと一緒に寝たの。だけど、それで……その、私からクロノちゃんを夜伽に誘ったのに、私があと一歩のところで気を失っちゃったせいで、結局何もしないで終わってしまったの。どう、イフル? 私ってひどいと思わない?」

「ほへ⁉」

 

 あまりにも馴染みのない悩みに、イフルは思わず顔を真っ赤にして言葉を失った。まさかとは思っていたが、実際にフィリアが悩みを打ち明けているし、この様子からするとどうやら本当に本当のようだ。


「だからこれが私の悩み。あの時はたしかに気がどうかしていたけど、間違いなく行動をしたのは私からなの。それで……服を全部脱いで私から誘ったのに、結局私が興奮しすぎて気を失ったの」


 イフルは思考が停止しかけていたが、なんとか言葉を紡ぎ出して、しどろもどろな返事をする。


「あ、はい。そ、そうなんですね。いやー。この手の話題は私もまだ経験がないので、どう返事をしたらいいか分かりませんので、はっきりとは言えませんが。その、期待が外れたクロノ様がちょっとだけ可哀想な気がしますような?」

「ああああああああああ、やっぱりそうよね! クロノちゃんも男の子だし、その気に絶対になっていたに違いないし、それで私が気を失ったせいで、嫌な思いをさせたのは間違いないわ。朝起きた時なんかは何かされた痕跡も無いし、きっとクロノちゃんのことだから優しくしてくれたんだわぁあああああああ、ごめんね、クロノちゃん! 私が不甲斐ないばかりに!」

 

 フィリアは両手で顔を覆いながら、謝罪の言葉言い続けているが、セラは既に話についていけておらず、ぽかーんと今もしており、イフルに関しては額に手を当ててこの後に、どんな言葉を言えばいいか悩んでいる。


「えーと、フィリアはちなみにそのような行為は、過去にしたことはありますか?」

「あるわけないでしょ! あの時だって別にする気があった訳じゃないのに、急にクロノちゃんの力で高ぶった気持ちが抑えきれなくなっただけなんだから!」

 

 刻印修復の初めから変な感じはしたが、クロノがそういうことをする性格ではないことを知っているので狙ってやったとは思えないし、もし狙ってしていたとしても望むところであった。でも、結果はどちらにしても同じような現状になっただろう。


「それで話をまとめると、フィリアはそれが原因でクロノ様と気まずい状態になったということですね」

「うん。だって、受け入れるつもりだったのに、直前で気を失ったのよ。だから次もそうなったらどうしようと思ってしまうし、このままでも女として不甲斐なくて、合わせる顔がないわ」

 

 イフルはこのフィリアの悩みに慎重に言葉を選んだ。この問題は使徒とかシスターなどの問題ではなく、単純に男と女の問題なのである。しかも性に関する事だと尚更である。

 

 というか、自分から相談役を言い出したが、なんでこんなにクロノのことで悩まされなければならないのかと、少しだけ相談役に出たことに後悔していると、ぽっとセラが声を出す。


「それなら、これからクロノ様とフィリアは一緒に寝ればいいじゃないの」

「ほへ⁉」

「セ、セラさん⁉ 先ほどまでぽかーんとしていたのに、急にいったい何を言っているのですか⁉」

 

 フィリアは顔を真っ赤にして、イフルも同様にあたふたしているという普段では見られない珍しい光景だが、復活したセラは構わずに話を続ける。


「だって、フィリアはこのままだとクロノ様といるたびに気まずくなっちゃうでしょ。それなら最初は大変だけど、慣れるしかないでしょう」


「ええええええええええええええええ⁉」

 

 イフルは大胆なセラの提案に驚きを隠せずに思わず声を出してしまったが、フィリアは何度も頷いて賛同する。


「そうよね。それしかないわよね。セラもそう思うわよね。うー。恥ずかしいけど……でもっ。頑張るしかないっ!」

「うんうん。セラも協力するから、頑張りましょ」

 

 フィリアとセラが手を取り合って、会話をしていることから、問題は無いと思われるので、イフルもようやく胸を撫でおろしてはいるが、なぜだろう、どうしても何かが突っかかる気がしてならない。


「すいません。失礼します。歓迎会の準備が整いましたので、会場へ移動をお願い致します」

 

 二回ほど扉をノックして部屋の中へと入ってきたシスターによると、ちょうど歓迎会の準備が整ったようなのでどうやら間に合ったようだ。


「さて、私も調子が戻ったからこれで歓迎会に参加できるわね。話を聞いてくれてありがとね、イフル」

「ええ、よかったです」

「じゃあ、先に行ってクロノちゃんに会いに行って来るわね」

 

 フィリアは元気を取り戻したのか、最初に飛び出すように部屋から一人で出て行ってしまったので、イフルとセラはフィリアを追うように並んで歩き出す。


「なんとか、歓迎会が始まる前に二人の調子が戻って良かったですが、フィリアについては、まだ安心できないような気がするような」

「それは仕方ないわ。フィリアの場合はこれからだもの。それにセラもこのままくよくよしていられないし、とりあえずはこれでいいのよ」

「しかし、まさかセラさんがあのような提案をするとは思っていませんでした」

「どうしてそう思うの?」

「だってセラさんもクロノ様に対して好意を持ってしますし、こう言ってはあれですが敵に塩を送るような行為かと」

「それなら問題ないわ。これからフィリアで試すことが出来れば、その結果でクロノ様がどういうのが好みなのかも分かるし、あとはそれをセラも実践すれば、セラは恥をかかなくて済むのよね。だからフィリアには頑張ってもらわないと♪」

「セラさん……いえ、なんでもありません。フィリアが上手くいけばいいですね」

「そうよね! さてセラも歓迎会楽しみだなー!」


 セラは右目の刻印を輝かせながら語るその姿に、イフルは戦慄しながら会場へと向かうのであった。


                  ☆


「すごいね。まさかこんなに人が集まっているなんて、なんだか申し訳ないよ」

「そんなことないみゃ。クロノ様の立場からすると、これぐらい普通みゃ。それに今日は他にも色々行事を兼ねているからここまで大きくなっているみゃ」

 

 大広間を全て使って歓迎の準備を進めてられており、運ばれて料理や装飾などは、クロノが初めて見る物ばかりで、その心は自然と高ぶっていた。


「あとは、第二にいるはずの使徒さんに挨拶が出来れば、良かったけど先に仕事が入っていたから仕方がないよね」

「申し訳ないみゃ。うちの使徒様は今頃任務の途中だから、早ければ歓迎会の途中に戻って来るはずみゃ」

「任務なら仕方がないし、僕も突然来たから仕方がないよ。でも、この歓迎会に初めからいられないのは、ちょっとだけ可哀想かな」

「いやーどうだろうみゃ。うちの使徒様、こういう場。あんまり得意じゃないから、意外と今も任務で良かったとか思っていそうみゃ」

「そうなんだ。でも、僕はこういうの好きだな」

「みゃーも好きですみゃ」


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