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貸し切り温泉っていいよね!


 クロノはフィリアに言われた通りの物を揃えて、ワープポイントに向かっていた。

 

 そして先にワープポイント付近で待っていたフィリアは、他の冒険者達に何やら言い寄られているようだが足を組んで、暇そうにしている。

 

 それを見たクロノは急いで、フィリアの元に寄るとそれに気づいたフィリアは僕に近づき、


「もうっ遅いじゃないの!」

「待たせてごめんね。でも言われた物は揃えたよ」

「そこはクロノちゃんだから心配してないわよ」

 

 僕とフィリアが話していると、先ほどまでフィリアに言い寄っていた男たちが何やらひそひそと話し合っている。


「おいっ! あれって例の」

「ああ、あれが例のブラックスターと言われている奴か」

「怒らせる前に早くどこかに行こうぜ」

「そうだな」


 クロノは自分のことについて何かを言われた気がしたが、それよりもフィリアの話を優先に聞いているので、男たちの話が良く聞こえなかった。


「クロノちゃん! そうしたら、行くわよ!」

「わかったけどとりあえず先に行き先を教えてよ」

「だーめ。ついてからのお楽しみよ!」

「やっぱり嫌な予感がするんだけど」

 

 前回の地竜のクエストでも今のような感じで始まったので間違いなく今回も簡単には終わらないだろう。でも考えたって仕方がない。クロノはやれやれといった感じでフィリアと手を取り合い、目的地に向かって二人はワープした。


                  ☆


 ワープポイントから転送されたのは、やって来たのはゴツゴツとした岩肌が見られる山岳地帯であった。


 クロノは到着してすぐに開いた口が塞がらないほどに驚愕していた。それもそのはずで、山岳地帯は強力なモンスターの住処として誰でも知っているほど有名な場所であり、その強力なモンスターが生息する場所に来たということは、今回の目的は間違いなく過酷なものであるということになる。


「……フィリア、今回の目的を教えてもらっていいかな?」

「仕方ないわね。ここまで来たから教えてあげるわ! 今回はなんと! 火竜討伐に行き……ってクロノちゃん⁉ そっちは目的地の方じゃないわよ! 戻って来なさい!」

「今回は絶対に死にます! 間違いなくヤバいクエストです!」

 

 前回の地竜討伐も充分過酷なクエストだったが、火竜はさすがに過酷を超えて無謀だ。

 

 そう思ったクロノは今回ばかりは逃げようとするが、すぐにフィリアに捕まってしまう。


「大丈夫だって! 最初は怖いけど実際会ってみたらそうでもないって。クロノちゃんなら地竜の時みたいに上手く出来るって!」

 

 フィリアに励まされているのか、そそのかされているのか分からないがここまで来たのであるなら、どのみちやるしかないだろう。


「……わかったよ。ここまで来たらやるしかないよな」

「さっすが、クロノちゃん。怪我をしたらシスターである私が治してあげるから、頑張って火竜を討伐しましょうね」

 

 こういう時に限ってシスターを誇張するフィリアを横目で見ながら小さく頷いた。

 

 結局二人は移動を開始したのだが、ワープポイントから今回の目的地までは距離がある。

 

 その為、現在は目的地までに早く移動する為に多少キツくても岩場の道を歩いているが、途中には斜面が急である場所や、足場が悪い場所などがあり、移動するだけでも大変な思いをしながらクロノは歩いているが、フィリアはそんなのお構いなしといった感じでひょいひょいと、軽い足取りでどんどん突き進む。

「クロノちゃん! 早く早く~」

「待ってください~」

 

 その後も順調に進み続けて二人がようやく目的地に着いたのは、ちょうど日が傾き始めたころであった。

 

 クロノは目的地に着くなりすぐに拠点の準備に取り掛かった。体は疲れていたのだが、クロノ自身がこのような作業に慣れていた為、率先してクロノが拠点づくりをしており、やることがないフィリアは周辺の散歩へと出かけていた。

 

 順調に作業が進んだおかげで何とか暗くなる前に拠点が完成し、現在は散歩から戻って来たフィリアと夕食を取っている。


「ん~。今日も美味しいわ。クロノちゃんは本当に料理も上手ね」

「ありがとうございます。そういえば、この辺りを見てみてどうでしたか?」

「この近くは、水源が多いみたいでいろんなところに水辺があったわ」

「それだと、温泉とかもありそうですね」

「うん。たぶん温泉もあったと思うよ」

「え⁉ 本当ですか!」

 

 クロノの目が一瞬にして輝く。


「あとで、場所を教えるから楽しみにしていてね」

「はい!」

 

 その後、食事を終えてから、暗い足元を照らしながら慎重に進むと、水が流れ音と若干の周囲の匂いが変わってくるのを感じると、


「うわー! 温泉だ!」

 

 クロノは、はしゃぎながら温泉に近づきお湯を手で掬いその温もりを感じる。

 

 その温かさは手をじんわりと温め心地がよい。


「フィリアも触ってみなよ。温かくて気持ちいいよ!」

「え、ええ。そうね」

 

 フィリアはぎこちなくお湯に触れ、そしてゆっくりとお湯を掬う。


「あったかい……」

 

 その温かみに感動するような声を出す。

 

 どうやら、フィリアも気に入ってもらったようだ。

 

 さてと、それならば次は入浴といきましょうか。

 

 幸いにも、周りはお湯の音が聞こえる程静かだし、周りも開けていて確認しやすいのでモンスターの奇襲にも対応出来るだろう。


「フィリア、先に済ませちゃっていいよ。僕は見張りをしているから」

「えっ? 入る? この中に?」

「……もしかして、こういう温泉初めて?」


 こくん、と頷くフィリアを見て、その仕草と表情から本当に入ったことがないらしい。 

 

 思い返してみればさっきからフィリアは慣れないような言動があったような気がするけど、初めてということは、こういった温泉を堪能して好きになってもらえれば、僕としても嬉しい。


「それなら、入り方を教えるから……と言ってもお風呂に入るのとほぼ同じだよ。それに温泉には色んな体にいい効能があって体にとってもいいんだよ」

「体にいい効能があるの⁉ それなら入らない訳にはいかないわね! それにお風呂と入り方が一緒であれば、同じように入ればいいんでしょ!」

 

 そう言うと、フィリアは急に服の端に手をかけて服を脱ぎだし始める。


「ちょっ、ちょっと待って! 僕があっち行くまで待っていて!」

 

 クロノは慌てて、岩の後ろに隠れてフィリアの体を見ない様すると、フィリアの服が落ちる音が終わると、ちゃぽんと音がしてからフィリアがお湯の中に入る。

 

 深さはそれ程ない温泉なので、体を浸かるには体をそれなりに倒さなければならない。


「気持ちいいわねー。やっぱり温泉ってすごくいいかも」

「気に入ってもらって良かったよ」

 

 フィリアはお湯を掬いながら体にかけると、じんわりと温まり心地よい。

 

 欲を言えば、もう少し深さがあれば体が全部浸かれるのだが、胸が大きいというのはこういったところでは少し不便であると思うのであった。


「ねークロノちゃん。あの屋敷にも温泉があればいいけど、作れないかなぁ」

「さすがに作るとお金もかかるし、それに借りている家だからそれは出来ないかな」

「そういえばそうだったわね」

「でもアクアミラビリスには温泉がいっぱいあるからどこかに入りに行けばいいんじゃないかな」

「えー。私、他の人がいるところ嫌だなぁー」

「そうしたら、貸し切りの温泉もあったからそういうところに行けばいいんじゃないかな」

「まぁ、貸し切りならいいかな」

 

 それでもフィリアのことだから家の庭に温泉を作ろうとか言い出しかねないので、そう言った時の為に保険で言っておいたほうがいいと思ったクロノであった。

 

 しばらくの間、温泉に浸かっていると体も充分に温まったので、フィリアはぽたぽたとお湯を垂らしながらクロノと交代する為に温泉から出る。 


「クロノちゃん、終わったから次どうぞ」

「あっうん。ってええ⁉ まだ、フィリア服着てないじゃないか⁉」

「そのクロノちゃんの反応が見たくて、わざとしてみました! どう? 興奮した?」


 と言っても体のほとんどは岩で隠れているので見えないのだが、クロノとしては興奮するというより先にフィリアの事が心配になり、


「本当にフィリアはそういうところを気にしないと襲われちゃうよ」

「まさかの説教⁉ まぁいいわ。私も湯冷めする前に着替えるわね」

 

 するすると音がしてしばらくすると、着替え終わったフィリアが顔を覗かせる。


「クロノちゃんどうぞ」

「うん。ありがとう」

 

 僕は服を脱ぎ、体を洗い温泉に浸かって充分に体を温め終えてからフィリアの方に行くと、


「あっ! 終わったの?」

「うん。待たせてごめんね」

「平気よ。私もクロノちゃんと同じで温泉に入っている姿を妄想していたから」

「してませんし、一緒にしないでください!」

 

 いつもと同じようにからかって笑うフィリアに、目を細めて口を尖らせているクロノであったが、温泉のおかげで心も体も楽になったのは間違いない。またクロノは火竜を討伐を終えたらアクアミラビリスにある温泉にも行こうと思うのであった。


最後まで読んでいただきありがとうございます! 

引き続きブックマーク、評価、感想をお待ちしております!

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