あれ? どうしたの?
ここから三章が始まります。
早速リフィアの手配により、クロノ達は急遽ヴィゼン王国へと向かうこととなり、今はクロノの部屋に、フィリア、セラ、イフルを含めた四人が集まっていた。
「こうして四人みんなで集まるのも二日ぶりぐらいだね」
「そうですね。アルチベータとの戦いが終わってからは、皆さん傷を癒すなど、各々ですることがありましたから、こうして集まるのは久しぶりですね」
イフルは、薄っすらと笑みを浮かべながら、返事をするが、残りの二人は部屋に来た時から、ずっとうつむいたままであった。
その二人に対してクロノとイフルは視線を送るが、二人はそのまま微動すらしない。普段であれば今頃騒いでいるぐらいなのに、二人共一言も発さないとなるとそれは、それで不気味である。
「セラさんがこのようになった事情は知っていますが、まさかフィリアまで、このような状態になっているとは思っていませんでした。クロノ様は何か事情を知っていますか?」
イフルの問いかけにクロノは、苦笑しながら答える。
「逆に僕は、フィリアがこうなってしまったことに、心当たりがあるけど、まさかセラまで、フィリアみたいになっているとは思っていなかったよ」
恐らくフィリアが、こうなってしまったのは、昨日の夜のことについてだと思われるが、その事については僕の責任もあると思っている。
あの後、寄り添うようにフィリアと一緒に寝てから目を覚ますと、すでにフィリアは、僕の部屋からいなくなっていたが、枕にフィリアの赤い髪が落ちていたことから、どうやらあの出来事は夢ではなかったようだ。
くわぁあと、あくびをしてからゆっくりと体を起こし、ベッドに座りながら、朝日に照らされた静かな部屋の中でクロノは、フィリアとの夜の出来事を思い出し、改めてあの夜の出来事を振り返っていた。
フィリアには刻印修復が必要だったとはいえ、その最中に恥ずかしい思いをさせてしまったし、あの乱れた姿だって僕が起こしてしまった事故のようなものなので、なぜフィリアがあのようになってしまったことについては、いくつかの理由を考えてみたが、どれも可能性があるだけで、確信まではどれも持つことが出来なかった。
この部屋にフィリアが来たのも、イフルさんが呼びに行こうとする直前だったし、一人で部屋にやって来たとはいえ、来た時にどこかよそよそしい態度と仕草に、僕は胸の内に、もやもやを感じたが、この場ではフィリアのことも考えると聞くことも出来ないので尚更もやもやする。このモヤモヤを晴らす為にも、詳細をどこかで二人きりになれた時にでも聞くとしよう。
そして、フィリアよりも驚いたのは、セラについてだ。
セラとも久しぶりに会ったのだが、出会う前に知っていたのは検査も順調に終え、異常がないとだけ聞いていた為、何事も無くて良かったと思っていたが、イフルに連れられて部屋に入って来た時のセラの状態には驚いたし、どうしてこうなってしまったのか見当がつかないし、言葉かけることも出来なかった。
また、その事情を知っているイフルが、クロノがセラに対して困っていることを部屋に入った時から察しており、その事からやはり伝えておくべきとだ思い、小さな声でセラに話してもいいか確認をとる。
「セラさん、クロノ様に事情を説明してもいいですか?」
セラは虚ろな表情で、小さく口を開いて答える。
「う……うん。あ、やっぱりセラが……ごめん。おねがい」
セラは言葉が出なかったのか、イフルに向かって、どうぞと力ない手を差し出す。
「では、セラさんに代わりまして説明させてもらいます。全部話すと長いので、今は短く話しますね」
「セラいいの? 辛かったら無理しなくてもいいんだよ」
「クロノ様にも……知っておいてほしいから、聞いて……下さい」
「では、セラさんもいいと言っているので話しますね」
「うん。おねがいイフルさん」
クロノはイフルの話に耳を傾け、イフルはすぅと息を吸って話し出す。
「あれは、セラさんが検査から戻って、私が偶然出会った昼食前のことでした」
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