次の目指す場所
「クロノよ。本当に邪魔して悪かったのう。クロノが男になる瞬間を見届けるのは神としても良かったのじゃが、やはり今子供を作られると困るのでなぁ……。もう少しの間、こういう行為は、抑えてもらえると助かるのじゃが」
リフィアは複雑そうに心境を語っているのだが、クロノにとって全ての言葉が心に突き刺さり今にも飛び出してしまいそうだった。
「リフィア、お願い! もうやめて!」
クロノはフィリアから離れて正座をしながら、これ以上言わないように懇願すると、リフィアも珍しくすんなりと受け入れる。
「そうじゃな。この内容はわらわにとっても、扱いにくいし、あまりいじれる気がせぬ」
リフィアにとっても扱いにくいとなると、この事はなるべくお互いに触れないことが一番であると二人は察していた為、これ以上この話題は話す事はなかった。
しかし、急にフィリアはどうしたのだろうか。初めたばかりの頃は、問題が無さそうだったが途中からおかしくなったし、イフルの時は何事もなく修復が出来たのにフィリアの時だけこうなってしまったのは何故だろう。
「リフィア、もしかしてこの刻印修復の能力って、フィリアみたいになることが普通なの?」
「それは無いと思うが、まぁフィーちゃんがこのようになったからには、なにかあったのは間違いないじゃろう」
「そうなると、それはそれで問題があるような」
これから修復するたびに、このような事になるならば、修復をする時にはお互いに覚悟が必要となるだろうし、そうなるとフィリアの性格から予測できる事案がいくつか浮かんできてしまうので、その時点で問題ありだと思われる。
「なら、フィーちゃんに直接聞いてみるか? その方が早いじゃろうし」
「聞きづらいからやめておく。それよりも、この使徒の力って分からないことだらけで、僕ももっと理解を深められることって出来ないかな」
「ほう。それならまだ、出来ることがあるぞ」
「本当に⁉ どうすればいいの?」
「それはもちろん。クロノよりも使徒歴が長い者に教えてもらえばいいのじゃ」
「使徒歴って……、あれ、リフィアって僕以外に使徒にした人いたっけ?」
「いるわけないじゃろう。わらわの使徒はクロノの一人じゃ……ってクロノよ、そんなに顔を緩ませてどうしたのじゃ?」
「いやー、一人だけって言われるとやっぱり嬉しいなぁ~って思って」
「その代わり責任重大な位置におるけどな」
「急に重たく感じたよ」
「だからこそ、先輩使徒から多くを教わって来るのじゃな」
「そうするよ。それで、その使徒さんはどこにいるのかな?」
「そやつははラグナロク第二学園があるヴィゼン王国におるのじゃ」
「ラグナロク第二学園って、ヴィゼン王国っていうところにあるのかぁ。それでそこにいる使徒さんに会えばいいんだね」
「さよう。そしてクロノも直接、冥獄凶醒について情報を提供すれば、お互いに利害が一致するじゃろうから問題ないじゃろ。さて、手続きはわらわがしておくから今日のところは、フィーちゃんに何かかけておくか履かせてから休むのじゃよ」
「分かっているよ。それじゃリフィア。手続きよろしく」
「任せておくのじゃ。それではさらばじゃ」
リフィアは扉を出現させると、その奥へと帰ってしまい、急に静かになった部屋で、今もフィリアはその綺麗な体を晒しており、このまま冷えてしまって風邪でもひかれたらこまるので、クロノは毛布をフィリアにかけてあげてから、ゆっくりとその隣に座り、フィリアの艶やかな赤い髪を優しく撫でながら、その心の中にある想いを呟いた。
「こうして、フィリアといられるのも生きて帰って来られたからなんだよね。正直僕はあの時死んだと思ったけど、こうしてフィリアと一緒に居られて嬉しいよ。次も大変そうだけど僕も頑張るから、フィリアも助けてね」
今もすやすやと寝息を立てて寝ているフィリアの表情は、とても愛くるしいものであり、見ているだけで心が安らいだ。また、リフィアとの話合いで漲っていた気持ちも落ち着いたのか、今ではあくびが出てしまう程であった。
クロノはフィリアにベッドを譲って、床に丸まって寝ようかと思うと、フィリアに腕を掴まれていたことに気づく。
「ク……ロノ…ちゃん。むにゃむにゃ」
夢の中でも僕がいるのか寝言で伝わり、それならば、ということで、今日は一緒に寝させてもらおうと毛布の中でフィリアと隣り合って一緒に横になると、クロノはゆっくりと瞼を閉じて眠りにつくのであった。
☆
「それで~リフィアしゃんは、クォンしゃんに~、そのクロノしゃんを合わせたいんだね~」
「そうなのじゃ。急にやって来て申し訳ないのじゃが、サリメナも協力してくれるか?」
「いいよ~。冥獄凶醒の情報も欲しかったし、クォンしゃん達が更に強くなるなら、なおいいよ~」
「感謝するのじゃ。サリメナに断られたら残るはあ奴しかおらんかったから、受けてもらえて助かったのじゃ」
「うんうん。分かる~分かるよ~。あいつは、面倒だから関わりたくたくないもんね~」
「本当にそうじゃな。では、こちらも準備をしておくからサリメナも受け入れ準備をよろしく頼むのじゃ」
「わかった~。でさ、リフィアしゃん。ちょっといいかな~?」
「なんじゃ?」
「その、クロノしゃんって男の子?」
「そうじゃが、どうかしたのか?」
「ううん。なんでもないよ~、それじゃ、待っているよ~」
「頼んだのじゃ」
リフィアは首を傾げていたが、目的通りラグナロク第二学園に向かえるようになったので、すぐに移動をさせるためのお告げをするために、リフィアは急いでその場を去る。
「むふふ~。男の子かぁ~。どんな子だろう。楽しみだなぁ~」
残ったサリメナは、おっとりとしていながらも、神として威厳を持っており、その心中にある計画を静かに口にしながら、怪しくその目を輝かせるのであった。
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