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冥獄凶醒としての意地

 

 瓦礫から姿を現したアルチベータは自身を吹っ飛ばした、突然現れた存在とそれに跨るクロノを目視しようとしたその時、予想以上の速さで、一気に駆けてくるその二体に慌てて防御態勢を取るが充分に整えることが出来なかった為、迎え撃つよりも先に、体が勝手に回避を選択し、攻撃を避けることが出来たのだが、この事がアルチベータのプライドを大きく傷つけた。


「くそ、避けられたか。でも、次こそやれる」

 

 クロノは、もう一度構え直し、雷麟の手綱を操縦しもう一度挑攻撃に駆け出たクロノに対してアルチベータは、自分でもなんとか聞き取れるぐらいの声で、もごもごと呟いていた。


「私は……冥獄凶醒アルチベータ。力を手にした物のみが名乗れるその冥獄凶醒の一人。それなのに、矮小な小僧一人に翻弄される愚かさ。実に滑稽……」

 

 アルチベータは呵呵大笑し、その笑いが止むと同時に、八つ全ての目を不気味に輝かせながら力を溜めた。


「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼」

 

 その声と共にアルチベータの体は肥大していき更に大きさを増していき、クロノと再度衝突するその瞬間が刻一刻と近づいていた。


「覚悟しろ! アルチベータ‼」

「消え失せろッ! 紅糸縛綻(こうしばくたん)‼」

 

 アルチベータは六本の両腕から赤く染まった糸を張り巡らし、クロノを絡めとろうとするが、雷麟が放つ電撃がそれらを全て防ぎ、クロノは絶好の位置に辿り着くと、数発の斬撃を飛ばし、いくつかのその両腕を斬り落としていき、最後の一振りでアルチベータ本体を斬りかかる。


「終わりだ‼ アルチベータアァァッッ‼」

「クソがッ! クソガァアアアアアアアッッ‼」

 

 アルチベータは残った左腕二本を振るって必死に抵抗しようとしたが、クロノの勢いは収まらず、その身体を大きく斬りつけられ、鮮血があふれ出す。


「アアアアアアアアアアアアアッッ‼ イタイ、イタイイイイイイイイイイイッッ‼ ガアアアアアアアアアアッッ‼」

 

 クロノは仕留め損なうと、すぐに、雷麟を振り返らせもう一度攻撃に転じ、アルチベータはそれでも防ごうと残った腕で糸を張り巡らせるが、やはりそれだけでは足りず、雷麟(らいりん)と電撃共に疾走するクロノが持つコクウに肩を突き刺され、抵抗をしても屋敷の外に出てしまうが、その瞬間を逃さずに柱に糸を伸ばして何とかコクウから離れるがその身体は既にかなりのダメージを受けており、満身創痍であった。

 

 それでも、アルチベータは冥獄凶醒としての誇りを胸に逃げることをせずに自身を奮い立たせる。


「私は……私は! 冥獄凶醒アルチベータ! その力は他よりも優位であり、絶対である。だからこそこのような振る舞いはあってはならいいいッッ‼」

 

 アルチベータは両腕を振り上げ最後の必殺技を繰り出す。


終締緋紅(しゅうていひこう)‼」

 

 アルチベータの両腕から放たれた目視できるほどの赤く染まった糸が周囲に放たれ、触れた場所を破裂させ、周囲の木々は瞬く間に燃え上がる。

 

 だが、クロノはこの戦場により無意識で使徒の力を限界まで引き出し、するするとアルチベータの懐まで近づき、その残り全ての腕を斬り落とし、アルチベータの核を目視するとコクウを突きつけて破壊しようとしたその時、


「待って! 最後の頼みよ。……せめて楽に殺してくれないかしら」

 

 始めの頃から信じられないほどに弱りきったアルチベータの、最後の願いを聞き入れるとクロノは静かに頷き、剣を振りかぶるその時だった。


「甘いわねぇ」

 

 アルチベータの身体から高速で放たれた針状の糸が、一瞬にしてクロノの心臓部分を貫いた。


「がっ! ごはッ⁉」

 

 その口からとめどなく流れる鮮血に、思考が追いつかず足がふらつき、膝から崩れ落ち、うずくまると、体中心から伝わる高熱と激痛にもがき苦しみ続けた。


「哀れねぇ。敵の願いなど私のようなものもいますから、つい聞くものではないですよ。その姿からして私がトドメをさす前に、つい死んでしまう事が残念ですが、あなたの死体は、簡単に処分しませんよ‼」

 

 クロノはアルチベータの声などすでにほとんど聞こえない状態であり、今も必死に使徒の力を使って自己再生を試みようしているのだが、力が上手く使えず、次第にその手の感覚も分からなくなり、急に寒く感じると、同時に初めてイフルと戦ったあの時を思い出していたが、あの時状況とは全く異なり、次第に霞むその意識の中でも必死に生きようと使徒の力を使うが、目の前が真っ黒に染まり、クロノは何も感じられなくなるのでなった。



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