その名は雷麟
「ふふっ、ははははははは‼ 急に何をいきっているのか知りませんが、あなたはこれで全ての機会を失いましたわ。もう、これ以上は許すことが出来ない。ああ、あの二人もセラさんも私が直々に出向いて連れだすとしましょう」
アルチベータはクロノ対して興味を失い。ただただ、打ちのめすことを選択するのだが、クロノはその選択など気にすることもなく、コクウを強く握り攻めに出た。
「話はもういい! いくぞ! アルチベータァァッ‼」
「かかって来なさい! 返り討ちにしてあげますわ!」
アルチベータは三本の右腕を振り上げると、勢いよく振り下げたが、クロノは右腕を振り上げた時点で見切っていた。
この時クロノは見切ると同時に更に速度を上げて、これから来るそれに対して、真っ向から速度で挑んだ。
速度を上げることにより、体にかかる負担をコントロールして狙った位置まで接近し、攻撃の手段を見切っているクロノは一気に使徒の力を爆発させ、一点を狙って切りかかるのに、対してアルチベータは右腕を振り降ろした後すぐに、残りの左腕を振るう準備を整えようとしていた。
そして、その地点に到達した瞬間が、まさにお互いの攻撃の最も重要な時を迎える。
「ハアアアアアアアアアアッッ‼」
「消え去りなさいっ‼」
クロノとアルチベータの攻撃はほぼ同時に激突した。
だが、この時点でクロノはコクウにぶつかる重い攻撃を、コクウの中心で捉えることによりアルチベータの攻撃を自身に当てることなく、勢いを残したままアルチベータに突撃する。
「うぉおおおおお!」
「な、何⁉」
クロノは力を振り絞ってコクウを振り抜き、アルチベータはその行動を予測していなかったのか、準備をしていた左腕の攻撃が遅れ、クロノの攻撃を抑えることが出来ず、押し切られる。
「グアアアアアアアアッッ‼ このクソガアアアアアア!」
アルチベータは切られた個所を手で押さえながら、クロノを憎悪し睨みつけた。
「よし、一撃は与えられた。……でも、あまり意味はないか」
アルチベータに与えた傷は少しずつ修復しており、ただ攻撃を与えるだけでは効果をあまり望めない。
やはり狙うとすれば、ヴェドの時と同様に核を狙うことになるのだが、その場所を突き止めるには、そう簡単にはいかないだろう。
もう一度、核を狙って攻撃する構えを取るが、アルチベータの死角はそれほど多くは無い。それに修復を終えたアルチベータは、ゆっくりとその口を開いた。
「あなたから攻撃は確かに受けましたが、今の攻撃でトドメを刺せなかったことで、私を倒す機会を完全に失いましたわよ」
アルチベータの口調からは先ほどまであった余裕が一切感じられなくなっており、最初に受けた技以外に他の技があるとするならば、またしても次の攻撃に出るまでには時間を要してしまう。
クロノもこの事に、再度思案しようとした時、クロノ達がいる場所を照らす、稲光が突然発生し、その瞬間目を一瞬閉じてしまったその時、何かがクロノのすぐ隣を走り抜き、すぐに目を開いた時その何かがアルチベータを蹴り飛ばした。
「ぐがっ!」
不意を突かれたアルチベータは勢いよく壁へと衝突し、瓦礫の下敷きとなると、ゆっくりと蹄鉄の音を鳴らして近づくその鉄馬をクロノは見つめた。
「おまえ、もしかして」
今もその鉄の身体に電撃を纏わせ、クロノを見据えるように見下ろすその姿に見覚えがあった。それはセラが所持していた馬によく似ていることであった。
「聞こえますかクロノ様!」
「その声もしかしてセラなのか⁉」
「そうです! セラです! クロノ様。説明は後でしますから私からの力である雷麟を使って、勝って下さい!」
雷麟は、ゆっくりとその首を下げ、乗れと言わんばかりにクロノに視線を送ると、クロノはその胴に跨り銀の鬣を撫でる。
「行くよ。雷麟」
「ブルルァァァアアアッ!」
クロノの意思と共に、瓦礫からその姿を現したアルチベータ目掛けて駆け出した。
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