褒めたって嬉しくないんだからねっ!
次の日、昨日の話通り今日はフィリアの友達の情報を得る為に、アクアミラビリスにある教会に来ている。
教会の中は関係者しか入れないので、シスターであるフィリアだけが現在中に入っている。そして残ったクロノは、噴水の近くで戻って来るのを待っている。
教会の近くはほとんど人がいないので、噴水から流れる水の音がよく聞こえる程静かである。
そしてクロノはやることも無いので、うとうとしていると、
「少年。すまんが、手を貸してほしいのであるが」
急に話かけられ驚いて目を覚まし、前を見ると話かけて来たのは、僕よりもずっと大きな男の人だった。
「えっと、手伝いって僕に言っていますか?」
「そうである。少し手を貸してほしいのである」
服装からしてモンクだと思われるが、体つきがかなりごつく、見えるところだけでも、筋骨隆々である。
そんな人が手伝って欲しいと言っているが、手伝ってくれと言われたからには、出来る限りのことはしてあげたい。
「一緒に来ている人が戻るまでならいいですよ」
「かたじけない。早速であるがこっちに来てもらえるか?」
案内された場所は薄暗い倉庫で、あちらこちらに多くの箱が積まれていた。
「うわー。いっぱいありますね」
「うむ。このままだと、時間内に終わらないと思って少年に手助けしてもらおうと思ったのである」
「他のシスターとかには、手伝ってもらえないのですか?」
「他のシスターや、モンクは割り当てられた仕事があるので、それらを優先にやってもらわないといけなのである」
「つまり、誰も手伝ってくれないということですね」
「その通りである。我も時間さえあれば、一人で出来るが主が早めに入れろと言ったからには早く入れないといけないのである」
「そうしたら、早めに入れてしまいましょうか」
「うむ。そうしよう」
「あっそうだ。名前を聞いていなかったね。僕はクロノっていいます」
「我は、アーロンである」
「それじゃ、よろしくアーロン」
「こちらこそよろしく頼む」
お互いに挨拶を終えて作業に入る為に、クロノは現在許可をもらって教会内部に入れてもらっている。
アーロンはこの教会でも偉い人なのか会う人に挨拶をされており、クロノに関してはシスターやモンク達に不思議そうに眺められた。
運んで来た荷物が置かれている倉庫に案内されるとそこには更に大小様々の荷物が積まれており、アーロンは運び終えた後に整理をしなければならないと言っていたが、その量は確かに一人でするには多いと思えるほどであった。
「では、クロノ。これをそっちに入れてももらっていいであるか?」
「こっちですね……よいしょ」
クロノは狭いところに体を潜り込ませながら荷物を整理していき、アーロンが基本的に大きな荷物を動かして、アーロンが作業をしにくい場所は背の低いクロノが体を上手に使いながら順調に作業を進めていくと、順調に片付けが進みすべての荷物が所定の場所に収まるのであった。
「これで終わりですね」
「ありがとうクロノ。これで主も喜んでくれるのである」
すべての荷物を片付け終え、二人が倉庫から出るとちょうどそこに、
「あっれー。なんで、クロノちゃん中にいるの?」
「ちょっと手伝いをしていて、アーロンに中に入れてもらったんだ」
「へー。クロノちゃんらしいわね。というかアーロンも久しぶりね。元気してた?」
「我はいつも変わらないのである」
「そうねー。その口調も相変わらずよね」
フィリアもいつも通りの話口調でアーロンと会話をしており、そしてクロノはフィリアの隣にいる女性を見た。
「アーロン。荷物の移動ご苦労様。さすがの君でも一人ではあの量は厳しかったかな」
「主が早くというのでクロノに手伝ってもらったのである」
「そうか、クロノ君と言ったかな。私はメイオール。ここの教会の司教をしているよ」
「司教ということは、あなたが、フィリアが言っていた司教さんなんですね!」
メイオールさんは、大人の女性といった感じで、とても落ち着いた雰囲気醸し出している。
クロノはこの時無意識にフィリアもこれくらいおしとやかであれば、もう少しいろいろと上手く出来るのになぁと思ってしまうと、
「クロノちゃん。何か言った?」
「何も言っていません」
フィリアがにっこりと笑いながらクロノを見る。どうやらうっかり、フィリアのセンサーに触れてしまったようだ。本当に敏感なんだよなぁ。気をつけないと。
「それではフィリア。さっきも言った通りあの事よろしく」
「わかったわよ。……ねぇ、メイオール。ちょっといいかしら?」
「なんだいフィリア?」
司教様ですら呼び捨てにするフィリアに、思わず僕が心配してしまうが、言われた側であるメイオールは特に気にしていないようなので、クロノは一人で安心するのであった。
「あの件にクロノちゃんも連れって行ってもいいわよね」
「私は構わないが、彼はいいのかい?」
「私がいるから平気でしょ。それにクロノちゃんは、それなりに強いからきっと役に立ってくれるわよ」
フィリアが、珍しく僕の事を褒めてくれたので、思わず照れてしまったが、気づかれない様に顔を隠した。でもそのにやけは顔を隠している間にも止めることは出来なかった。
「私は別にいいが、とにかくさっき言った物さえあれば、きっとさらに目的に近づくだろうから、フィリアの為にも頼んだよ」
「分かっているわよ。私だって急いでいるんだから!それじゃ行って来るわね」
そう言ってフィリアはクロノの手を取り、教会の出口へと向かって行く。
「ちょっ、ちょっとフィリア!ああ、ええっと、お二人共またお会いしましょう!」
クロノも何とか二人にお辞儀をして教会を出る。
「フィリア、これからどこへ行くの?」
「それは、着いてからのお楽しみよ!」
「いやそれって僕にとって一番不安なやつなんだけど」
「いいから、いいからシスターの私がいれば、すべて平気なんだから!」
「まぁそれなら、それでもう、いいかな」
クロノはフィリアが受けた依頼には不安があるが、この時のクロノはそれを上回るほど何でも出来るような気がしていた。
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