探り見極め
アルチベータは元の面影が見られない姿へと変貌を遂げ、今もなお、その身体を変化させている。
「お前たちは私の全てを奪った。ここまで多くの時間をかけて築き上げたものを破壊し尽くしてくれた‼ この恨み。死では償いきれんぞ‼」
アルチベータは八つの赤く染まった目を全てクロノに向けて、その姿をとらえ続け、ゆっくりとその巨体を動かし始めた。
「先に奪ったのはお前だろ! アルチベータ!」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ…………ダマァアアアアアアアレレレレエエエエエエエエッッ‼ 五月蠅い! 黙れ! ほざくな! 私がようやく手にしたものを奪った奴に言われる筋合いはない‼」
アルチベータは口にする言葉全てに憎悪が入り混じり、眼前のクロノを忌み嫌いながら、爆発寸前までに怒り狂っていた。
すでにその姿は人型ではなく最早モンスターと何も変わりが無いほどとなっており、今も六本の刺々しい腕と、二本の後肢となる剛脚を使ってその巨体を支え、歩みを進めその六腕の一つを振り上げクロノに向けて振り下ろすが、クロノはこの一撃を後方では無く右側へ跳躍して回避する。
「くっそ。でもまだだ」
すぐにその腕が振り降ろされた方を目視すると、振り下ろした先には一直線に伸びる傷が床に刻まれており、その傷は天井にも存在することからアルチベータの攻撃は一撃とは別の二撃目が存在することが明らかとなる。
クロノは更に確かめる為に、コクウを握るその手に使徒の力を込めると、剣へその力を纏わせ、増幅させると、剣を振るってアルチベータへ向けて斬撃を放つ。
高速で放たれた斬撃は正面に対峙するアルチベータに向かって接近するが、アルチベータは回避行動を取ることなく四本の腕で振り払うようにしてかき消されてしまう。
クロノはその後の追撃はすることなく更に距離を取って、コクウを構えて次の攻撃を思案する。
「あはははは。何も効きませんわ‼」
クロノはその挑発を聞き入れることなく思案を続け、考えをまとめようとするが、アルチベータは言葉を投げかけても返事が無くつまらないと感じた為、攻撃に出る。
「黙っているなら、次はこちらから行きますよぉぉぉおおおおおお‼」
アルチベータはクロノへ急接近し、三本の右腕を振り上げ、クロノはその行動に対し迎え撃つのではなく、とにかく距離を取ることに集中したが、アルチベータは気にせず勢いよく叩きつけるように振り下ろすと、一直線に床が割れたが、クロノはその攻撃を予め予測しており、上手く回避する。
「あっはははは! まだまだありますよ!」
すぐにアルチベータは、残りの左三本腕で薙ぎ払うように腕を振ると、高速で何かがしなるように近づいていたが、クロノは自身が立っている位置からでは回避が出来ず、コクウで迎え撃つが、その勢いに負け壁へと吹き飛ばされる。
「おやおや、つい、やりすぎてしまいましたか?」
煙が立ち込めるその場所を、眺めていたアルチベータだったが、黒い斬撃が向かってきたのを弾き飛ばし、その先を見た。
「くそ、一発受けてしまったか……」
クロノは今も痛む左の腹部を手で押さえながら、アルチベータを睨みつける。
「まだ、死んではダメですよ。あなたにはまだまだ、生きてもらわねばなりませんから」
アルチベータは余裕の口調で話せるほどにまでになっており、クロノはその姿を見て傾向からの考察を終えて、結論を信じて戦う覚悟を決める。
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