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コロンとフィリア


 屋敷の中に入り玄関から見える範囲では、屋敷の中は装飾が慎ましくされており、豪華とは到底言えるものではなく、全体的に森にいた時と同様に薄暗いのだが、中へ入ると森にいた時のざわめきが無くなり、静寂が感じられた。

 

 また灯りが灯せそうな装飾も壁にはあるのだが、コロンとメレルは、それらに灯りを灯そうとせず、そのままコロンが持つ、心もとない灯りをこれから進む方に向けながら、部屋へと案内される。


「では、この部屋で報酬をお支払いしますから、みなさんはここでお待ちください」

「ええ分かったわ」

「では、報酬を取りに行ってきます。行こうかメレル」

「うん」

 

 メレルはコロンに手を向けて、コロンはその手を取って部屋を出ようとした時だった。


「ちょっと待ちなさい。あなた達どこへ行くの?」

「報酬を払う為にリグを取りに行こうと思っていますけど、何かありましたか赤髪のお姉さん?」

 

 コロンはにこやかな笑顔で対応しているが、フィリアは懐柔されることなく、冷たい口調で尋ねる。


「ええ、あるわよ。こんな怪しい屋敷で私達だけ残されるなんて、何か余計なことを考えてしまうじゃない」

「そうですか。僕なら報酬を取りに行くんだなーぐらいにしか思いませんが、何か不安があるのですか?」

 

 コロンは表情を変えずにフィリアに返事をして、フィリアもその答えに、ふん、鼻をならし椅子へ腰を下ろして足組んで言い放つ。


「だったら早く持って来てちょうだい。あと、ここの主にも連れて来るのよ」

「善処しますよ。それじゃ行くよ。メレル」

「うん」

 

 そう言ってコロンとメレルは部屋を出て行くと、部屋の中は再び静寂となり、その静けさに耐え切れなかったのか、イフルがその重い口を開いてフィリアに向かって問いかける。


「フィリア、あの……」

 

 その次の言葉が発せられる前にフィリアはイフルを睨みつけ、イフルは一度わざとらしい咳をして、言い直す。


「フィリア姉さま。あの二人遅くないでしょうか?」

「そうね。でもここに来たからには、待つしかないでしょう」

 

 ここまで来たからには後戻りは出来ないでいる三人は、コロンとメレルが戻ってくるのを待ち続けたが、一向に戻ってくる気配がなく、さすがに遅すぎるのではないかと思った時、その扉が開かれる。


「みなさん。お待たせしてすいません。ちょっと準備に手間取りまして」

 

 部屋に戻って来たのはコロンだけで、その手には小袋が握られていた。


「あの、小さいのはどうしたの?」

「ああ、メレルですか、メレルなら今はちょっと手が離せなくて」

 

 コロンは愛想笑いを浮かべながら、フィリア達と向かい合うように椅子に座り、頭に手を当てて申し訳ないといった感じで述べてから、机の上に持っていた小袋を置くと、すっとフィリアの手が届く位置まで押し出す。


「この小袋の中には十万リグが入っていますので、確認お願いします」

 

 コロンはフィリアの目を見ながら、確認を促しフィリアは小袋を掴んで中に入っているリグを数えると確かに中には総額十万リグが入っていた。


「確かに確認出来たわ」

「それは良かった。それじゃ、クエストはこれで終わりということなので、ブラックスターさんはいただきますね」

 

 コロンは椅子から立ち上り、クロノの下に寄って右肩に手を置く。


「では、ブラックスターさん。セラが待っているのでお相手よろしくお願いしますね」

 

 コロンは小さく何かを呟くように唱えると、クロノは一瞬にしてその場から消え去った。

 

 その瞬間を見ていた二人は声を何とか押し殺していたが、コロンの視線は二人に向く。


「あれ? お姉さん達。何も言わないのですか?」

 

 コロンは首を傾げ、二人の取った行動に疑問を抱いていた。


「何か私達が言うことでもあるの?」

「そうですわ。別に依頼を終えただけでその後は別の話ですわ」

 

 二人は同じような口調でコロンに向かって言い放ち、コロンはその行動に唸りながら、額に手を当てて座っていた椅子へと座り直す。


「あっれー。おかしいなぁ。お姉さん達、ブラックスターさんの仲間じゃないの?」

「どう見たらそう見えたかしら?」

 

 フィリアは変わらず冷たく強い口調で、コロンに言い返し、その言葉にコロンは少しの間押し黙り、うつむきながら口を開く。


「ふーん。まだその調子で話すんだ。赤髪のお姉さん」

 

 コロンが言い終えて顔をあげると、何かを感じたフィリアは足で机を蹴り上げ、縦になった机に矢が突き刺さり、地に落ちたリグが床にはじけるようにばら撒かれると、机は再びフィリアの方へと戻ろうとしたが、今度は勢いよく机を前蹴りし、コロンに向かって吹っ飛ばすが、コロンはその拳で机を粉砕する。


「あーあ。やっぱりこうなっちゃうのか」 

 

 コロンは残念そうにフィリアを見つめ、右手を挙げるとその隣にメレルがその身丈ほどの大鎌を持って現れる。


「お姉さん達。クロノさんことはどうでもいいの?」

 

 コロンはあどけない表情で、二人に向かって問いかけ、その言葉にイフルは、ぐっ、と声を漏らしたが、フィリアは一切動揺せず、コロンの問いかけに返事をする。


「ようやく、本性を出したわね」

「へー。気づいていたの」

「ええ、始めからね。どうせだったら早く門を開けてくれればいいのに、ぐずぐずしているからこちらから呼ぼうとしたじゃない」

「あの時から気づいていたのに、どうしてさっきまでの演技をしていたの?」

「せっかく練習したんだもの。それならやっておきたいじゃない」

 

 フィリアは薄っすらと笑みを浮かべながら、コロンに向かって言い放つ。


「でも、アルチベータ様のことについて反応していたし、お姉さん達はシスターかな」

「そうよ。そしてその冥獄凶醒(めいごくきょうせい)も倒してセラを返してもらうわ」

 

 フィリアは白剣を出現させ手に握ると、それに呼応するようにイフル武器である大鎌を出現させ構える。


「なるほどねぇ。アルチベータ様が言っていた残念な敵がやって来たということか。それなら、僕たちも勝たないといけないね」

「はいじょする」


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