ブラックスター3
とある昼下がりのセドナ王国のギルドでは、いつも同様に活気が溢れており、多くの冒険者で賑わいを見せていた。
「おいおい、北のベルク山脈でレイドアウトブラッドが、出現したって話聞いたか?」
「ああ、俺も聞いたぜ。それで王国は調査をするために兵を派遣したようだが、正直兵達にはかける言葉もないぜ。あそこはレイドアウトブラッドもそうだが、気候がとにかく変わりやすいからな。死人が出ないことだけを祈っておくか」
「まぁな。あ、そういえば今かなりのレアクエストが出ているらしいぞ」
「なんだ。それ? ……もしかしてあれか! ブラックスターとかいう冒険者を探しているとかいうやつか」
「おう。そのクエストが出てから、初心者冒険者達が血眼で探していてよ。仮に成功したとしても成果は全くと言っていいほどにつかないが、報酬がとにかくいいんだよな」
「確か十万リグだったなぁ。正直見つけて持って行くだけで、十万とは俺達も狙いたいところだぜ」
「そうだな。十万もあれば当分はクエストに出なくてもいいし、なんなら女を両手に持って酒を飲むのもいいな」
「がっははははは! そりゃいいな! ブラックスターとやらは愛を育めるらしいし、あとは依頼主がいい人であることでも祈ってりゃいいんだよな」
男達は豪快に声をあげて笑っていると、背中に誰かがぶつかり、その方へ視線を向ける。
「おお、わりぃな」
「気にしなくいいですわよ。それよりも私達今機嫌がいいですから、ねぇ。フィリアお姉さま」
「そうね。イフル。後はこいつを差し出して報酬を頂くとしましょうか」
赤髪の少女は手に握るヒモをグイっと寄せると、頭に紙袋を被せた黒い服装で統一された冒険者らしき者が、くぐもった声を漏らす。
「なぁ、嬢ちゃん達スゲー可愛いな。良かったら一緒に飲みにでも行かねぇか?」
見たところ体つきは二人共抜群にいいし、身なりからしても育ちが良さそうに感じられ、その顔はフードのようなもので覆われている為よく見えないが、フィリアとかいう少女は艶のある赤髪が特徴的で、もう一人の方は金の縦ロールが上品巻かれていることからしてこの二人は貴族か、金持ちの可能性がある。
そうであれば是非お近づきになりたいものだ。
「なぁ、二人共どこがいい? もし希望が無いのであれば、俺達の紹介する店に案内するけど?」
「できれば、そのまま朝まで遊ばないかい?」
この時恐らく二人はゴミを見るような目で男達を蔑んでいただろうが、フードのおかげで見られなくて良かったと思えたのもつかの間で、この男達のおかげで予定が大きく変わってしまう。
「ごめんなさい。実は私達今日はこのブラックスターとかいう冒険者と二人で一夜を過ごしているの」
「な、なに⁉」
「ええ、言葉巧みに私達を誘導して、連れ込んだ部屋で……ごめんさない。これ以上は恥ずかしくて言えないわ」
赤髪の少女は口元に手を当てて、恥じるような仕草をとり、その言葉に反応を示したのか紙袋が、かさっと、音を立てる。
「フィリア姉さま。それ以上はここでは言えませんわ。かくいう私も……慣れていなかったもので、無様な姿を晒してしまいましたわ」
もう一人の縦ロールの少女もこれ以上は、と両手で口を塞いで声を漏らさないようにしており、その予想外の言葉と行動に紙袋がガサガサしている。
その二人を見た男達は目の前にいる紙袋の冒険者に対して罵声を浴びせる。
「てめぇ! ブラックスター! 顔を見せやがれ!」
「そうだ! こんな美少女をもてあそぶなんて羨ましいぞ!」
男達の声に反応して、周りにいた冒険者達も注目し出して、なんだなんだと騒ぎ始め、いつの間にか注目の的になってしまっていた。
「あらら、フィリア姉さま。これはちょっと不味いのでは」
「別に気にすることないわ。クロノちゃんは私がしっかり知っていればそれでいいのよ。それに早くこのクエストを終わらせてもらうものをいただくとするわ」
赤髪の少女は気にすることなく歩を進め、クエスト報告を終えるのであった。
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