秘められた願い事
「セラさん。セラさん。今度はこちらを着てくれないかしら?」
「うん。いいよ! あ、今脱ぐからちょっと待って」
「ああ、それも私がやりますからセラさんはそのまましていてください!」
「そ、そう? そうしたらアルチベータさんお願いします」
「はい。もちろんです。じゃ、じゃあ、万歳をしてくれますかぁ?」
セラは服の両端を掴んで服を脱ごうとしたが、アルチベータの指示により今は、両腕を天井に向けて待っており、アルチベータはその一つ一つの姿に見惚れ続けていた。
「可愛い、可愛いですわセラさん!」
「ありがとうございます。でも腕が疲れるので早くしてくれると嬉しいです」
「ごめんさない。今しますから。うふふふふ。楽しいぃいいですわ」
顔をとろけさせながら、セラとの触れ合いを楽しむアルチベータであり、セラも嫌な顔一つせずにその要望を聞きながら応えている。
「セラもアルチベータさんが喜んでくれるのが嬉しいです」
「まぁ。セラさんは本当に可愛くていい子ですね。本当に可愛くて……あら、つい二回も同じことを言ってしまいましたわ」
アルチベータは、頬に手を当てその視界に入るセラを愛でるように見続け、その全てを余すことなく気にいっており、凶となったセラもアルチベータの喜びこそが、自身の使命となっている。
「アルチベータさん。この服とっても可愛いですね!」
「そうですわね。とっても可愛いですよ」
セラに着せた新しく調達した服はアルチベータと同じ黒で統一された服であり、セラの容姿にとても似合っていた。
「ああ、セラさんが来てくれてから、更に毎日が楽しくて仕方がないですわ」
「そう言ってもらえるとセラも嬉しいです」
セラを連れて来てからずっとこうして思いのままに遊び続けるアルチベータの表情は、緩みっぱなしでその天井は未だに見えそうにない。
「そうですわ! セラさん、何か欲しいものはありますか?」
「欲しいもの?」
「そうです! セラさんが欲しい物をあげたいのですが、何か欲しいものはありますか?」
ここに来てからずっとアルチベータが思うものを与え続けていたが、セラが欲しい物を与えることで更に未知の喜びが見られると考え、両手を広げて高らかに気分よく声を発するアルチベータに対して、セラは目を瞑ってうーんと唸りながら何が欲しいか自分に問いかける。正直、欲しい物は今のところ何も無いが、心から欲しいと思えるものは一つのみあるのだが、これは叶えられるのだろうか。
「一応あるけど、これはアルチベータさんでも出来るのかなぁ」
「私に出来ないことなどありませんから、是非言ってみてください」
アルチベータとしてもセラが喜ぶ顔が今では一番の快感を得られるのだ。とにかくセラが喜ぶ顔が見られるならば冥獄凶醒として力は惜しまない。
セラはアルチベータがそこまで言うならば、ということで小さく息を吸って、その想いを伝える。
「それじゃ、言うだけ言ってみるね。セラはね。ブラックスター様が欲しいの」
秘めていた想いを伝えたセラだったが、アルチベータは聞いたことも無いブラックスターとやらが分からずに言葉を失ってしまう。
「セ、セラさん。そのブラックスターとやらはなんでしょうか?」
「ブラックスター様はセラの大好きな人で、憧れの人でもあるの。それでね。出来ればブラックスター様の子供が欲しいの」
「な、なんと! つい、この私が驚いてしまいましたわ」
まさか子供だと⁉ セラさんの子供となれば可愛いのは当然。むしろ何も知らない状態でこの私に懐くその姿を想像しただけで……ヤバい。見たい。欲しい。実現したい。
「無理を言っているのは分かっているからアルチベータさん。無理しないでね」
優しく語りかけるセラの表情とその仕草から無理だと分かっていながら、それでもねだるその姿にアルチベータの何かに火が付いた。
「セラさん。私には出来ないことなどないのですよ」
「でも、アルチベータさんが困ること、セラはしてほしくないよ」
困った表情を見せるセラにアルチベータの何かが更に火力を増し、是が非でも叶えてあげると強く誓う。
それにこれはセラの為でもありアルチベータ自身の為でもあるのだ。
「セラさん。時間はかかるかもしれませんがきっと、そのブラックスターをセラさんに届けてみせますわ」
「え⁉ 本当に⁉ ありがとうございます! アルチベータさん!」
セラは嬉しさのあまりにアルチベータに抱き着つかれたので、アルチベータも慌てて、セラを支えるようにしてその背中を抱き抱え、この可愛さについ、なんでも許してしまう。
こんな感覚、本当に久しぶりだ。
それにまだこの先があるのであれば、なんとしても感じてみたい。
「セラさんの夢、必ず叶えてみせますわ」
アルチベータは誓いを口に出して、実行するのであった。
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